パーティーの正しい組み方
マリンたちとパーティーを組んで、しばらく狩りを続けていた。
パーティーを組むことで経験値が増えること自体は、マリンたちも体感しているらしい。
だが、話を聞いているうちに気になることが出てきた。
「経験値の配分、変えられるよな?」
「……はい?」
「パーティーに入った人数で均等に分けたり、倒した人が総取りする設定にしたりできるだろ」
マリンたちは顔を見合わせた。
「そんなこと、できるんですか?」
「知らなかったのか?」
「はい。パーティーを組むと経験値が増えるので、それだけだと……」
どうやら本当に知らないらしい。
パーティーを組む最大の利点を、雑魚敵を倒してレベルを上げるための手段程度にしか考えていなかった。
俺は設定を変更し、パーティーの経験値を均等に配分する。
「これで全員に同じだけ入る」
「……」
マリンたちは驚いた顔で自分のステータスを確認している。
なるほど。
今までの戦い方にも納得がいった。
剣士が敵を正面から抑え、盗賊が側面から攻撃する。
神官は後方から回復。
そして俺はバフとデバフを使う。
これは本来なら、ボス戦でも使えるような基本的なパーティー戦術だ。
だが、今までのマリンたちは雑魚敵相手にも同じ戦い方をしていた。
そして経験値は、敵に直接攻撃して倒した剣士と盗賊にしか入っていなかったらしい。
これでは支援職のレベルが上がらない。
支援職が弱いから、さらに前衛だけに負担が集中する。
その結果、連携も磨かれない。
今までパーティーを組んでいたのに、実際にはそれぞれが自分のレベルを上げるために戦っていただけなのだ。
「じゃあ、これからは全員に経験値が入るんですか?」
「ああ。均等に設定してある」
「……それなら、神官もレベルを上げられる」
「そういうことだ」
俺は周囲を見回す。
せっかくパーティーを組んでいるのだから、全員が成長したほうがいい。
「それと、もう一つ気になっていることがある」
「なんでしょう?」
「装備だ」
マリンたちの装備は、あまりにも質が悪い。
最初は金がないからだと思っていた。
だが、話を聞いていると、それだけではないらしい。
「敵を倒したら、装備を落とすんじゃないのか?」
「……装備を?」
「ああ」
「そんなこと、ありませんよ」
マリンは不思議そうに首を傾げた。
「魔物を倒しても、魔石や素材が出るだけです」
「なるほど……」
俺はそこでようやく理解した。
ゲームなら、敵を倒せば武器や防具を落とすことがある。
だが、この世界ではそんなゲーム的な仕様は適用されていない。
敵を倒したからといって、都合よく装備品が出てくるわけではない。
現実なのだから当然だ。
それなら装備の質が悪いのも納得できる。
武器や防具は買うか、作るしかない。
「じゃあ、鉱石から武器を作ったりは?」
「鉱石を掘るんですか?」
「そうだ」
「鉱山ならありますけど……鉱石を掘るのは大変ですよ。それに、良い鉱石なんて簡単には見つかりません」
どうやら、この世界では鉱石を採掘して装備を作るという発想自体が、かなり難しいらしい。
鉱石を使って装備を強化する人もほとんどいない。
理由は単純だった。
鉱石が見つからない。
そして、掘るのが大変だからだ。
俺には、その常識が当てはまらない。
疲れずに掘り続けられる。
しかも、ゲームで培った経験から、どこを掘れば鉱石があるのかもある程度分かる。
この世界の人間からすれば、反則に近い能力だろう。
「……まあ、そのうち考えるか」
今は目の前のことに集中する。
俺たちは再び魔物の群れを見つけた。
「いつも通りでいい。ただし、今日は全員で戦う」
「はい!」
剣士が前に出る。
魔物の攻撃を受け止め、正面から動きを止める。
盗賊がその隙に側面へ回り込む。
神官は二人の状態を確認しながら、必要なタイミングで回復を飛ばす。
俺は全員にバフをかけ、魔物にはデバフをかける。
そして、誰か一人が無理をしないように全体を見ながら指示を出す。
やっていることは、ボス戦と変わらない。
ただの雑魚敵相手に、明らかに過剰な連携だった。
だが、その分だけ動きは安定していた。
今までなら、敵を倒した剣士や盗賊だけが経験値を得ていた。
今回は違う。
全員のステータスに、同じように経験値が加算されていく。
「……本当に入ってる」
神官が驚いたように呟いた。
「これなら、俺ももっと前に出られるようになる」
剣士も嬉しそうだ。
盗賊も自分のステータスを確認している。
俺はその様子を眺めながら思った。
これなら、レベル上げだけじゃない。
全員が同じように成長するなら、パーティーとしての完成度も上がっていく。
今までこの世界で連携が発達しなかった理由も、なんとなく分かってきた。
ゲームのような便利な仕様だけを利用して、戦術は現実の常識に合わせている。
その結果、ゲームなら自然に成立するはずのパーティープレイが、うまく機能していなかったのだ。
「しばらく、このやり方でやってみよう」
俺たちは次の魔物を探して歩き始めた。
雑魚敵相手に、まるでボス戦のような戦術を繰り返しながら。




