↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/145

理由のない再開



 それから三日後。


 セリアはまた神殿へ来ていた。


 用事はない。


 本当にない。


 祈りを捧げるわけでもない。


 相談があるわけでもない。


 それなのに足が向いてしまう。


「絶対変だよね……」


 自分でもそう思う。


 けれど来てしまった。


 そして。


 気付けば中庭へ向かっている。


 あの日と同じ場所。


 もしかしたら。


 いるかもしれない。


 そんなことを考えながら。


 角を曲がる。


 そして。


「あ」


 いた。


 本当にいた。


 ユリアだった。


 木陰に座って剣の手入れをしている。


 相変わらず無表情。


 相変わらず近寄り難い。


 なのに。


 何故か安心した。


 ユリアも顔を上げる。


 そして。


 少しだけ驚いた。


「また来たのか」


「来ました」


 即答だった。


 ユリアが少し困った顔をする。


 珍しい表情だった。


「神殿に用事があるのか」


「ないです」


「そうか」


 会話終了。


 また終わった。


 セリアは思わず笑ってしまう。


「ユリアさんって話すの苦手ですか?」


「別に」


「苦手ですよね」


「そうかもしれん」


 少しだけ会話が続いた。


 それだけで嬉しい。


 セリアは隣へ座る。


 少し距離を空けて。


 春風が吹く。


 穏やかな午後だった。


「ユリアさんはずっと神殿にいるんですか」


「大体は」


「何年くらい?」


「長い」


「だから何年ですか」


 ユリアは少し考える。


「二十年以上だな」


 セリアは目を丸くした。


「長い!」


 思わず声が大きくなる。


 ユリアは少しだけ笑った。


 本当に少しだけ。


 だからセリアは見逃さなかった。


 綺麗だと思った。


 笑うとこんな顔をするのか。


 そんなことを考える。


「セリア」


 突然名前を呼ばれる。


「はい」


「お前は何をしに来るんだ」


 真っ直ぐな質問だった。


 セリアは固まる。


 自分でも分からない。


 本当に。


 分からないのだ。


 だから正直に答える。


「会いたかったから」


 言ってから。


 しまったと思った。


 初対面に近い相手へ言う言葉じゃない。


 絶対に変な子だと思われた。


 だが。


 ユリアは笑わなかった。


 馬鹿にもしなかった。


 ただ。


 少しだけ目を伏せる。


「そうか」


 それだけだった。


 けれど。


 胸の奥がまた温かくなる。


 あの日。


 白い糸が入った場所。


 最近。


 本当に最近。


 反応する回数が増えていた。


 その理由は分からない。


 ただ。


 セリアといる時だけだ。


 その頃。


 リシュリーは国心環の間にいた。


 接続を終える。


 胸の奥に僅かな違和感。


 以前より少しだけ強い。


 だが。


 気にするほどではない。


 まだ。


 そう思っていた。


 国心環は静かに輝いている。


 白い環の奥。


 誰にも見えない場所で。


 白い糸は少しずつ増えていた。


 ほんの少しずつ。


 まるで。


 何かが再び動き始めたかのように。


 一方。


 中庭では。


 セリアが空を見上げていた。


 そして。


 ふと呟く。


「ユリアさん」


「何だ」


「私、変なこと言っても笑わないですか」


 ユリアは首を傾げる。


「内容による」


「ですよね」


 セリアは苦笑した。


 言うべきか迷う。


 昔から誰にも言っていない秘密。


 白い糸のこと。


 けれど。


 何故だろう。


 この人には話してもいい気がした。


 そんな気がしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。