確かめるために
翌日。
セリアは一人で神殿の回廊を歩いていた。
考えたいことがあった。
昨日の話。
リシュリーの赤い痕。
白い糸。
国心環との接続。
もし自分の考えが正しいなら。
接続は目に見える形で存在している。
そして自分にはそれが見える。
「だったら」
立ち止まる。
窓から差し込む光が床へ落ちていた。
「確認しないと」
推測だけでは進めない。
確かめる必要がある。
その時だった。
「セリアさん」
声が聞こえた。
振り返る。
リシュリーだった。
「探しましたよ」
「リシュリーさん」
セリアは少し驚く。
昨日の話の後だからだろう。
無理をしているようには見えない。
けれど以前より少しだけ疲れて見えた。
気のせいではない。
「少しお時間ありますか?」
「ありますけど」
リシュリーは少し言いにくそうに視線を逸らした。
「昨日から考えていたんです」
その表情は真剣だった。
「私も知りたいんです」
「何をですか?」
「どうしてセリアさんだけが特別なのか」
セリアは息を呑む。
その疑問は自分も持っている。
答えはまだない。
「だから」
リシュリーが続ける。
「協力させてください」
予想していなかった言葉だった。
「危険かもしれません」
「でしょうね」
あっさり認める。
「でも、あたしの問題です」
静かな声だった。
「知らないままの方が怖いです」
セリアは言葉を失った。
前の自分と同じだったから。
真実を知りたい。
怖くても。
目を逸らしたくない。
そんな顔をしていた。
「……分かりました」
気付けば頷いていた。
「ただし無理はしないでください」
「はい」
「危ないと思ったらすぐやめる」
「はい」
返事が良すぎる。
少し不安になる。
昔の自分を見ているようで。
「本当に分かってます?」
「分かってます」
リシュリーは笑った。
その笑顔に。
セリアも少しだけ笑う。
◇
午後。
神官長とユリアにも話を通した。
当然ながら反対された。
「危険です」
神官長が即答する。
「危険だな」
ユリアも頷く。
「ですよね」
セリアも頷く。
「だったらやめろ」
ユリアが言った。
「でも確かめないと始まらない」
そう返すと。
ユリアは嫌そうな顔をした。
説得できないと理解した顔だった。
「似てるな」
ぼそりと呟く。
「誰にですか?」
「昔のお前に」
セリアは苦笑した。
否定できない。
神官長も諦めたように息を吐く。
「分かりました」
そして真面目な顔になる。
「ですが必ず私たちの前で行ってください」
「はい」
「一人では絶対にしないこと」
「分かりました」
こうして。
白い糸の正体を確かめるための準備が始まった。
誰も知らない。
それが何百年も続いた聖女の運命を変える第一歩になることを。




