第103話 不完全な融合
廃村を後にし、森の中を進んでいると、突然、物音が聞こえた。
レオンが拳を上げ、一行は瞬時に停止した。
4人が警戒態勢を取ると、茂みが激しく揺れ、1人の少女が転げ出てきた。
彼女は15歳ほどに見え、ぼろぼろの服を着て、息を切らしていた。
栗色の髪は泥と汗で絡まり、頬には深い擦り傷が走っている。
目には恐怖の色が強く浮かんでいる。
「助けて……追われているの……」
少女が必死に訴え、膝をついて崩れ落ちそうになった。
レオンがすぐに彼女を守るように前に立ち、剣を抜いた。
すると、数人の機神兵が森から現れた。
しかし、これまで見た機神兵とは少し様子が違った。
動きがぎこちなく、時々けいれんのような動きを見せる。
「あれは……転写が不完全な機神兵だ」
アーサーが指摘した。
「魂と機械体の融合がうまくいっていない。見ろ、動きに統一性がない」
レオンが最初に動いた。
剣が弧を描き、最も近い機神兵の脚部を斬りつけた。
機神兵はバランスを崩し、地面に倒れ込んだ。
戦いは短かった。
不完全な機神兵は、かつて戦ったものよりはるかに弱かった。
しかし、倒された機神兵から漏れ出す、かすかな人間のうめき声のような音は、4人は胸を締め付けた。
少女はサラと名乗り、隣町の出身だと話した。
「2ヶ月前……町に『疫病検査』と称して、王国の役人が来たの。白い外套を着た人たちが、住民全員の『健康診断』をするって」
サラは目を伏せた。
「みんな、王国がようやく辺境の町にも目を向けてくれたって喜んでた。でも、検査が終わってから……町の若者たちが次々と『特別保護対象』として連れ去られていった。16歳から25歳までの、健康な人ばかり」
彼女は自分の腕を抱きしめた。
「私も来週、16歳になる予定だった。昨日の夜、役人たちが家に来て、『明日、迎えに来る』って言ったの。お父さんとお母さんは……何も疑わなかった。王国の保護が必要なんだって」
サラの目に涙が浮かんだ。
「でも、お父さんとお母さんは……連れて行かれた。あの機械の兵士たちに」
彼女はポケットから、くしゃくしゃになった紙切れを取り出した。それは兄からの手紙の断片で、そこには恐ろしい内容が書かれていた。
『サラへ』
『もしこれが読めるなら、すぐに逃げて。町はもう安全じゃない。彼らは私たちを実験台にしている。機械の体に、人間の心を閉じ込めるんだ。僕はもう、完全には人間じゃない。体の半分が機械に置き換えられた。痛い。いつも痛い。でも、一番痛いのは、自分が自分じゃなくなっていく感覚だ――』
手紙はそこで切れていた。
引き裂かれたような跡が残っている。
サラの話を聞き、レオンたちの決意はさらに固まった。
レオンがゆっくりと息を吐いた。
「これはもはや単なる陰謀や計画ではない」
彼の声は低く、しかし森全体に響くほど力強かった。
「進行中の、大規模な人道に対する犯罪だ」
夕日が森を赤く染め始めた。彼らの前に伸びる影は、長く、暗く、そして確かな決意を運んでいく。




