表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/69

死因の先



 セレスはページをめくった。


 動揺している暇はない。


 知るなら最後まで知りたい。


 そう思った。


 歴代聖女の記録は続いている。


 死亡年齢。


 死因。


 継承時期。


 後継聖女の名前。


 淡々と。


 まるで事務処理のように並んでいた。


 だが、読めば読むほど分かることがある。


『後継者選定済』


『継承準備完了』


『引き継ぎ記録提出』


 ほとんどの聖女に共通している。


 亡くなる前。


 あるいは任を終える前。


 必ず後継者に関する記述が残されていた。


 セレスは小さく息を吐く。


 昨日まで読んでいた記録。


 巡礼先で見た言葉。


 全てが繋がっていく。


『次の時代へ繋げる』


『時間が足りない』


『あの子なら大丈夫だ』


 偶然ではない。


 歴代聖女たちは皆、次代へ繋ぐことを強く意識していた。


「やっぱり」


 ぽつりと呟く。


「何か分かったか」


 向かいのユリアが聞いた。


「後継者育成」


 セレスは答える。


「ただの慣習じゃない」


 必要だから残している。


 必要だから急いでいる。


 必要だから記録している。


 聖女がいなくなれば次が必要になる。


 当たり前の話だ。


 けれど、その当たり前を歴代聖女たちは異常なほど重視している。


 さらにページを進める。


 そこで見慣れない項目が目に入った。


『接続年数』


 セレスの手が止まる。


「接続年数?」


 初めて見る項目だった。


 死亡年齢とも違う。


 在任期間とも違う。


 二年。


 五年。


 八年。


 十年。


 数字はばらばらだ。


 意味が分からない。


 さらに下を見る。


 小さな注釈が添えられていた。


『国心環への正式接続開始からの経過年数』


「……」


 セレスはその一文を読み返した。


 聖女就任年齢とは別に管理されている。


 なぜだろう。


 自分も国心環に接続している。


 だが接続年数など意識したことはなかった。


 教わった記憶もない。


 ページをめくる。


 次。


 さらに次。


 そして、ある傾向に気付いた。


 接続年数が長い聖女ほど、死因欄の記述が詳しくなっている。


『接続負荷蓄積』


『継続接続による消耗』


『長期接続に伴う衰弱』


 セレスの胸がざわついた。


 まだ結論は出ない。


 だが、ただの偶然とは思えない。


「セレス」


 ユリアが呼ぶ。


「ん?」


「顔色悪いぞ」


 セレスは少しだけ苦笑した。


「そう?」


「そうだ」


 自覚はあった。


 怖いのではない。


 まだそこまでではない。


 ただ、自分が知らないことが多すぎた。


 聖女として生きてきたのに。


 国心環について。


 歴代聖女について。


 知らないことがこんなにある。


 それが少し衝撃だった。


 セレスは再び資料へ目を落とす。


 まだ終わらない。


 この先に何かある気がしていた。


 歴代聖女たちが残した記録。


 その続きを知りたいと思ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