のんびり.2
その後ギルドへ行き報告をする。朝起きたら、道の真ん中で眠っていたこと。
商人に助けられて、オイルトテスの街まで行ったこと。
オイルトテスの街のギルドに冒険者の派遣を頼んだものの、周りが強い魔物ばかりの場所には、重い腰を上げてもらえないことなどだ。
「……一体何があったのか。ともかくご苦労だったよ」
同情するのと、すまなそうに僕を見る。
「そんなに気にしないで下さい。僕にとってもこの村は故郷みたいなものですから」
「おや。思考を読まれたかい。あんたをこの村に引き留めたからこんなことになったからね」
「いや、ホントに気にしてませんよ」
「そうだよ。ガレットがそんな表情するなんて、似合わないんだから~」
すまなそう表情のガレットさんを励まそうとしたのか、ルリがそんなことを言う。
もちろんその後は、いつものように頭を拳でぐりぐりされている。
「このビッチ!余計なお世話だよ!」
「いてテテテテ!放しなさい!この永遠の年増!」
永遠の年増ってなに?まあ、スルーしよう。
「でも最近、変なことが増えたよね?」
プラチナが、顎に指を当てて話す。
まあ、今回の転移もそうだけど、ミコに出会った時も、そのダンジョンもおかしかったし。
そもそもの発端は、この地方だけが魔物が強くなったのがおかしい。
「……依頼の方はその後どうなっていますか?」
「まあ、そこそこだね。あんたがいない間にリアたちで魔物退治とかしてもらった」
「えへへ。私、頑張ったよー!」
「偉いぞ、リア」
無邪気に笑うリアの頭を撫でながら少し心苦しい。
ホントだったらもっと子供たちと遊んでいてもいいんだ。
でもまあ、この村の子供たちも親の手伝いで、仕事とかしてるけどね。
まあ、なんにせよしばらくはのんびりしたい。
依頼は受けていないので、倒した魔物の素材を使わない分を換金してもらうことにした。
「おねーちゃんたち、村を案内して上げるね!」
カナエとリオが、ミオンさんたちの手を引き外へ出ていく。
しかしリアは、僕の服の袖をつまんだままだ。
「リアは、行かないのか?」
「うん。お兄ちゃんといる。えへへ」
そう言ってはにかむリアが可愛いのでまた、頭を撫でる。
娘がいたらこんな暖かい気分になるのだろうか。
自分にとって結婚なんてまだ早いと思っていたけど、二十歳越えてるからいつでもいいんだけどね。
「ハヤテくん。私も撫でて?」
「それを言うなら私も!」
プラチナに続いて、ルリもか?子供じゃあるまいし。
ガレットさんが、ルリの襟首をつかんで連れて行こうとしている。
「さ、あんたは私と混浴でもするかね」
さも当たり前のようにコハクが僕と肩を組んで歩き出すので、ルリがはカウンターからジットリとこちらを見ている。
コハクのハートを貫きそうなほどの視線。
コハクの様子をうかがうと、にやにやしているのでからかっているのだろう。
混浴はしないけど、寒いから早いとこ温泉入って少しはゆっくりしよう。
帰りに神社に寄って行くと、ミコとシズナが話していた。
「まあ、ハヤテさま。ご健勝そうでなによりです。
ずっとしんぱいしておりましたよ」
ホッと安堵したような笑顔。心配かけたな。
「ハヤテさん、これはいいです。うちの故郷を思い出せて素敵です」
神社を見回し嬉しそうだ。
ミコは、木々に止まる鳥に目を細める。あれは、梅の木に似ているな。
いつ見ても、十代とは思えない言葉遣いだ。
同じ日本からホントに転移したのだろうか。
砂利ではなく土の地面にはいくつもの円があり、けんけんぱでもしていたな。
「今、ミコちゃんと話してたんですけど、同じ出身かと思ったけど違いました」
「はい。私は転移してきたのです。異世界の地球と言う星から」
「やっぱりか。そんな気がしていたよ」
プラチナが僕とミコを見比べる。そして、うんうんと頷く。
「確かに、同じ人種って感じだよ」
「どの辺に住んでたの?」
「……それは」
あ、うつむいたよ。個人情報保護とか?異世界だから、そんなの気にしなかった。
「ごめん!変なこと聞いて!無理して話さなくていいから!」
ストーカーとか思われないよね。ぼっちは、異性との距離の取り方がよく分からないのだ。
なんだか、空しくなって来たな。はは。
「いえ、そうではなくて。空襲で焼け野原で焼けてしまったのです」
悲しそうに話すミコ。て、時代が違うのか。
これ以上、聞くのも悪いな。都会の空襲で焼けたとこか。
日本史かなんかの授業で聞いたかも知れない。
ミコは、お祓いですと言うと、神楽鈴をシャンシャンと鳴らして、僕たちの周りを一週した。
つづく




