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化け物との戦いと彼女の疑い

 化け物の姿はまるで猿のようだが、人型と言っていい。見た限りではスキルの使用も見られる。それも人と同等のレベルで普通の人が戦った場合、膂力の違いから撃ち負けてしまうのが分かる。


「技術が人並みに力は化け物か、素早く、鋭く、頑丈に」


 魔法を使い強化をしておく。そこまでするような相手ではないが、この場で見せつけておくようにしておく。


「最適化、桜」


 精神を最適化させ、刀を振るう。コマンドで設定されたような動きが猿のような化け物へ襲いかかる。


「一撃」


 一降り目がその巨体の右肩に吸い込まれるように入り込んでいく。そこには抵抗という言葉など無く、皮膚の硬さはその刀の鋭さの前では意味が無かった。


「二撃」


 二降り目はもう片方の腕を切る取る。抵抗しようとしているようだったが、こちらの方が圧倒的に早く切り落とす。不快な声が耳元に届いてくるが次の斬撃へ移る。


「三撃、四撃」


 抵抗する腕が無くなり、無防備になった状態に追い打ちを掛ける。両足を切り裂いた後の先には四肢が無くなった化け物の身体が地面と衝突する音が聞こえる。


「終撃」


 最後の一降りが首を貫く。その血は通常よりも飛び散るのが大きかった。空中を大きく飛び上がり辺りを桜のように舞い始める。その光景は日本で舞う桜をイメージして作ったこの妖刀がそうさせていた。

 やがて桜は突風が舞ったように一気に飛び始める。その飛んだ桜は妖刀に吸い込まれていき吹き荒れた桜は無くなっていた。


「今のは桜?」


 見慣れた彼女は直ぐに分かったのだろう、だが見慣れたことの無い人はその幻想的な状況を名残惜しそうに見ていた。


「さてお嬢さん、大丈夫だった?」


 何となく演技をすることで俺だと疑っている状況を誤魔化したかった。彼女に今の僕を知られたくなかったのだ。この世界になれきってしまった僕に。元の世界の心をまだ残している現在の彼女を消したくなかったからそう思っているのかもしれない。


「先輩ですよね?」


 だが、それでも彼女は疑うことを止めなかった。解析した中にあった剣聖のスキルに含まれる直感が気付かせてしまったのだろう。全く嫌なもんだね、スキルなんて便利な物は僕にとって薬にも毒にもなるんだから。


「はあ」


 最適化を発動させる。その御陰で彼女が僕を疑うような要因は無くなった。魂という存在を変えてしまったのだからこれでも僕だと疑うのなら、彼女は魂を見ることが出来る精霊か、魂を狩る死に神か何かだろう。


「あれ?うそ、何で?」


 彼女は突然驚き始める。僕は心の中で思う。

 これでいいんだ、彼女には新しい道があるんだ。その道を彼女に歩いて貰いたい。人が死ぬことは心苦しいが、その分この世界の人は身近な幸せを知っている。現代社会のような心など無い世の中ではなく、しっかりとした芯のある心の底から誰もが笑える世の中なんだ。


「君には変わって欲しくない。その心のままでいて欲しい」


 思った気持ちは長ったらしい物だったけど、最適者のくみ取った意味は僕の言いたいことだけを抜き取ってくれた。少し悲しいが彼女のためなんだ。彼女のため。


「先輩じゃないのに、先輩?」


 どういう事なんだ?なんで彼女はそこまでして僕を認めたいんだ?


「いくら先輩が変わったとしても先輩のままですよ」


「まじか」


 もう彼女を誤魔化すことが出来ないと分かる。それほど彼女の目は物語っていた。


「そうだよ、なんでわかるかなあ」


「だって、いくら隠そうとも先輩ですから」


「それが分からないっての」


「仕草とか雰囲気とかで先輩だって分かりますもん」


「仕草とかって、何か恐いな」


「いえ、女子だったらこれくらい普通ですよ」


「てか、何で若返っちゃてるの?高校生くらいに見えるんだけど・・・」


「それを言うのなら先輩もですよ!なんでこんなイケメンに・・・(これじゃあ先輩を狙う人が増えちゃう)」


 そんな感じのたわいもない会話をすることに、荒んでいた心が癒されていくのが何だか分かる。それほどまでに気を張っていたのかと少し自笑気味に思う。

 少しすると、審判の人が戻ってきて、王達の元へ向かうことになった。

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