初めての嫉妬
翌日。
セリアは朝から落ち着かなかった。
理由は分かっている。
昨夜。
認めてしまったからだ。
ユリアが好き。
その事実を。
「うぅ……」
枕へ顔を埋める。
思い出すだけで恥ずかしい。
けれど。
嫌な気持ちではなかった。
むしろ嬉しい。
会いたい。
今すぐ会いたい。
そんなことを考えている自分がいる。
◇◇◇
昼過ぎ。
神殿へ到着する。
門番が何か言っていた気がする。
だが聞いていなかった。
頭の中がいっぱいだったからだ。
中庭へ向かう。
そして。
すぐに見付けた。
ユリア。
今日もいた。
思わず笑顔になる。
だが。
次の瞬間だった。
その笑顔が固まる。
ユリアの隣に誰かいる。
リシュリーだった。
二人は話をしている。
真面目な顔で。
距離も近い。
護衛と聖女。
それだけだ。
本来なら。
何もおかしくない。
「……」
なのに。
胸の奥が妙にざわついた。
面白くない。
何故か。
分からないけれど。
面白くない。
セリアは少し離れた場所で立ち止まる。
話し掛けるタイミングを失った。
その時。
リシュリーがこちらへ気付いた。
「セリアさん」
笑顔で手を振る。
セリアも慌てて手を振り返した。
そして。
ユリアも振り向く。
「ああ」
短い返事。
いつも通り。
なのに。
何故だろう。
少しだけ安心した。
「どうしたんですか?」
セリアは二人へ近付く。
リシュリーが答えた。
「巡礼の話ですよ」
「巡礼?」
「来月からです」
そういえば聞いたことがあった。
聖女が各地を巡る行事。
ユリアは護衛として同行する。
「結構長いんですか?」
「二週間ほどですね」
リシュリーが微笑む。
その瞬間。
セリアの笑顔が消えた。
「二週間?」
「はい」
長い。
すごく長い。
今までなら気にならなかったかもしれない。
でも今は違う。
好きだと気付いてしまったから。
二週間会えない。
その事実が思った以上に重かった。
「セリアさん?」
リシュリーが首を傾げる。
慌てて笑顔を作る。
「何でもないです」
全然何でもなくない。
その後。
ユリアと二人で歩く。
いつもの時間。
なのに今日は少し違った。
セリアが静かだった。
「珍しいな」
ユリアが言う。
「何がですか」
「お前が静かだ」
否定できない。
自分でも分かっている。
「……別に」
「そうか」
ユリアは深追いしない。
それが少し腹立たしい。
いつもなら助かるのに。
今日は違う。
少しくらい気にしてほしい。
そんな自分勝手なことを考えてしまう。
そして。
ふと口を開いた。
「リシュリー様と仲良いですよね」
ユリアが足を止めた。
「は?」
予想外だったらしい。
「護衛ですから」
セリアは続ける。
「ずっと一緒なんですよね」
「仕事だからな」
「ふーん」
返事が素っ気ない。
自分でも分かる。
ユリアは怪訝そうな顔をした。
「何だ」
「何でもないです」
今度はセリアが誤魔化す番だった。
帰り道。
一人になってから。
セリアは頭を抱えた。
「最悪……」
思い出す。
昼間の自分を。
リシュリーと話すユリアを見て。
面白くなかった。
巡礼へ行くと聞いて。
落ち込んだ。
そして。
仲が良いですよね、なんて聞いてしまった。
完全に変だった。
「これって」
答えは分かっている。
認めたくないだけだ。
深いため息を吐く。
そして。
頬が熱くなる。
嫉妬だ。
人生で初めての感情だった。
好きな人が。
他の誰かと仲良くしているのを見て。
面白くないと思ってしまった。
「私……」
想像以上に重症かもしれない。
セリアは顔を覆った。
明日。
どんな顔でユリアに会えばいいのか。
全く分からなかった。




