お祭り.1
ドロタのいる泥族の村から北に数日街道を行くと、フォルティシオ領の王都ザサークの街が見えてくる。
魔物を通さぬ高い壁。なんだかな。この壁が僕たちを見捨てるための壁に思えて腹立たしくもある。
この状況なので商人が来るのも難しいのかほぼいないのだけど、僕たちの村みたいに逞しく生き残った村人は、強力な魔物避けを使いながら来たと言う。
「あんたらどこの村だ?俺たちはムスタブの村だ」
「僕たちは、トナです」
「お~、あそこか。行商に行ったことあるぜ。
お互いに無事で良かったぜ」
獣人の商人と無事を分かち合いザサークの門へ行くと止められる。
「貴様等、ここへなにしに来た!」
「はあ?祭りがあるから商売しに来てんだよ!とっとと入れろ!」
強気な獣人の商人の言葉に空気が険悪になる。
なんだろうか?この街は。危険な土地を駆けて来たものを通せないのか。
「この地獄と化した土地を旅して来れる訳ないだろう!」
「貴様等は魔物の類いではないのか!」
「てめー!俺たちはその地獄の中を生き抜いて来たんだぞ!
なにもしてくれなかった国が偉そうなこと言うなよ!」
兵士の言葉にリオがキレる。肩を叩いて宥める。
「落ち着けリオ。揉めても仕方ないよ」
「でもよ~、兄ちゃん!」
「そうだぜ。こうなればこいつらに泥団子でもぶつけてやるか?」
ややこしくなるからドロタは黙ってようね。
村を出る時に、ドロタはついてきてしまった。
他所の街を見てみたかったそうだ。
「泥族まで連れているのか?泥臭くなるから余計に駄目だな」
馬鹿にしたように門番が嘲笑う。
なんでだろう。前世でもそうだった。
自分に実力が無い奴がほど人を馬鹿にしてくるのだ。
ちゃんとしてる奴は特に馬鹿にしたりとかはしてこない。
それは、前世でもこの世界でも変わらないのか。
だって明らかにこの兵士は弱いではないかと思う。
まあ、だからといって暴力で解決したらこいつらと同じになってしまうけど。
乾いた風が吹く。プラチナやコハクもなにか言いたそうだけど成り行きを見守っている。
沈黙を破ったのはリアだった。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「この人たちどうして意地悪するの?弱いのに」
ホントに不思議そうにきょとんと僕を見てくる。
「なんだと!?この小娘!」
「貴様!我々を侮辱するのか!」
呆気にとられたのも束の間。兵士たちが怒鳴る。
「うるさいな~。国を守れない人は黙っててくれる」
リアの冷たい目線に押し黙る兵士たち。
リアにこんな表情させるなよ。
大人の冷たさにトラウマがあるんだから。
「落ち着いてリアちゃん」
ミコが優しくリアの頭を撫でて宥める。
リアはみんなから可愛がられてるな。
僕が撫でると嬉しそうに微笑む。
「ちょいと私の胸もさすっておくれよ」
からかうようなコハクの台詞はスルーする。
「駄目!それは駄目だからね!」
プラチナが冗談だと気づかずに頬を膨らませている。いや、冗談だよ。
「ほう。お前たち良い女を連れているな?ハーレムパーティーか」
「こいつらが俺たちの相手をしてくれるなら通してやってもいいぜ」
下品な笑みだ。こいつらはホントに国を守る兵士なんだろうか?
それとも国が荒んでしまったからこの街の人たちも、心が荒んでしまったんじゃないか。
「なんとか通してくれないか?村の新鮮な野菜も売りたいし」
「ふん。貴様がハーレムの持ち主か。
しけた野菜は輸送で手に入る。
荒れた土地の野菜などいるか!」
僕の言葉を聞いて馬鹿にするかのように眺めてくる。
そこへ獣人の商人が声を荒げて掴みかかる。
「あんたら自分たちのことばかりで村を見捨てた癖に、野菜を馬鹿にするな!」
「貴様!国に逆らうか!」
兵士が憤慨して槍を構える。まずい!
商人に突き出された槍を掴んでへし折る。
「なに!?」
「おのれ、逆賊め!」
「貴様等を殺した後はその女どもで楽しませてもらおうか!」
兵士たちがわらわらと門こら出てきて襲いかかろうとする。
「……覚悟してますよね」
「なに?」
「僕の仲間に傷つけたら容赦しませんよ?」
出来るだけ頭に血が上らないように冷静に。
その迫力に怯む兵士たち。どうしよ。
お尋ね者なんかになったら村に迷惑かかるしな。
「お待ちになって下さい」
一触即発の空気の中。止めたのは老人の声だった。誰だ?
つづく




