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死因記録


 本棚の前で足を止める。


 歴代聖女に関する資料は多い。


 年代ごと。


 内容ごと。


 細かく分類されていた。


 セレスは棚を眺める。


 しばらく探して。


 ようやく目的の資料を見つけた。


 表紙には小さくこう書かれている。


『歴代聖女終歴記録』


「終歴?」


 ユリアが首を傾げる。


「神殿の古い言葉」


 セレスが答えた。


「任を終えた記録って意味」


 


 机へ戻る。


 椅子に座る。


 そして表紙を開いた。


 最初の数ページは説明だった。


 歴代聖女の記録をまとめたもの。


 継承時に閲覧可能。


 閲覧権限は聖女と一部神官のみ。


 特に変わったことは書いていない。



 ページをめくる。


 初代。


 二代。


 三代。


 短い要約が並んでいる。




 セレスの視線が止まった。


 四代目。


 死亡年齢二十四歳。


 死因。


『国心環接続継続に伴う消耗』


 

「……え?」


 思わず声が漏れた。


 

 もう一度読む。


 見間違いではない。


『国心環接続継続に伴う消耗』


 そう書かれている。


 

「どうした」


 ユリアが聞く。


 セレスは答えずページを向けた。


 ユリアも文字を読む。


 そして眉をひそめた。


「消耗?」


「そう書いてある」


 セレスは急いで次のページを開く。


 五代目。


 二十七歳。


『国心環接続継続に伴う消耗』


 六代目。


 二十五歳。


『国心環接続継続に伴う消耗』


 七代目。


 二十三歳。


『国心環接続継続に伴う消耗』



 部屋が静まり返る。


 ページをめくる音だけが響く。


 八代目。


 九代目。


 十代目。


 十一代目。


 言葉は多少違う。


 表現も違う。


 だが意味は同じだった。


『国心環接続による衰弱』


『長期接続による消耗』


『接続負荷蓄積』


 

「……」


 セレスは言葉を失う。


 知らなかった。


 本当に知らなかった。


 歴代聖女の死因。


 そのほとんどが。


 国心環だった。


 

「そんな話」


 セレスが呟く。


「聞いたことない」


 

 聖女教育でも。


 継承時でも。


 誰も教えなかった。


 

 ページをめくる。


 さらに読む。


 そして。


 あることに気付く。


 

「若い」


 ぽつりと言った。


 

 二十三。


 二十五。


 二十七。

 

 誰も長生きしていない。


 もちろん例外はいる。


 三十代もいる。


 だが少数だ。


 


 セレスは無意識に自分の手を見た。


 十八歳。


 まだ若い。


 まだ先だ。


 そう思いたかった。



「セレス」


 ユリアが呼ぶ。


 その声で我に返る。



「大丈夫」


 反射的に答える。


 だが。


 声に少し力がなかった。


 理解できない。


 理解したくない。


 そんな感覚だった。


 国心環は国を支えるものだ。


 聖女の役目だ。


 ずっとそう教わってきた。


 だが。


 もしこの記録が本当なら。


 歴代聖女は。


 その役目によって命を削っていたことになる。


 

 セレスはゆっくり息を吐く。


 視線を落とす。


 そして。


 もう一度ページをめくった。


 

 まだ知らなければならない。


 これは始まりに過ぎない。


 そんな予感がしていた。


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