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諦めるしかない

王様は魂の抜けたような顔をしていた。無理もないだろう、自分の国で、しかも来賓者が来ている中でのあの出来事。王が手引きしたのかもしれないと疑われているのか、顔を青ざめていた。


 だが、その事を材料に交渉は手早く進んだ。これを断ったらどうなるか分かるよねと、こっちの宰相さんが目で語ったのだから仕方がない。だが、勇者をどうするかで悩むのだった。


「つまり、僕と一緒に旅をしろと?」


 宰相の言った言葉を要約してみた。だが宰相はその通りと言いながら話をしてくれる。


「異世界の勇者は貴方と戦ってもいいと言っています。それに貴方は随分と彼女と通じあっている様子、それなら構いませんでしょう?」


「いや、だがーーー」


「上が決めたことです、断るのならそれなりの理由をお願いします。私情で嫌だというのなら、その時は分かりますよね?」


 嫌だ、この宰相怖すぎる。この腹黒宰相め、こっちの足元見やがって。


「わかりました、彼女と旅に出ますよ」


 諦めの境地でそう言葉にする。彼女をこの世界の色に染まらないようにするにはどうしたらいいかと考えながら、宰相との話し合いは終わるのだった。


「あ、そうと言い忘れていましたが、彼女は襲われても言いそうですよ」


 何が、とは言わなかったが、何となく分かってしまう自分が嫌になる。仲間以上の存在になったとしても私はいいし、彼女もいいと言っているのだ。


「はいはい」


 この宰相め、絶対楽しんでるだろ。なにかやり返したいけれど、倍返しされそうだからやめとく。


 宰相が出ていくのを確認すると、入れ替わりで彼女が部屋に入ってきた。


「部屋を間違えてるよ」


 そう言って追い出そうとしたが、いやいやと言って、出ていくのを頑なに拒否してくる。畜生め。


「先輩が死んで悲しんでたら、なに異世界で勇者になってるんですか!私の悲しみを埋めてください!」


「いやー、ねー、成り行きでねー」


「ふざけないでください」


「はい」


「何してたんですか?」


「最適化」


 この空間に結界を貼る。その結界は音を外へ漏らさないようにすることと、音を改変して流し出す結界だ。これならば怪しまれない。気配察知を常時発動させているし、誰かが扉の前に立ったとしてもすぐに分かる。


「さて、じゃあ真面目に話そうか。そこに座って」


 彼女は僕が纏う空気が変わったのに反応して、本当に真面目にやるのだと分かったのだろう。


「まず、僕がここにいる理由は転生したことが切っ掛けでいる。その時に後輩ちゃんみたいに特別な力を手に入れたのさ」


「その力で勇者に?」


「いや違うさ、この力のせいでだ。勇者というシステムは突然変異で生まれたユニークスキルを持つ者を指す。全属性の者でも勇者に選ばれたことがあったが、あれは多分そういうスキルなのさ」


「そんなことを話して大丈夫なんですか?」


「大丈夫さ、そのための結界を貼ってるしさ」


「え、いつの間に?」


「僕のスキルは気付かれないように発動したのさ」


「便利ですね、そのスキル」


 本当に便利すぎる。だがそのためには魔力を消費したり、解析系のスキルを併用しなければここまでのことは出来なかった。言葉で表すなら楽するために苦労するだな。


 「お前の剣聖も今はそんなんだけど、闘気を剣に纏わせて飛ばせるようになるし、思考加速もできるようになるからそれまでは、剣だけになるかもな」


「あ、先輩!その刀はどうしたんですか!なんですかあの桜、厨二病みたいでかっこよかったです!」


「分かるか、あのデザインを。刀を魔物の素材で作り上げることで進化することが可能な武器に、それに魔法を搭載させ血を吸えば強くなるようにとか、大変だったんだぞ」


「それ、私にも作ってくれませんか!お金はありますけど、足りなかったらこのかーーー」


「止めろ、作ってやっからそんなこと言うな」


「えー、いいじゃないですかこれくらい」


「他の奴にもそんなことしてんのか?」


「してませんよ!先輩だけですからね、こんなこと」


「はいはい」


 あー、なんだか癒されるよりも疲れが溜まるようになってきたな。どうしよ黙らせるか。魔法でできるしな。

 そんな感じで勇者は僕の仲間になったのだった。

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