GW戦線。風雲ギルドバトル 11-3
「行くぞ!【フルーレピアース】」
影法師ギルドマスターのガレイオウの細剣の加速技が発動し、私との距離を一気につめてくる。
その攻撃をギリギリの所で避けるが、ガレイオウの攻撃は私の所へ向かず、後方で戦いを見ていたシヅキたちに向かっていた。
「え!?ターゲットこっち?」
「うわわわっ!」
「くっ、卑怯な」
慌てて武器を構えるシヅキたち。
何で武装解除してたのよ!と叫びたくなりましたけど、それより先にガレイオウを止めるのが先ですよね。
ガレイオウの攻撃を盾を構え正面から受けようとするスミナ。しかしガレイオウは素早くその進路を変え隣に居たコノハに襲い掛かる。
「あっ…く……!」
細剣が深々と突き刺さり見る見るうちに体力が減っていくコノハ。
「コノハ!!」
シヅキが叫びながらも回復アイテムを探しているけどどう見ても体力の減りのほうが早い。
私も急いで向かっているけど、この位置からだと回復魔法も届かないのです。て言うか着物は走りにくすぎ!スリットくらい入れておけばよかったです。
「ゴメン……あと、おねがい」
その言葉を二人に残し倒れるコノハ。ガレイオウは続けてシヅキに襲い掛かる。
「まずは一人……次は…お前だっ!」
「よくもコノハを……許しませんっ!」
シヅキはガレイオウを迎え撃つべく深く腰を落とし槍を構えた。
ガレイオウはそんなシヅキを見つつ、他のターゲットであるスミナやギンガの相手をしているナナ達の位置も確認しているようですね。
ガレイオウは加速した状態で細剣を素早く突くことを得意としているようです。
シヅキに接近したガレイオウは次々と連続突きを放っている。シヅキはその致命傷になりそうな突きだけを槍などで捌き、隙を探している。
けど、徐々に押され始め体力のゲージが見る見るうちに減っていく。
「シヅキ!これを!」
スミナから回復アイテムを使用され、一度は体力を全回復できたけど、ガレイオウの攻撃は止まらなかったので、結局またジリジリと押され始める。
スミナが間違った点は回復アイテムを使うのは良かったけど、シヅキがガレイオウから少しでも距離を取れた時にするべきだったのです。
回復アイテムの再使用にもクールタイムがあるので連続使用できないですからね。
そりゃ、目の前でガリガリ体力が減ってたら回復アイテムを使ってあげたいのは分かるけど、判断を間違えると余計にジリ貧になるのです。
結局、シヅキもガレイオウの猛攻から逃げる事ができず細剣の一撃で倒れました。
ガレイオウが続けて狙うのは勿論スミナ……ではなく、ギンガやサンダーエレメントと戦っているナナとルルカでした。
恐らくガレイオウはスミナの盾を短時間で抜くのは厳しいと考え、ターゲットを変更したのでしょう。
ギルドチャットでガレイオウが向かっている事を知らせておいたので不意打ちでやられることはないと思いますけど、今の着物+草履装備では追いつくことなど不可能です。
「この服装じゃダメだわ。もっと動きやすい装備に変えないと」
このままでは新人たちだけじゃなく他の子たちも被害を被ると判断し、アイテムボックスに入れてあった予備の装備である《天見兎》セットを装備しました。
この装備は帽子・ボンデージ・ブーツから出来ていて、胸部はモフモフの毛皮で作られており肌触りが凄く良いんですよ。リアルで着たら敏感な先端が……あっ!これは言っちゃいけない事らしいので、後は御想像にお任せします。
帽子は普通の唾の付いている物です。……ウサミミは付いていませんよ?残念でした~。
ブーツは脹脛辺りまでの長さがありますけど、通気性が良いものとなっているはずです。ゲームだから設定については鑑定結果の受け売りですけどね。
この装備に変えたことで足元がスッキリし、走りやすくなりました。
けど代わりに上半身が薄着になってしまい、上から下まで体のラインが浮き彫りになるのが恥ずかしいです。……見た目装備のガウンだけでも装備しておかなくっちゃ。
ちなみにこれらの装備はナナからの制作オファーだったのですが、今朝完成品をナナに渡すと、そのまま私にプレゼントとか言って渡されたものだったりします。
……ナナがエロエロな服が良いな~。
と言ってたので、意地悪がてら結構露出を多目で作成した物の、それを自分自身が着る事になるとは夢にも思わなかったんですよね。本当、余計な事しなきゃよかったわ。
そしてこれも大事な装備ステータスですけど、見た目に反して敏捷が40(GMから提示された出場条件のギリギリ)で他の運以外の補正が35上昇するので見た目さえ我慢すれば大丈夫……ですよ?
