寄り道.8
リオ視点
しばらく進むと泥の川が大河になった。とは言っても川の水は干上がってるからな。
まあ、見応えはあるかもだけど村のことを考えるとちょっとな~。
泥大ヤモリが出てきたので倒そうとすると、サビロテの爪が一閃して瞬殺した。
五体はいたけど一瞬!?こいつなんなんだ!?
俺は、警戒心を強めた。ただの旅人がこんなとこいるわけないもんな。
辺鄙でなんもねーし。
「こうなった原因はなんだろうなー」
「ふふ。土竜でも寝転がってたりして」
「り、竜なんているのか?古の種族だろ?」
いや、でも兄ちゃんたちが水龍だかの話しをしてたな。
「まあ、そうだね。でも魔界にはいるよ」
「いやいや、いるよってな~」
まるで見たようなことを言うなと思いつつ進んでいくとなんだあれ?
泥が盛り上がって大河を塞き止めている?
しかも、迫力あるなー!
「なんだい、なんだい。僕がせっかく連れ出したのにあんなとこでへばってさ」
可笑しそうに笑うサビロテ。こいつ、今なんて言った?
「てめー、今なんてった?」
「うん?ああ、こいつ。土竜を連れて来たのはこの僕さ」
「な、なんでそんなことを?」
「そりゃあこんなのが出れば面白くなると思ってさ~」
そしてまた愉快そうに笑うと僕をにやにやと見る。
馬鹿にされているようで嫌な気分だ。
「いいかい?人間なんてのは魔族にとっておもちゃなのさ。
それなのに魔王様は人間と友好的なんて。
何度も勇者に負けてるからビビったのかもしれないね」
「な、なんなんだよお前!こんなことしてさ!なにが楽しいんだ!」
「くはは!いいよ、リオくん。その怒り。楽しいよ。
ちなみにこのフォルティシオ領を地獄としたのは僕さ!くくく!」
子供がいたずらを白状するような感じで笑う。いたずらの規模が違うけど。
いや待て。今、聞き逃せないこと言ったぞ。
「て、てめー!さては悪い奴だなー!」
俺は槍を構えて怒鳴る。普段ならそのまま突進してるけど、なにかが踏み止まれと言っている。
「僕の名前はサビロテ。魔界貴族狂遊種のサビロテだよ。
君たちの住む地方を僕の遊び場として色々とあそんでいたんだよ!」
なにが楽しいのか無邪気に笑っている。
「てめー!」
動け!勇気だ!勇気があれば動ける。
踏み込んで疾風突き!それを面白そうに避ける。
「はははっ!今度は戦闘ごっこかい?
でも、その程度じゃ僕が生まれた時より弱いんじゃないかな?」
稲刈りの鎌みたいなのを二本取り出すと僕の槍捌きを軽く受け流す。
「くそ~!お前のせいで!お前のせいで!」
うちの母ちゃんも。カナエの家族も魔物に狩られた。
「これならどうだ!」
闘気を込めて一点集中突き!それは見事にサビロテの胴を突いた。
「やったか!?」
「やってないよ。まあ、こんなもんか」
自分に刺さってる槍を抜いて可笑しそうに笑う。流れる血は黒く人間の者ではないと分かる。
「いや、その年で僕に怪我を負わせることが出来ただけでも良い方か」
なにやらぶつぶつ言ってる。ならば、畳み掛けてやる。
俺が踏み込んで更に攻撃しようとしたら「うるさいな」と、デコピンで吹っ飛んだ。
重い痛み。それが全身を打ち抜いて息が上手く出来ない。くそ~~~!なんて俺は無力なんだ。
あいつも同じくらいのガキじゃないか。
「今僕は考えてるんだよ。興醒めしちゃったな~。
もういいや。君は死んで良いよ?」
放たれたのは、禍々しい槍のようなもの!?魔法か!
俺は観念して目をつぶる。
しかし、俺が串刺しになることはなかった。
目の前にはコハクねーちゃんがいて。
ハヤテにーちゃんたちがいたからだ。
「遅くなってすまない。大丈夫?」
「にーちゃん、なんで?」
「当たり前だろ?村の隣人をたすけるのは」
それを聞いて俺はちっちゃいなぁ~と思う。
カナエが好きになるのも仕方ないか。
「リオくん、大丈夫?怪我してない?」
「ああ、大丈夫さ」
リアも心配してくれたのか。俺はなにやってんだろ。
「うそ。怪我だらけじゃないの。ブレイブヒール!」
リアの唱えた勇者特有の回復魔法で傷が消える。
ブレイブヒールは他の回復魔法と違ってしばらくの間自動回復(小)がつくのだ。
「皆さん、気をつけてください。
あの童からは強い魔力を感じます!」
ミコの言葉にみんな武器を構える。
俺もへこたれてはいられねーぜ。立ち上がり槍を構える。
「ああ。君たちかイレギュラーなんだよね」
「なんだと?君は一体どこの迷子だ?」
「は、ハヤテくん違うよ。あれ魔族だよ~」
プラチナがつんのめりながら教えてくれた。
な、なるほど。ただの子供ではないのか。
「そうか。君だよ。君みたいななぜか強いのが僕の箱庭にいるから。プランを変えなくちゃならなかったんだ」
不機嫌そうに話したと思ったらまた笑い出す。
「兄ちゃん気をつけて!こいつめちゃくちゃに強いよ!」
「ああ。分かった。それで、プランてなんだ?」
兄ちゃんは前を見たまま答える。サビロテの奴は相変わらずにやにやしながら話しを続ける。
「この周囲のエリアをカーストアップさせて、絶滅する様を楽しく観察することさ」
「んな?」
「なんて酷いことを!やっぱり魔族だね!」
プンプン怒るプラチナねーちゃん。
なんだろう?みんなピリピリしてる。
「でも、君とそこの天使……てお前魔王を封じた奴じゃねーか!」
サビロテの目の色が変わるけどすぐに可笑しそうに笑う。
え?ねーちゃんが魔王を封じた?どー見ても十代後半だよな~?
「あ、ばれた~?て、サビロテくんだったよね?
前にバトッた時はちっさかったのに背、伸びた?」
にこやかにサビロテに話しかけるプラチナねーちゃん。度胸ある~。
「や、やかましい。そうか!貴様がそこの人間をここに連れてきたんだな?
まあ、いい。今回も水龍の時のようにサプライズを用意したからね。楽しんでよ」
「あなたが、主様を!」
優しいミコねーちゃんからピリッとした空気を感じる。
「まあまあ今回も楽しんでよ?また遊ぼうね」
そう言ってにこやかに手を振ると消えてしまった。
「待て!」
「あ、もう!逃げられたか」
「そんなことよりみんな土竜が!」
ドロタの指摘に横たわっていた土竜が目を開けてこちらを睨んでるのが分かった。
つづく




