寄り道.9
土竜ガイアドラゴンは、シンプルな名前だけど驚くほどの耐久力だ。
泥のような色かと思いきや、川の水によってその姿は現れる。
綺麗な赤土色の土竜はこちらに敵意を見せると何度も尻尾を振るう。
『千尻尾』
「くぅっ!痺れるねぇ!」
コハクは凄絶に笑う。何度も僕たちの盾になってくれているけど、今日ほど頼りに思えたことはない。
しかし、何度も受けられないようだ。
腕が痺れて動かないようだ。
「回復之祝詞!」
神楽鈴がシャンシャン鳴り、ミコの術で癒しをかけてもらいその間に僕は土竜を牽制する。
しかし、その鱗が全てを弾く。こちらのレベルより高いってことか。
しかし、土竜が動き始めたからか塞き止めていた川の水が流れて川にいた魔物は押し流される。
「おお!川が戻ったぞ!」
喜ぶドロタだけどこのままこいつを野放しには出来ない。
「かしこみかしこみ申します!どうか!この土地の神様ならお静まり下さいませ!」
巫女が前に出て必死に声をかけるけど土竜は暴れるばかり。
「私たちで止めるしかないよハヤテくん!」
「しかし、どうやって止める?」
「やべー!」
土竜はこちらにガイアブレスを吐く。
いくつもの細かい石の混じった攻撃は僕たちを削る。
「こっちを向けー!」
コハクの大注目で土竜の尻尾攻撃で後退りする。
いや、吹き飛ばなかっただけましか。
「コハク、大丈夫!」
「うう。いてて。気にしないでいいよ。
いい男を守れるってありがたいことさね」
コハクは強がりながらも起き上がろうとするが膝をつく。
「無理しないで下さいコハクさま」
ミコが急いで駆け寄り回復させる。
そして更に攻撃しようとした土竜の爪をリアが防ぐ。
「みんなをよくもー!」
「リアちゃん、すごっ!」
サポートするプラチナは圧倒的な強さがあるもののあっさりと倒さないのは、僕たちを鍛えるためなのだけど、それを必要としないほどのリアの動きと刀の一撃。
勇者のスキルにはなにか特別な力があるのだろうか。
(ニクイニクイニクイ!ワレヲリヨウシタワイショウナソンザイドモ!)
なんだ?土竜の思考が流れ込んでくる。
「憎い?お兄ちゃんを傷つける奴が言うなよー!」
いつもにこやかなリアが怒ってる。
素早い剣捌きで斬りまくる。
「リアちゃん!駄目だよ、怒りで攻撃しちゃ!」
真っ向から突進しつつも土竜の爪や牙をかわしてしかし、土竜のブレスを直撃された。
「リア!」
「うう……」
泥まみれのリアは動きづらそうだ。
「私に任せてください……治療之祝詞!」
神楽鈴の音を背中に聴きながら土竜と向き合う。
すると、その土竜の動きが鈍る。
「俺に任せときな!」
手をかざすドロタの先。土竜の地面が緩やかになって土竜を押し流す。
「あんた、とぼけてる割にはやるね~」
「へへ!これが地形士の力だよ!」
照れてる。しかし、地形士なんてのもあるのか。
その職種の人は地形を操り敵を討ったり味方を護ると言う。
そして大袈裟な身振りと共に更に大河を刃にして突き刺す。
『グゴオオオオオオオ!?』
「今!止めをさしてやるわ!」
「リア!?駄目だ、殺しちゃ」
「止めろっての!」
止めようとしたリオを突き飛ばしてハッとするリア。
「リアちゃん、落ち着いて」
プラチナが優しく抱き止める。ちょっと危ないなとは思っていたけど、どうしたってんだ。
そうこうしてる内にまた土竜が大河から泳いで来るので弓矢を構える。
「待ちなよ」
緊迫感の中コハクが止める。
「もう、大丈夫みたいです」
ミコも言う。確かに土竜を纏う嫌な感じがなくなっている。
『そこの天使に助けられた。すまなかった』
「プラチナが?」
「えへへ。褒めて褒めて~」
得意気なプラチナは一瞬の内に土竜の邪気を払ったらしい。
らしいと言うのは、気づかなかったから。
流石レベル10000と言うことか。
「なんだよ天使って」
「あはは……天使みたいに綺麗ってことだよ、な?リオ?」
「え?あ、そうだよ、そう!ドロタもそう思うだろ?」
リオの返しに納得行かないような感じだけど頷いた。
「まあな。泥族から見ても神秘さがあるねーちゃんだな。
でも、出てるとこあるけど色気はねーな」
「そこ。うるさ~い!」
ふぅ。誤魔化せたかな。天使なんて知られ広まったら崇める人とかわんさか来そうだし。
「……土竜さん、ごめんね私。魔族が悪いのにあなたを殺そうとしちゃった」
シュンとうつ向いてリアはしゃべる。
いつもの元気なリアではない。楽しく咲いている花が萎んでいるような感じでこっちも胸が痛い。
「リアちゃん……」
悲しそうな表情のプラチナが抱きしめる。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
「私のこと嫌いになった?」
「そんなことで嫌いにならないよ。
リアはみんなのことが大切だから怒ったんだろ?」
「うん。私、孤児院にいた時誰も守れなかったから……今度は守るって……そのためなら相手を……」
なんだか愛おしくて抱きしめたいな。
「そっか。でもさ、リア。相手も家族がいるかもしれないから」
どう言えばいいんだろ。僕もリアを殺されたら怒るだろうし憎むだろう。
「リアちゃん、あのね?憎しみで戦っても憎しみが返ってくるだけなんだよ」
「そうですね。戦争と同じです。難しいかもしれませんが、優しさを持って戦って下さい」
プラチナに続いてミコが言う。きょとんとしている。
その内に分かるだろう。
「リア、ドンマイだぜ……いてっ!」
励ますように言うリオの頭を小突くコハクは静かに叱る。
「あんたは少し反省しなよ。市中引きずり回しにしめやろうかね?」
「ははは!俺もガキの頃悪さしたらじいちゃんに引きずり回されたっけ」
ドロタが爆笑する。結構ワイルドな叱り方をするんだね。この世界にパワハラとかないのだろう。
まあ、厳しさは必要だろうけどやりすぎはよくない。
リオも少しは反省してもらわないとな。
「そうだ。土竜はあのガキのことなにか知ってるかい?」
「サビロテのことね」
しかし、その問いに答えたのはプラチナだった。
ドロタもいることだしその話しは後にしよう。
つづく