☆☆☆☆☆☆同時刻:試合会場にて☆☆☆☆☆☆
《な、なんとぉぉ!!【夢の雫】ギルドマスターレイカ様が生着替え……もとい、装備の変更を行ったー!
オープニングで見た清楚で美しい、そして煌びやかな着物から一転して、体のラインが浮き彫りになるボンデージ姿だぁぁ。レイカ様は一体何を考えて装備変更を行ったのか。謎が深まるばかりだ!
……そして男性プレイヤーの諸君!安心すると良い。実況中である私トトもレイカ様のお姿を見てから血が滾り、席を立つ事ができません!
……そういうわけで座ったままで実況させていただこうと思います!
お?ただいま情報が入りました。レイカ様の現在のお姿は教育上よろしくないと判断されましたので以後発表されるPVなどの映像には修正された姿となるそうです。
よってあの御姿を見れるのは今現在この試合を見ている人だけの特権となります!嬉しいかおまえらぁぁぁぁ!》
観客席の男性プレイヤーと、一部の女性プレイヤーから熱い声が上がったのは言うまでも無い。
その頃トト氏が実況する裏側……開発室で食事をしながらモニターを見ていた和仁は食べていたものを噴出すほど動揺していた。
「ぶはぁっ!?い、いかん。それはイカンぞぉ麗華ぁぁ!キャサリン君。急ぎギルドバトルの映像を作成し差し替えるんだ!」
「だから……ってそれどころじゃなりませんね。分かりました。内容は今までのデータをつなぎ合わせそれらしい感じに仕上げればよろしいですか?」
「それで構わん!今は時間との勝負だ!急げ!だが、この修正前のデータは俺が持って帰る」
「……はい(最後の一言で台無しだわ)」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「うわぁ~お!」
「な、なによ?」
「レイカちゃん……抱きついて良い?良いよね抱きつくよ!」
「ダメに決まっているでしょ!それより今の状況は?」
「残念、状況は見てのとおり敵であるギンガ、こっちのギルドではルルカ・スミナの二人が戦闘不能になった所だよ?」
私がナナ達の所へ駆けつけた時、まず最初にギンガが私を見て赤面。心肺データの急激な変化により回戦切断するという事故?が起きました。当然サンダーエレメントも消失しています。
続けてスミナも同じく回戦切断らしいですね。理由に見当が付きませんけど。
ルルカは一瞬、私に目をやり、呆気にとられた瞬間にガレイオウにやられちゃいました。
そんな変な物見るような顔で、見ないでほしかったわ。
そしてガレイオウ本人はというと、私を見て固まっているようですね。表情は変わってないですけど。
返事を返してくれたナナは……テンション上がってますね?この様子ならガレイオウ相手に二人で戦えるわね。
「う……うぅ。ダメ!もう我慢できない!レイカちゃーん!」
「え?」
なんとナナは私に抱きついてきたではありませんか。ダメって言ったのに!
「ち、ちょっとナナ。離れてってば!」
「だってだって。その服が……エッチすぎる。ボンデージだけでも破壊級なのに、ガウンを纏ったせいで太ももの絶対領域が形成され、エロさが数百倍になってるんだもん」
「へ?え、エロい?私が?じ、冗談よね~?」
エロいなんて……そ、そんな事言われたのは初めてよ。無性に恥ずかしくなってきたわ。
「レイカちゃん。リアルでも是非この服作ろうよ!」
「い、イヤよ!」
「そんな事言わずにさ、作ってよ~。それとも買ってきた方が良いかなぁ……」
私とナナがそんな言葉をかけてるうちに、ガレイオウが再起動する。少々前屈みだけど。
「くそ!まさかこのゲームでハニートラップを仕掛けられるとは思っていなかったぜ!
