二つ目の町
最初の町でやることはなくなった。
杖も作った。
強化も十分にした。
「次の町に行くか」
アレンは町を出て、南へ続く道を歩き始めた。
途中には、かつてレベル上げをしていた場所がある。
「ここ、懐かしいな」
昔はここでパーティーを組み、何時間も敵を狩っていた。
今では景色を眺めながら歩くだけだ。
しばらく進むと、見覚えのある十字路に到着した。
「ここも変わってないな」
南へ向かえば次の町。
東へ行けば、出現するモンスターのレベルは70。
西へ行けば、レベル120。
「初見殺しもいいところだよな」
知らずに東や西へ進めば、突然強力なモンスターと遭遇することになる。
もっとも、レベル305のアレンには関係ない。
どちらへ進んでも、モンスターに苦戦することはないだろう。
「でも、せっかくだから順番に行くか」
帰還を目指しているわけではない。
急いで攻略する必要もない。
この世界を楽しむと決めたのだから、ゲームと同じように町を順番に巡ってみることにした。
アレンは南へ向かった。
道中のモンスターを倒しても、当然レベルは上がらない。
レベル305にもなると、この辺りの敵から得られる経験値など無いに等しい。
そして、しばらく歩いて次の町へ到着した。
「ここまで来たら、普通ならレベル50くらいか」
このゲームでは、最初の町から次の町へ進む頃には、多くのプレイヤーがレベル50前後になっている。
そして、レベル50から転職が可能になる。
アレンの職業は大賢者。
すでに転職を終えている。
最初は魔道士。
そこから賢者になり、さらに大賢者へと転職した。
「ファーストキャラのときは大変だったな」
転職には、レベル以外にも条件がある。
職業ごとに指定されたボスを倒し、必要なドロップアイテムを手に入れなければならない。
しかも職業によって必要なアイテムが違う。
一度倒して終わりではない。
目的のアイテムが出るまで、何度もボスを倒す必要があった。
そのため、転職可能なレベルは50だったが、アレンがファーストキャラで実際に転職したときはレベル65くらいになっていた。
町では、今もボス討伐のパーティー募集が盛んに行われている。
「変わらないな」
プレイヤーがいない今でも、似たような光景は存在していた。
剣士、魔道士、モンク、神官。
それぞれが自分の転職に必要なドロップを求めて、仲間を探している。
そんな中、一人だけパーティーに入れず、落ち込んでいる少女がいた。
「……神官か」
アレンは少女を鑑定する。
名前はマリン。
職業は神官。
神官は回復や支援を得意とする反面、攻撃能力は低い。
マリンもレベル上げをしようとしているのか、メイスを振り回している。
しかし、あまり効率は良くない。
「神官が一人で戦うのはきついよな」
このゲームでは、経験値を均等に分配する設定にしておけば、敵を倒した本人以外にも経験値が入る。
だから剣士や魔道士、モンクのように一人で戦える職業が敵を倒し、神官は回復や支援をする。
そうすれば神官も効率よくレベルを上げられる。
ゲームなら、それを知っているプレイヤーを探せばいい。
だが、ここはゲームではない。
相手がゲームの仕様を理解しているわけでもない。
強い敵と戦える人間が、自分の経験値を分けてくれるとは限らない。
「まあ、ゲームと同じようにはいかないか」
アレンはマリンを見る。
どうやら本当に困っているようだった。
「……仕方ない」
アレンはマリンに近づいた。
「パーティー、入る?」
「えっ?」
マリンが驚いた顔をする。
「私でいいんですか?」
「神官だろ?」
「はい……」
「じゃあ問題ない」
アレンはあっさり答えた。
別に深い理由はない。
ただ、昔ゲームをしていたときと同じ感覚だった。
一人で困っているなら、パーティーに入れてやればいい。
「よろしくお願いします」
「うん」
こうして、アレンはこの世界で初めてパーティーを組んだ。
相手がゲームのNPCだということを、アレンはまだ知らない。
そしてマリンにとっては、レベル305の大賢者とパーティーを組んだことが、とんでもない出来事だということも知らなかった。




