帰還とのんびり.1
久々の村だ。異国の地なのに、故郷のようにホッとするとは思わなかった。ここはもう第二の故郷なんだなと帰ってきて実感する。
「おお、無事だったか!」
「ええ、ただいま戻りました」
見張り台の門番に挨拶して中に入ると、村人たちが作業を中断してまで出迎えてくれる。
リアは、きょろきょろと興味深そうに村を眺めている。
「ハヤテくん、お帰り~!」
ルリがギルドから飛び出て来て抱きつく。女性特有の良い香りと柔らかさにドキッとしてしまう。
「あ、あのただいま…は、離れてもらえます?」
「まあまあ、よいではないか、よいではないか」
どっかの芸者遊びしてるエロ親父みたいな台詞だな。
「もう、ハヤテくんにくっつかないでよ」
「だって、プラチナさんと二人でいちゃいちゃしてたんでしょ?」
「二人じゃないもん」
「え?子供?」
リアを見て、僕を見て、プラチナを見て、また僕を見る。
「作っちゃった?いてててて」
呟いたルリのこめかみをぐりぐりするのはガレットさん。
いつもの日常にホッとしたりする。
「なに、仕事サボってんだい?このビッチが!」
「いたいたいたーい!放せ、年増!目つき鋭い!」
ああ、いつもの光景に和むな。リアは、びびって僕の後ろに隠れて服の袖を掴んでる。飛竜より強いのに。
「ただいま、ガレットさん」
「よっす!おひさで~す!」
「ああ。無事でなによりだね。んで、その子はホントにあんたの子かい?」
「茶化さないで下さいよ……ほら、リア、挨拶して」
「こ、こんにちわ。リアです」
おずおずと前に出て、ぺこりと頭を下げる。かわいい子供だ。村の子供たちと仲良く出来るといいな。
「ほう。しっかりしつけられてる子だ。私はガレット。こっちは、ビッチのルリだよ」
「誰が、ビッチだ、誰が!ルリでーす。よろしくね、リアちゃん」
「はい。よ、よろしくです」
ルリの明るさに少しホッとしたのか微笑んでいる。この明るさは、流石だな。
子供たちも集まって来てるので、声をかける。
「みんな、新しい仲間だ。仲良くしてやってよ」
「はーい!」
「いいよ。お兄ちゃんの隠し子?」
「違うよ。違うからな?」
「もしかして、お兄ちゃんのか、彼女?」
カナエが、ガーンとして落ち込んでいる。
「ち、違うよ?お兄ちゃんのことは好きだけど、違うよ!」
あわあわして否定するリアとからかう子供たち。頭、痛くなって来たな。それを、かばうのは意外にもカナエだった。
「ちょっと!私と同じ趣味の人を馬鹿にしないでよね!」
「あ、ありかとう、えと?」
「私は、カナエだよ。これからライバルで友達だね」
振り返り優しく言うカナエにリアも笑顔になる。
「ありがとう。私はリア」
二人は手を繋いで、一緒に遊びに行く。それを、微笑ましく見送っていると村長がやって来る。
「おお、ハヤテさん。お帰りなさい」
「村長、ただいま。あの一人増えますがよろしいですか?」
「ああ、構わんよ。それに、こんな土地にほっぽりだす訳にも行かんしな」
まあ、魔境化してるからね。魔物も狙って来るし。
飛竜は、退治したからしばらくは来ないだろう。
地を駆ける山の魔物は、ダイちゃんが止めてくれるしね。
「そうだ。こちらへ」
腕にしがみつくルリは、ガレットさんに引きずられて行くので、苦笑しつつ後でギルドへ行くと約束して村長に従うと、見慣れぬ一軒の家へ案内された。
「ここは?」
「あなた方の家です。中古だが宿屋に泊まるよりは、広くて使いやすいでしょう」
「い、いやしかし。僕たちは冒険者ですし。素性も分からないですよ?」
自分で行ってれば世話はない。プラチナは、素直に受け入れてなこにこしてる。遠慮の無い人だよ。
「いいんだ。みんなで決めたことだよ」
優しく言う村長。みんな。村のみんなを思い浮かべて、胸がじんとする。
転生してから、人が暖かいな。都会の冷たさとは違う。いや、生まれた時から人の冷たさと薄情さが当たり前だったから。
「……大丈夫かい?」
「え?あ……」
気づいたら涙を流してた。誤魔化すように大空を眺めているとプラチナが背後から抱きしめてくれた。
「この世界は、厳しいけどあったかいね」
「……ああ」
「お兄ちゃん、泣いてるの?」
リアがカナエとやって来る。僕は笑顔を作りながら答える。
「嬉しいから、泣いてるんだよ」
「へ?」
良く分からないのか、きょとんとするリアを抱きしめる。
この温もりは、前の世界では間違いなく無かったものだ。
「えへへ」
三人の笑顔が、周りに広がる。そんな村になるといいな。
つづく