だが、その作戦はもう俺には効かん(はずだ)!」
ガレイオウがなんか訳のわからないこと言ってますよ?誰一人としてハニートラップを仕掛けてなんかないですからね?
「お前らはこの俺を怒らせた……。
ギンガもやられちまったようだし、俺のユニークスキルでお前ら二人をブッ倒す!」
「なん……ですって?」
今の言葉は私のじゃないですよ?という事は……
「PK程度が私のレイカちゃんを押し倒す?ウフフフ。何を出来もしないことを言ってるのかなぁ?」
「んなっ!?だれも押し倒すなんて言ってねぇ!」
あっ、そうか。龍潜境での戦いの時、ギンガ達に麻痺させられて押し倒された格好になったんだけど、それをナナに言ってなかったんだっけ?
「ナナ?私は確かに他のPK押し倒されたことはあるわ。でも大し……」
言葉を続けようとした私に待ったをかける様にナナの態度が豹変しました。
「なな、なんだってぇ!ほほほ、ほんとに押し倒されちゃったの?う、嘘だよね?」
「どうしてナナが焦ってるのよ?ゲームの中で押し倒されることくらいあるでしょう?」
「ほ、ほんとなんだ……許さない……PK全部……ユルサナイッ!」
ナナはユラリと立ち上がると、ガレイオウに向かって走る。その速さはシステムでも反応できないかもしれない。異世界仕込みの身体能力を出しちゃダメでしょ!
「はやいなっ!だが、俺のユニークの前では無意味!ユニークスキル【怨念】発動!」
怨念は、一定時間内(PVフィールドでは30分以内・通常フィールドでは10分以内)に多くの戦闘不能者が出る毎に運以外のステータスが少しずつ上昇していくものだと言う。
戦闘不能者というのはフィールドでは倒されたモンスターも含むので、人気狩場でPKをされた場合、恐ろしい効果を発揮することになるでしょう。
「そっか。ガレイオウが仲間がやられても大人しく見てたのは、このスキルの効果を上げるためだったのね」
「ユルサナイ……私でも押し倒したことがないのに……絶対に許さないんだから……ブツブツブツ…」
……ナナはまだ言ってるのね。流石にリアルで押し倒されたら大問題だけど、ゲーム中ならしょうがないと思うんですけどねぇ?
とりあえず、ユラユラと幽鬼の様なナナを見るのは、私が耐えられないので止めましょう。
ガレイオウと打ち合いの果て距離を取ったナナの背後から抱きついて耳元で声をかける。
「こぉら。ナナ!落ち着きなさい」
「ふおぉぉ!?レイカちゃんの吐息が耳にぃ……そして私の背中に当たっているのは、もしかしなくても……!
……はっ!私は一体何してたんだっけ?」
「勝手に暴走してたのよ。……それより落ち着いたわね?」
ナナに抱きついた状態から離れるとナナは凄く名残惜しそうにしている。
「あぁ!レイカちゃんあと少しだけぇ!」
「気が向いたら……ね?今は目の前のガレイオウを協力して倒すのが先よ」
「了解だよ!レイカちゃんの吐息とあの柔らかさでパワーアップした私の実力を見せてあげるね!」
「私の息とかにそんな効果はないってば!」
ちなみにそんなやり取りを大人しく(意図せず)?見ていたのが約一名。
それも今までの一幕が終わると同時に我に返っている。
「しまった!俺としたことがユリユリな展開に目を奪われちまうとは!チャンスだったのによ!」
反省は一瞬。切り替えが早いのが、ガレイオウの特徴らしく私達の元に【怨念】で敏捷の上がった状態で襲い掛かってくる。
「まとめて食らえや!【スピシーズピアサー】」
スピシーズピアサーは細剣の中で、高威力を誇る範囲技です。
ナナはその軌道を読み取り、「よいしょっ!」とか「はっ!」や「ほいっ!」という掛け声で避けていく。
私は風塵魔法を適度に発動し、回避方向への追い風を作り舞の脚捌きで範囲から脱出しました。
ガレイオウはステータスが上がった状態の攻撃を、私達のどちらにも掠らせる事ができず悔しそうにしている。
スキル発動後はわずかとは言え、硬直が発生するのは全てのスキルに共通する。だからチャンスは今しかないのです。
「ナナ!同時に反撃するわよ!」
