GW戦線。風雲ギルドバトル 11-2
「皆頑張ってくれてるし、私も戦わないとダメよね」
「ははっ、何を言うかとおもえば。数人やられたとは言え、この数を相手に勝てるとでも?」
ギンガがそう言いながら以前も使っていた雷の魔法を詠唱し始める。
それと同時にガレイオウの指示が飛び、周りに居たPKたちが武器を構え一斉に飛び掛ってきました。
「ぎゃあっ!」
「グブッ」
「な、ん……だとぉ?」
魔法を詠唱しているギンガからすれば予想外だったに違いない。
PKたちの数の暴力により地に伏した私に全力の雷を落とし、倒す予定だったのだろうけど聞こえてきたのは私の悲鳴ではなく仲間の叫びだけだから。
仲間の叫びが止まり、ギンガの目に映ったのは装備している着物からオリハルコン製の針を数本生やしているレイカの姿だった。叫びを上げていた仲間はというと、針が急所に当たっていたのかその一撃で体力をすっかり消失させていた。
「ちょっ!?いくらゲームとは言え、それは流石に卑怯じゃねぇか!?」
ギンガがそう叫ぶのも仕方のないことだと思います。私自身、このようなスキルを使われたら同じことを言うと思いますし。でも棘があるって私らしいと思いませんか?
しかも針自体がオリハルコン製と来たものだから並みの武器では傷一つつけることができないのです。
そういう事ですので私を倒すならハンマー系列の重量系の叩き潰す用途の武器じゃないとダメですよ?
仮にそういう武器で来ても構えたり振り上げてる間に逃げさせてもらいますけど。
「あら?数の暴力で来たのはそちらじゃないですか?前にも言いましたが、女一人に男が10何人も寄って集って来るほうが卑怯だと思いますよ?」
「俺達はPKだからいいんだよっ!これが俺達の戦い方だ!だがアンタは普通のプレイヤー……だよな?」
「なぜ疑問系なんですか?私はどこからどう見ても普通のプレイヤーでしょう?
一対多数を相手にする以上どういった手段を使っても問題ないですよね?なので貴方達に文句を言われる筋合いはありません」
針の罠があると分かった以上、PK達はそう簡単に近づいてこなくなり、微妙に膠着状態になる。
そんな空気を破壊したのが影法師のギルマスであるガレイオウ。
「おまえらぁぁ!女一人にビビるな!さっきの針の技も連続で出せるとは思えねぇ。時間差で飛び掛れ!」
「わ、分かった!」
まずいです。ガレイオウの言うとおり《針の罠》は一度使うとクールタイムが5分ほどあるんですよねー。
仕方ありません……。裁縫闘士のスキルを全て開放するとしましょう。後2種類だけですけど。
「うおぉらぁぁー」
「チョイサ~コラサ~」
「オラッ!オラオラッ!オルァァ!!」
PKたちがイロイロな掛け声で次々と飛び掛ってくる。舞の足裁きのおかげでモロに当たるという事はないですけど、かすり傷は負わされるんですよねぇ。
ギルドバトルが終わったらもっと細かな足裁きを覚えることにしましょう。
剣・ナックル・棍棒等様々な武器を回避し、5指にセットした針で交わした相手をザクザクと突き刺していく。
「ウグゥッ!」
「ギャヒィーン!」
「あがっ……!」
さあ問題です。一撃死したのは誰でしょう?
答えは全員です。運45の強運を舐めないでください。急所狙いの確率が50%超えてるんですからねっ!
だ、誰ですか!?もう魔術師じゃなくてウサシン(運アサシン)じゃね?とか言った人は!!
今回は偶々3人とも急所突き効果が発動しただけなのよ?
「マジかよ?あいつらレベル46だったんだぜ?それを一撃だと……?」
「フィジット。やっぱあの綺麗な姉ちゃんは凄い女だ。どうやってアイツラを倒したかは分からないが、マジで舐めて掛かるとリベンジを果たすことは出来そうにないぞ」
「そうだな。……全員に通達!プランRを発動する!全員であの女を取り押さえるんだ!」
フィジットの合図でその場に居るガレイオウ以外の全員が四方八方から飛び掛ってきました。
プランRとはそのままの意味でRoundという意味みたいですね。安直な……まだ龍潜境のフォーメーション何とかの方が良かったですよ?
