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ゲームをやり込んだ俺、異世界で師匠になる  作者: まゆな


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4/10

ゲームと現実

鉱石を必要なだけ掘り終えると、アレンは鉱山を出て町へ戻った。


 せっかくなので、武器を作る前に町を見て回ることにする。


「懐かしいな」


 ゲームの中では何度も訪れた町だ。


 しかし、実際に歩いてみるとゲーム画面で見ていたときとは印象が違う。


 建物の大きさや道の広さ。


 店の位置。


 NPCの動き。


 今まで気にしたこともなかった部分まで目に入ってくる。


「武器屋でも見てみるか」


 店に入る。


 壁には剣や槍が並び、杖も何本か立てかけられていた。


 アレンは何気なく一本の剣を手に取る。


「なるほど」


 鑑定を使ってみる。


 ゲームでは、店で売っている武器には攻撃力の下限と上限が設定されていた。


 例えば攻撃力が十から二十の武器なら、同じ名前の商品でも実際の攻撃力は十から二十の間でランダムに決まる。


 だからゲーム時代は面倒だった。


 同じ武器を何本も購入し、数値を確認する。


 上限に近いものが出れば残して、それ以外は売る。


「これ、ゲームなら大変だったんだよな」


 しかし、今は違う。


 アレンは商品を手に取る。


 鑑定する。


 数値を確認する。


 そして、一番性能のいいものを買えばいい。


「ゲームより楽勝だな」


 何本も買って比較する必要すらない。


 鑑定を使えば、その場で性能が分かる。


 ゲームでは運任せだったことが、現実になった途端にただの選別作業になっている。


 店を出ると、アレンは町の様子を改めて眺めた。


「……人、少ないな」


 ゲーム時代は、この町もかなり賑わっていた。


 プレイヤーが大量に行き交い、広場ではパーティー募集の声が飛び交っていた。


 しかし今は違う。


 町の中を歩いている人間は少ない。


 それでも冒険者らしき人間はいる。


 装備を見る限り、町の外へ出てモンスターと戦っているようだ。


「NPCが冒険者をやってるのか」


 ゲームでは当たり前のように存在していたNPC冒険者。


 しかし、現実になってみると妙な光景だった。


 しかも、装備の質があまり良くない。


 アレンは何人かの冒険者を鑑定してみる。


「やっぱりな」


 レベルに対して装備が弱い。


 ゲーム時代なら、プレイヤーはもっと良い装備を身につけている。


 それには理由があった。


 プレイヤーは効率を求める。


 クエストをこなし、装備を更新し、適正レベルの狩場へ移動する。


 このゲームでは、レベル40程度になると次の町へ移動するのが一般的だった。


 最初の町で受けられるクエストを一通り終え、次のエリアへ進む。


 ところが、この町の冒険者たちはレベル40を超えても、そのまま残っているようだった。


「まあ、知らないんだろうな」


 アレンには理由が分かる。


 MMORPGでは、自分よりレベルの低い敵を倒しても、獲得できる経験値が大幅に減少する。


 だから、レベルが上がったのなら、より強い敵がいる場所へ移動した方が効率がいい。


 しかし、それを知らなければ、慣れた場所から離れる理由はない。


「それとも……」


 アレンは別の可能性を考える。


 プレイヤーとNPCでは、死んだときの扱いが違うのかもしれない。


 プレイヤーならデスペナルティーを受けるだけで済む。


 多少の経験値や所持金を失ったとしても、また復活できる。


 だが、この世界の住民にとっては違う。


 モンスターに殺されれば、本当に死ぬ。


「そりゃ慎重にもなるか」


 安全な狩場で、確実に倒せる敵だけを相手にする。


 効率が悪くても、生き残ることを優先する。


 そう考えれば、この町に留まり続ける冒険者たちの行動にも納得できる。


「ゲームと現実じゃ、そこが一番違うのかもな」


 アレンは町を歩きながら、そんなことを考えていた。


 その後、鉱山で集めた鉱石を使って杖を作る。


 必要な素材を揃え、杖を完成させる。


 そして強化を始めた。


 強化レベルが上がるにつれて必要な素材は増え、成功率も下がっていく。


 何度か失敗したものの、鉱石は十分に集めてある。


 時間をかけて強化を続ける。


「よし」


 強化段階は十。


 これ以上を目指すには、さらに大量の素材が必要になる。


 アレンは完成した杖を眺めた。


「これなら十分だな」


 ゲーム時代なら、もっと上を目指したかもしれない。


 しかし、今のアレンはレベル305。


 序盤の町で作れる杖を強化したところで、十分すぎるほど強い。


 それに何より、久しぶりに鉱山で素材を集め、装備を作り、強化するというゲームらしい遊び方ができた。


「満足した」


 アレンは杖を装備する。


 これで、この町でやりたかったことは一通り終わった。


 次はどこへ行こうか。


 ゲームなら、レベル40程度で次の町へ向かう。


 だが、今のアレンにはレベル制限など関係ない。


「次は……」


 アレンは町の外へ続く道を見る。


 まだ見ていない場所はいくらでもある。


 ゲームでは効率を求めていた。


 だが今は違う。


 この世界そのものを、自分のペースで楽しめばいい。


 アレンは新しく作った杖を手に、次の目的地を考え始めた。

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