「はーい。(私とレイカちゃんの共同さっぎょお~)……燃えてきよっとぉ~!!」
ナナが余計なこと考えてそうだけど、今はそれを注意している暇はないわ。
さっきの範囲攻撃、ナナは余裕そうだったけど私には結構ギリギリだったから、何度もやられると困るのよね。
ナナは【戦杖】スキルの技 《エリミネートチャージ》を、私はこのギルドバトル中にレベルの上がった【裁縫闘士】の新技を使用することにしました。
数秒後、技使用後の硬直が解けたガレイオウのターゲットは私に向いたようです。
ナナの放ったエリミネートチャージは、地形破壊効果を併せ持つ殴り技で、破壊したフィールドで追加ダメージを与えることも可能。その代わり攻撃に至るまでに多少時間が必要になるわけです。
私はすかさずナナにアイコンタクト(経験上、分かってくれるはず!)をして、相手の細剣の一撃に合わせて針の罠を発動。
ガレイオウは既に突進しながら剣を突き出していたので、針の罠に突っ込む形になりますが、先端だけが掠った所で難を逃れ停止しました。
けどそれを狙っていたのが私の新技。《糸技:亀甲羅縛り》です。
「ぐぁ!?は、外れねぇ!?」
糸技:亀甲羅縛りは、今まで針をメインに使っていたのとは打って変わり、オリハルコン製の糸を使用して相手を攻撃する技で拘束効果も同時発生する。
この攻撃で拘束する事により、ナナが狙っている技を確実に当てることが出来るようになりました。
「さっすがレイカちゃん!私の動いてほしいように動いてくれるよね!」
「無駄口を叩いてないで、一撃かまして来なさい」
「任せといて!いっくよ~~」
ガレイオウが拘束され、もがいている所にガレイオウごと粉砕する一撃が放たれる。
「うおぉぉ!!はずれr……プギュルっ!」
ナナの渾身の一撃をまともに食らってもなお、ガレイオウのゲージは赤いゲージが数ドットだけ残っています。ゴキブリ並みにしぶとい生命力って言うヤツでしょうか?それともスキルで一撃死に耐えたのでしょうか?
とにかく、拘束の効果が残っているうちにさっさと止めを刺すに限りますね。
《Aブロック優勝者は……レイカ様のギルド【夢の涙】となりました!皆さん惜しみない……いえ、眼福をありがとうの意味で拍手を送ってください!》
試合フィールド内にいる私達には、トト氏の実況は聞こえないですけど、観客の様子が映し出されたので、熱狂している様子だけは見て取れました。
「楽しんでもらえたのかしら?」
「うーん……どうだろうね?」
ナナと話しながら試合フィールドから控え室へ転送されるのを待つ。
1分ほど経ってからようやく、控え室への転送が始まり戻るとそこには、ルルカやシヅキ達の姿がありました。
「レイカさん。お疲れ様でした~」
「ありがとう。コノハ」
「レイカさん。この試合では不甲斐ない所を見せてしまいましたけど、次の【滅神】との戦いでは必ずお役に立ってみせます!」
「そんなに気張らなくても良いわよ?ここまで来れたなら次で負けても良いじゃない」
「それでは私達の残留の件で困るんですよ~」
シヅキが泣きそうな声で言う。そこまでウチのギルドに残りたいのかしら?結果を残し、泣きそうになってまで残留したいというのなら断る理由もないわよね。
「シヅキ達がこのギルドに居たいのなら、残っても良いわよ?大した事をしてないギルドで良ければね」
そう言うと、シヅキ達は絶対残りたいというので、この時点を持って正式加入となりました。
ほんとに良いのかしら?ギルド活動なんてしてないし、適当に喋ったりしてるだけのギルドなのに。
まあ決めるのは彼女たちだし、好きにしてくれたら良いけど。
控え室から出ると、影法師の面々にすれ違いました。
その際、ガレイオウやフィジットに、すっごい睨まれてしまいました。ギンガは私の装備品が着物に戻ってるのを見て、ガッカリしてたようですけど何なのでしょう?
この後はリアル時間でお昼という事もあり、Aブロック代表【夢の雫】 VS Bブロック代表【滅神】の戦いは午後からとすると言うシステムメッセージが流れました。