……まだ針の罠のクールタイムが解けていませんね。なら仕方ないです。
このタイミングだと同時に囲まれてしまうので、逃げ場をなくしてしまいますね。
なのであえて突撃しましょうか。こうすれば反対側から襲ってくるメンバーがこっちに来るまで多少の遅延が起きます。その間に一人でも多く倒せば良いんです。
私が適当な一角に突っ込んでいくと突っ込まれた方のPKに焦りの表情が浮かぶ。
「ゲェッ!?こっちに来やがった!ヤッベェェ!」
背中を見せたPKに向けて針を飛ばすと、見事に後頭部の急所にヒットし倒れる。
近づいていくべき対象が逆に近寄ってくると何とか距離を取ろうとするのが心理。
PKたちもそう言った心境なのでしょう。実力を出し切ることも出来ず、次々と私の針飛ばしの餌食になって行きます。
そうこうしてる間に5分のクールタイムも終了しましたね。これでいつでも針の罠が張れます。
逃げ腰だったPKたちも仲間の減少に気付き、追い詰められる。
近づけば針の罠や針で急所を刺され穴だらけにされるし、離れても針飛ばしで急所を……。
「ちっ、腰抜けどもが……あれだけ間髪入れずに突っ込めって言ってるのに足を止めやがって」
「作戦通りには行かなかったけど、今の俺達なら前のようにはやられないさ。やられたヤツラのおかげで戦い方もわかってきたしな」
「だな。だが戦い方が分かったとは言え、あの女の回復能力は厄介だぜ?どうするんだ?」
「あぁ、あれは【無限円環】ってスキルらしい。その弱点も調べておいたから安心しな」
「ソイツは頼もしいな。なら当初の予定通り俺たちであの女を倒すとするか」
「だな」
他のPK達が尻込みする中、前に出てきたのはやはりフィジットとギンガの二人だった。
近くにいたPKを倒し終わり、次の相手の二人を見やる。二人は相変わらず不気味な笑みを浮かべているので何かやってきそうですね。警戒は怠らないようにしないと。
「次は貴方たちね。余り時間もないから本気出すけど良いわよね?」
「あぁ、いいぜ。望む所だ。俺達もお前をサックリ倒してPK稼業に戻りたいんでな」
「フィジット……。行くぞ!【雷牙砲】」
「おうよ!【封破爆砕】」
雷魔法が一直線に、そしてフィジットがジャンプし斧技が上から振り下ろされる。
その攻撃を横に移動する事で避ける。
しかし
「しゃらくせぇ!」
フィジットは技を途中で止め、斧を真横に振り払う攻撃に転じた。
「うそっ!?」
私は振り払われた攻撃を食らってしまう。消耗した体力は4割。
やはりギルドバトル用に作った装備はステータスが低いので食らうダメージも大きい。
「っしゃぁ!当たったぜぇ!?これこそ俺らが発見した《技キャンセル》だ!」
「そ、そのままじゃない……」
「うっ!い、良いんだよ技の名前なんざ!」
このキャンセル技を使ってくるなら、避けた後の事も考えないといけなくなりました。
PK側は私の針の罠を警戒し、私はあのフィジットが使う技キャンセルを警戒しないといけない。
フィジットがこうならあの鑑定の人…ギンガも何らかの攻撃手段があるかもしれない……。
「【ライトニングネット】!」
「あっ!」
ギンガの魔法がフィジットと打ち合っている私の足元に着弾し、同時に網のように展開し私の機動力の元である足の自由を奪う。
「いまだ!フィジットォ!きめろぉぉ!」
「待ってたぜ。ギンガ!これで終わりだぁ。くらいやがれぇぇ!」
足を封じられその場から動く事ができない私は、高く飛び上がり【封破爆砕】を狙うフィジットを見上げる。
このままではあの斧の技で両断され負ける事は間違いありません。ならまだ使いたくなかったですけど秘蔵の帯を出すしかないようです。
ユニーク帯の方は禁止されてるので代わりに、先日の水着泥棒の鳥の羽と龍革から作った《盗鳥の帯》を装備し、上空から降りてくるフィジットの手を目掛けて振るう。
足が固定されてるので踏ん張りが利かず威力は出ないですが、特殊能力を使うには問題ないのです。
「強奪:対象武器」
この特殊能力は狙った装備(武器・防具)を戦闘終了まで任意で一つ奪う事ができます。奪う際に必要なのは言うまでもなく運の補正値。
この私から水着の上半身を盗んだ鳥ですから、恐らく盗み系統のスキルがあると思い作ってみれば予想通りの出来になり嬉しかったです。
強奪に失敗したら私は負けてしまいますけど、今の状況を打破するにはこれにかけるしかないですから。
「オラァァァァ……あ?」
私に斧が当たる寸前フィジットの手から斧が消失する。当然【封破爆砕】は武器である斧がなくなったので失敗する。
素早く装備を帯から針に変更し、武器がなくなり狼狽えるフィジットに目掛けて突き刺した。
「ぐあぁぁぁ!」
一度目の突き刺しでは急所に至らなかったので、二度三度と突き刺す。ちなみに一撃あたりのダメージは小さい。
「ぴぎゃぁぁ!や、やめ、やめてぐれぇぇ!」
……ど、どうしよう。突き刺すの楽しい……。はっ!ダメダメ。危険な思考に陥る所だったわ。
でもこのゲームに痛覚はないのになぜ悲鳴を上げてるんでしょうね?
