ずるい
昼下がりの中庭。
風が心地よかった。
セリアはベンチへ腰掛けたまま空を見上げる。
隣にはユリアがいる。
最近はこれが当たり前になっていた。
「ユリアさん」
「何だ」
「聞きたいことがあります」
珍しく真面目な声だった。
ユリアは視線だけ向ける。
「何だ」
「私が成人したら」
そこで少しだけ間を置く。
「付き合ってくれますか」
ユリアは黙った。
驚いたわけではない。
いつか言われると思っていた。
問題は。
思っていたより早かったことだ。
「三年後の話か」
「三年後です」
「長いな」
「短いです」
即答だった。
本気なのだろう。
冗談ではなく。
からかいでもなく。
真面目に言っている。
「三年待てば成人です」
セリアは続ける。
「そうしたら問題ないですよね?」
「そういう話じゃない」
「じゃあどういう話ですか」
逃がしてくれない。
ユリアは小さく息を吐いた。
面倒だな。
本当に。
面倒なやつだ。
「私は好きですよ」
セリアが言う。
知っている。
何度も聞いた。
それでも。
改めて言われると困る。
「ユリアさんは?」
静かな声だった。
いつもの軽さがない。
本気で聞いている。
ユリアは答えられなかった。
嫌いではない。
むしろ逆だ。
だから答えられない。
その時だった。
セリアが立ち上がる。
そして。
迷いなく抱きついてきた。
「っ」
ユリアが固まる。
肩へ手を置く。
引き離すべきだ。
そう思う。
だが。
一瞬だけ迷った。
温かかった。
安心したような顔をしている。
その顔を見た瞬間。
すぐには動けなかった。
「嫌ですか」
セリアが見上げる。
近い。
近すぎる。
ユリアはようやく肩を押した。
そっと。
傷付けないように。
引き離す。
「三年の問題じゃない」
低い声だった。
セリアが首を傾げる。
「どういうことですか」
ユリアは少しだけ目を閉じる。
ここまで来たら。
言わなければならない。
「お前」
一度言葉を切る。
「オレが何歳だと思ってる」
「二十歳くらいって言ってました」
予想通りの答えだった。
ユリアは苦笑する。
「違う」
「え?」
「オレはお前が思ってる年齢じゃない」
セリアが瞬きをする。
意味が分からない。
だが。
ユリアの顔を見ていると。
冗談ではないことだけは分かった。
「どういう意味ですか」
中庭に風が吹く。
木々が揺れる。
ユリアは空を見上げた。
十五年間。
神官長以外には話してこなかったこと。
「長い話になる」
そう言って。
ユリアは自分の秘密を話す決意をした。




