↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/145

おかえり


 扉が閉まる。


 部屋には二人だけが残った。


 静かだった。


 聞こえるのは自分の呼吸と。


 少し早くなった心臓の音だけ。


 セリアは涙を拭う。


 けれど次から次へと溢れてきた。


 十五年。


 たった今思い出したはずなのに。


 長かった。


 本当に。


 長かった。


「ユリア」


 名前を呼ぶ。


 今度は迷わない。


 昔と同じように。


 自然に。


「……ああ」


 返事が返ってくる。


 それだけで胸がいっぱいになる。


 変わらない。


 声も。


 顔も。


 優しいところも。


 何も。


 何も変わらない。


「一人にしてごめん」


 最初に出たのはその言葉だった。


 ありがとうではなく。


 愛してるでもなく。


 ごめん。


 それが一番伝えたかった。


 十五年間。


 ユリアを残してしまった。


 置いていってしまった。


 その事実だけは消えない。


 


 ユリアはしばらく黙っていた。


 やがて小さく息を吐く。


「そうだな」


 静かな声だった。


「長かった」


 否定しない。


 大丈夫とも言わない。


 ただ事実だけを言う。


 それがユリアらしかった。


 セリアは泣きながら笑う。


「うん」


「本当に長かった」


 ユリアは少しだけ目を閉じた。


 そして。


「でも」


 セリアが顔を上げる。


 ユリアは真っ直ぐ見ていた。


「帰ってきた」


 その一言だった。


 たったそれだけ。


 なのに。


 胸がいっぱいになる。


 嬉しい。


 会えた。


 やっと。やっと会えた。


 気付けばユリアの服を掴んでいた。


 昔と同じように。


 離れないように。


 確かめるように。


「ただいま」


 震える声で言う。


 ユリアは少しだけ目を細めた。


「おかえり」


 十五年越しの言葉だった。



 それを聞いた瞬間。


 セリアは思わず顔を上げる。


 懐かしい。


 愛しい。


 会いたかった。本当に。


 会いたかった。


 自然と距離を縮める。


 少し背伸びをする。


 

 すると。


 額を押された。


「待て」


「え?」


 間抜けな声が出た。


 もう一度近付こうとする。


 今度は肩を押さえられる。


「待て」


「何で?」


 本気で意味が分からなかった。


 十五年ぶりだ。


 ようやく会えた。


 恋人だ。


 しかもつい最近付き合い始めた。


 何も問題ないはずだった。


「感動の再会なんだけど?」


「そうだな」


「十五年ぶりなんだけど?」


「そうだな」


「昔はキスしたじゃん!」


 ユリアが頭を抱えた。


 本当に抱えた。


「したな」


「じゃあ何で!?」


 セリアは心底不思議そうだった。


 ユリアは深いため息を吐く。


「今のお前は十五歳だ」


「中身は十八歳!」


「身体は十五歳だ」


 即答だった。


 セリアは言葉に詰まる。


 ユリアは容赦しない。


「恋人になった時に言っただろ」


「……」


「手は出さない」


「それはセリアだからでしょ」


「今もセリアだ」


 正論だった。


 あまりにも正論だった。


 セリアは不満そうな顔になる。


「理不尽」


「知らん」


「十五年待ったのに」


「オレも十五年待った」


 そこで二人とも黙る。


 確かにそうだった。


 セリアは吹き出した。


 ユリアも少しだけ口元を緩める。


「本当に変わらないな」


「ユリアも」


 そう言って。


 セリアはそっと手を差し出した。


 ユリアは少しだけ迷う。


 そして。


 その手を握った。


 拒まれない。


 離されない。


 ただ静かに握られる。


 温かかった。


 昔と同じ。


 だけど少し違う。


 十五年分の想いがそこにあった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。