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願いの成就



 最後まで残った想い。


『ユリアと一緒にいたい』


 それだけだった。


 聖女としてではない。


 国のためでもない。


 ただ。


 一人の少女として。


 愛する人と生きていたかった。


 それがセレスの願いだった。



 


 光が消える

 

 セリアは小さく呟く。


 涙が零れる。


「私」


 震える声だった。


「本当に生きたかった」


 ユリアの瞳が揺れる。


「ユリアと一緒に」


 静かな沈黙が落ちた。


 そして。


 セリアは微笑む。


 泣きながら。


「でも」


 ゆっくり首を振る。


「もう叶ってる」


 神官長が息を呑む。


 リシュリーも目を見開いた。


 セリアはユリアを見る。


 十五年前と同じ人。


 ずっと待っていてくれた人。


 大好きな人。


「私」


 小さく笑った。


「またユリアに会えた」


「また一緒に歩いた」


「また話した」


「また笑った」


 涙が止まらない。


 それでも。


 悲しくはなかった。


「だから、もう大丈夫」


 その瞬間だった。


 ユリアの胸の白い糸が輝く。


 眩しいほどに。


 そして、ゆっくりと光へ溶け始めた。




 ゴォン――

 鐘の音が響いた。


 神殿中を震わせるような。


 重く。


 澄んだ音。


 誰も鳴らしていない。


 それなのに。


 鐘は鳴っていた。



 ゴォン――

 二度目。


 国心環が淡く輝く。


 ゴォン――

 三度目。


 白い糸がほどけていく。


 ゴォン――

 四度目。


 空気が静かに震える。


 ゴォン――

 五度目。


 神殿全体が優しい光に包まれる。


 ゴォン――

 六度目。


 セリアはユリアへ微笑んだ。


 そして。


 最後の鐘が鳴る。


 ゴォン――

 七度目。


 その音はどこまでも優しかった。



 まるで長い旅路の終わりを祝福するように。


 



 


 鐘の音が止む。


 静寂。


 誰も言葉を発さない。


 神官長も。


 リシュリーも。


 ただ立ち尽くしていた。


「……え?」


 最初に声を上げたのはリシュリーだった。


 神官長が振り返る。


 そして。


 息を呑んだ。


 そこにいたはずの二人が。


 いない。


 セリアも、ユリアも。


 どこにもいなかった。




 


「セリアさん!ユリアさん!」


 リシュリーが駆け出す。


 神官長も後を追った。


 理由は分からない。


 だが、向かう先は決まっていた。


 国心環の間。


 石階段を下りる。


 扉を開く。


 冷たい空気が流れた。


 中央には国心環がある。


 変わらず静かに、白く輝いていた。


 けれど。


 何かが違う。


 説明はできない。


 だが。


 何百年も続いていた何かが終わった。


 そんな感覚だけがあった。


 リシュリーはゆっくり前へ進む。


 呼ばれている気がした。


 誰かに。


 優しく。


 懐かしく。


 導かれるように。


 国心環へ近付く。


 リシュリーはそっと手を伸ばす。


 そして。


 国心環へ触れた。



 その瞬間――。




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