第102話 王都への道
王都への道は長く、危険に満ちていた。
レオン達は機神兵の残党との遭遇を繰り返し、時には王国軍の巡回部隊を避けながら進まなければならなかった。
旅は苛酷だったが、彼らの決意は揺るがなかった。
ある夜、キャンプファイヤーを囲みながら、アーサーが不気味な予感を口にした。
「王都に近づくにつれ、魔術の流れが歪んでいる。何か巨大なものが、地中で動き始めている……まるで、大地そのものが病んでいるかのようだ」
ガレスが大斧を手入れしながら言った。
「噂では、王都では『都市整備計画』と称して、大規模な地下工事が行われているらしい。昼夜を問わず、物資が運び込まれていると。だが、運び込まれているのは建材だけではないという話もある」
キースが突然、空を見上げた。
「鳥たちが……王都の方角を避けている。普段はもっと近づくのに。動物たちは、人間よりも先に危険を察知する」
レオンは火を見つめながら、決意を新たにした。
全ての証拠が、文書の内容を裏付けていた。
『機神の炉』は単なる計画ではなく、すでに建設が進んでいる現実だった。
旅の3日目、彼らは廃村を通りかかった。
かつては100人以上が暮らしていたと思われる村は、今や完全に無人だった。
家屋は無傷だが、生活の痕跡はすべて消え去っている。
食器はテーブルの上に置かれたまま、ベッドは整えられ、しかしそこに人がいた気配は微塵もない。
まるで、住民たちが一瞬で蒸発したかのようだった
「まるで……霧が消したように」
ガレスが呟いた。
アーサーが魔術で調査し、顔を曇らせた。
「強制転送の痕跡だ。大規模な転送魔術が使われた。だが、これほどまでに完璧に痕跡を残さない転送は……通常の魔術では不可能だ。何か、別の『力』が使われている」
レオンが唇を噛んだ。
文書の一節が脳裏に浮かんだ。
「機神兵の収容作戦だ。文書にあったように、『疫病対策』と偽って人々を連れ去ったのだ」
村の広場には、新しい看板が立てられていた。
『王国保健省指定 疫病対策区域』
『住民は全て、王立保護施設に移送されました』
『関係者の立入りを禁ず』
格式ばった王国の看板は誰にも疑念を抱かせない完璧な偽装だった。
キースが看板の裏を指さした。そこには小さく、しかしはっきりとした文字が刻まれていた。
石で、命を懸けて刻まれた2つの言葉。
『助けて』
『彼らは私たちを機械に変える』
レオンが仲間たちを見据えた。
キャンプファイヤーの炎が、彼らの顔を赤く照らした。
旅は続く。
しかし、その目的は変わった。
単なる調査から、阻止へ。
彼らの足取りは速くなり、危険な道を進む決意は鉄のように固くなった。