刺さるという視覚的なイメージなのでしょうか?
あっ!良い子は真似したらダメですよ?私との約束だよ?もし守らなかったら……分かるよね?
4度目の突き刺しでフィジットの体力ゲージが一気に消失する。
「ふ、フィジットォォォ!!」
ギンガ自身もフィジットの【封破爆砕】で片が付くと思っていたらしく追撃の準備をしていなかった。
フィジットを倒すと同時に足を封じていた雷の網の効果が消えたので、ギンガにも針のプレゼントをするべく走り寄る。
「く、くるなぁ!【サンダーエレメント】!【雷砲】!【雷牙砲】!【招雷】!」
ギンガは雷の魔法に加えて【召喚】スキルも持っているらしいですね。
サンダーエレメントは術者と同じレベルの精霊を呼び出すもので、結構強いという噂です。
さらに雷の魔法を受ける度に強さが増し、召喚中は術者が無敵となるという鬼畜仕様。
なるほど後半の雷砲はエレメント強化用ですか……。厄介そうです。
あとエレメント系は物理無効の種族ですから魔法で攻撃しないとね。
「ふ、ふはは!これで俺の勝ちだ!フィジットの敵、討たせてもらうぞ!」
「そう上手く行くと良いけどね?」
「な、なにっ!?」
「戻ってくるのが遅いわよ?」
「えぇ~?これでも急いで戻ってきたんだよ?」
声の主がいるのはフィールド上空。ドラゴンに跨った騎士ナナ。ちなみにナナの後ろにはルルカも乗っています。まだ少々離れているけどシヅキたちもこっちに合流するべく走ってるみたいね。
「数ではこっちが有利になったわけだけど…どうする?」
「くそっ、何か手は……」
「なら、俺も相手させてもらおうか」
現れたのはフィジットとギンガの戦いをずっと見ているだけだった影法師ギルドマスターのガレイオウ。
あれですね。満を持して登場ってやつ?……仲間がやられるのを黙ってみていたこの人はなんか嫌いです。
「が、ガレイオウさん?出てくるのはもっと後のはずでは?」
ギンガも予想外だったのか焦っている。そんなギンガを見てガレイオウはニヒルに笑う。
「ふんっ。既に残っているのは俺とお前の二人だけだ。一人くらい残っていても俺のスキルは発動するから問題ないのだよ」
「……そうっすか。実際助かりますけどね」
「では、行くとするか」
そういうと同時にガレイオウは細剣を取り出し、刺突攻撃を仕掛けてくる。
「ギルマスの相手はギルマスってことかしら?」
「当然だ。レイカといったな。お前には俺と遊んでいてもらうぜ?」
「……ナナ!ギンガ達の相手お願いできる?」
「えぇ!!私の役割ってそのガレイオウって人を倒す事のはずだよねー?」
「最初はそうだったけど今は状況変わったのよ?この人が私と戦いたいというからやるわ。個人的に気に入らないし」
「むぅ!しょうがないなぁ。これで陰陽師戦の賭けはチャラだからね!」
そういうとナナはシャナンから飛び降りて、サンダーエレメントとギンガと相対する。
ルルカはナナの属性を纏った技だけでは物足りないと判断したのか、ナナのフォローに入るようです。
シヅキ達3人は……普通に私の戦いを見るつもりのようですね。
戦いの邪魔をされても困るからそれで良いですけど。




