ワイバーン退治.7
山を更に登るとワイバーンたちが飛んでいるのが見えた。
「ふわぁ。たくさんいるね!」
あれだけいるワイバーンを見るのが珍しいからか、リアは怖がりながらも興味津々みたいだ。勇気あるな。
でも、あんな雄大で大きな生き物を見るのは、感動してしまうな。
「あやつだ。空から我等を狩るなどとは許せん」
ダイちゃん。鹿煎餅がこぼれてるよ。興奮するから。
「あっ!これ珍しい薬草だよ?」
「うわぁ!お姉ちゃんはなんでも知ってるね」
「えへへ。ハヤテくんの好みのタイプも知ってるよ?」
「え?それ知りたいよ」
僕、そんなこと話してないけどね。僕に教えてもらおうか?
うーん。女子はドラゴンより飛竜なのかな?
「ふっ。貴様はやはり、女こましか」
「……狩るよ?」
「それは、するシカないのか?」
「…………」
駄洒落かよ。親父ギャグ?どっちでもいいか。
僕は、もう少し接近して弓矢を構える。
「おいおい。こんなとこから射かけても当たら……」
ダイちゃんの言葉の途中で放った矢は、ワイバーンを仕留める。
ダイちゃんはそれを見て、ポカンとしている。
更に放つ。放つ。ワイバーンは、こちらの方に気づいて接近して来る。
そりゃ、怒るよね。心苦しさはある。家族を殺されているのだから。ぼっちだったからこそ、余計に。
いくら、自然の摂理とは言え。ごめん。
それでも僕は、村を襲わせる訳にはいかないから。
優しくしてくれたあの村の人達を守らないといけないんだ。
幸い、ひょっとこのお面で僕の表情はバレていないだろう。
「……プラチナ。リアを頼むね」
「はい。任せておいてね。ほら、ダイちゃん、避難して」
「う、うむ。しかし、そう言う訳にも行かない。我は、見届けないといかんのだ」
「はいはい、ダイちゃん。足手まといだから~」
プラチナの言葉にショックを受けてるダイちゃん。仲間が近くにいなくて良かったな。
やいやい揉めてる内にワイバーンたちがを迫って来る。
正確に頭を矢で射る。ほとんどが落ちて素材に変わる中で一体だけ矢を通さない。そして、でかい。
「なんだ、あの飛竜?攻撃を通さないぞ!?」
「なんだろ?群れのボスなんじゃない?それか、食べ過ぎで太ったとか?」
「そんな訳無いだろ?」
「お姉ちゃん、近くまで来てるよ!えい!」
えい?ユアの放った黒い線が飛竜を焼きつくし貫く。
「ギャアアアアアアアア!」
あれ?落ちていくんだけど。リア、強くない?
レベル、僕より低いけど一発で仕留めるなんて………リアは、何者なのだろうか?
「リア、すごっ!私の出番無かったよ~」
「えへへ。ダメージ与えられそうになかったから、魔力を集中して放ったらなんとかなったよ」
照れて笑っているリアの頭を撫でる。そうか。同じ威力の魔法でも、そのまま放つでも魔力を集中して放つ方が威力が高いのか?
それにしては、この子にはなにか秘密があるのかな。
「いて!」
なんだ?ダイちゃんの角になにか引っ掛かっている。あの飛竜の魔石か。
「それにしても、この山の中を探すのかな?」
「あー、いろんなとこに素材落ちてるからな」
「心配いらぬ」
ダイちゃんの言葉の通りだった。キラシカたちが素材を集めて来てくれたようだ。
「わぁ!シカさん気が利くね!」
「当たり前よ、生娘。我は恩を仇では返さぬ」
リアのことをそんな呼び方止めて。
ともかく、山を降りることにしたものの、キラシカたちの進めもあって、キラシカの集落に案内された。
「う~ん」
「プラチナ、どうしたの?」
あのでかい飛竜の魔石を調べているようだ。まじまじと眺めている。
かなりのストレスを溜め込んで、おっきくなったのかな~?
「……もしや、我も同じかも知れぬ」
「え?」
「気づいたら、我は知識を持ち強くなっていたのだ。そして、鹿煎餅は美味しい」
考えてしまう。群れだからストレスも溜まるだろう。
頼りにされれば、される程に。ストレス社会はどこも一緒かー。
「着いたぞ」
そこは、崖のとこにある洞窟だった。中は暗いが広くていくつもの横穴がある。
「ライト」
妙に明るく魔法を唱えるプラチナは、きょろきょろと見回す。
「結構、ひろひろだね~」
ひろひろ?広いってことか。リアは暗いのが苦手なのか、僕の服の袖を掴んでる。夜はずっと、一人だったもんな。
「すまんな。人間の住める場所ではなくてな」
「あーいや、別に」
何て答えていいか分からない。ホントにねとも言いづらい。
ダイちゃんが、奥の広場にたどり着くとキラシカたちがらぞろぞろと横穴から集まってくる。
「長!ご無事でしたか?」
「長、お帰りなさい!」
「長、その人間どもは今日の夕飯ですかい?」
なんか、ぶっそうなこと言ってるよ。プラチナ、照れない。
「この者たちは、我等の宿敵、ワイバーンを屠った者たちだ」
「なんと!?」
「そうでしたか!」
驚く鹿たち。ダイちゃんに鹿煎餅を渡すと、モシャモシャと食べている。
「しかし長!我慢していましたが、我等が同胞を殺したのはこ奴等ですぞ!」
その言葉にざわつく鹿たちは、僕たちを睨みつける。殺気立ってる。リアはますます縮み上がってる。さりげなくかばう。
この子は、守らないと行けない。まだ、これからだしね。
「止めい!彼等は我の客ぞ!?恩人にその態度は無礼であろう!」
「シカし、長!」
「………お主等の気持ちは分かる。シカし、弱肉強食は自然の摂理よ」
あー、なんか嫌な雰囲気だな。チラリと二人と目線を合わせる。
「えと、ダイちゃん。僕たち帰るよ。相手の気持ちも分かるし」
「……しかし」
「まー、まー。私たちは人間と魔物。仲良くするのは難しいなのかな?」
悲しそうに笑う。プラチナは天使だけどね。
「またね、ダイちゃん。」リアが、抱きつく。
毛皮がふかふかなのかな?僕は、会釈すると二人を促して外へ出る。
日は沈み、星が瞬いている。東京とは違うな。この世界の空気がきれいだと言うことが分かる。
見送りに来るダイちゃん。ちょっと悲しそうだ。
「………すまんな。大したもてなしも出来ずに」
「いいって。まあ、なんか困ったら言ってくれ」
「追い出されてもなお、そんなこと言うとは……我も力になれることがあれば言ってくれ」
「ああ。またな」
そうは言ったものの後ろに乗っけてくれた。リアが、嬉しそうに喜んでいる。笑顔で良かった。
キラシカに乗っかって下まで降りた。山々の景色が雄大で見惚れてしまう。日本とは違う。
麓に降り立つと、鹿から降りる。
「送ってくれてありがとう」
「ダイちゃん、ありがとうね」
「うむ。生娘には才能があるようだな。強くあれ」
「はい。ダイちゃん、また乗っけてくれる」
「うむ。鹿煎餅をくれたら良かろう」
なんじゃそりゃ。生娘スルーなのね。
「ばいばい、ダイちゃん。いつか魔物と人間が仲良く出来たら、みんなで遠乗りしようね」
「……遠乗りは、我ではなかろう」
呆れないでやってくれ。遠い目で遠くを見ないでやってくれ。
「女を狩る者よ。此度は助かった。礼を言うシカあるまい」
「はいはい。女は狩ってないけどね。でも、仕事だから気にしないでくれ」
「そう言ってくれると助かるシカあるまい」
そして、回りを見回すとペコリも頭を下げて行ってしまった。
「ね、ね、私たちハヤテくんに狩られるの?」
「お兄ちゃんなら……仕方ないよね?」
もじもじしてるよ。反応に困るんだけど。
「……リアは、そう言うこと言わないでね。プラチナ、お前のマネしてリアが変なこと言ってるよ!」
「えへへ。まあまあ……あ!」
プラチナが、後ろを指差す。なんだ?振り返るとリッチやグール。マッハゾンビがいる。めちゃ速くて怖いんだけど!
「ターンアンデッド!」
「たーんあんでっど!」
女性二人の聖属性の魔法が炸裂する。地面に白い魔方陣が描かれ、アンデッドを浄化する。
「ワカイムスメノイキチィィィィィィ!」
「ワカイムスメノフトモモォォォォォォォォ!」
一人だけ、エロい奴がいるよ。
「さ、行こうか?」
「……はい」
女性には逆らわず、馬車に乗り込んで、休めそうな場所を探す。
リアがいた村まで行ってみるかな。
つづく




