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☆いきなり転生☆ さらに~   作者: たかさば


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美味しいクレープ食べてって!

伊藤正直は、ごく普通のクレープ屋である。

毎日キッチンカーの中でペラペラの生地を焼き、毎日新しいメニューのアイデアを出しては接客担当である奥さんから苦言を呈される、齢48のクレープ屋である。


今日も今日とて、お昼休憩に出店しているスーパーの中にあるスカキ家の冷やし中華セットを食べてひと息ついたあと、すぐ横にあるコンビニで通販で買ったレードルの代金を支払ったあとキッチンカーに戻ろうとしていた―――のだが。



キイィイ!!キ――――イイイイイイイ!!!


ドガ――――――――――――ん!!


ぐわしゃぁああ!!


ぶちゅ。




真っ白な空間。

伊藤正直の魂と…、女神が対面している。


「伊藤正直さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」

「はあ」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」


────────

伊藤正直(48)

レベル38


称号:転生者


保有スキル:美味しいクレープ食べてって!


HP:36

MP:50

────────




「というわけで…、いきなり草原に放り出されててもなあ」


べよん、べよん。


水色の、ぶよぶよした丸い塊が…クレープ屋の前に現れた!


「おお…スライムだ。昔ゲームで仲間になったなあ、実物はこんなにもシャビシャビしてるのか…」


のほほんと観察する、クレープ屋。


「さて…どうしたものかね。もらったスキル《美味しいクレープ食べてって!》って事は…焼けばいいのかな?車がないと何もできないけど」


うばほん!!


なんと、16年前からメンテナンスを欠かさず使い続けているキッチンカーがあらわれた!!

冷蔵庫や三段ボックスの中の材料もバッチリ補充されているぞ!

キッチンカーまわりには年季の入ったのれんと写真付きのメニューを貼ったイーゼルがいつものように並んでいる!


「よし、これならオープンできるな。今からウマイの焼いたげるよ、なにがいい?」


スライムは一番人気のチョコバナナ生クリームを注文した!


クレープ屋は新品のレードルでクレープ生地をすくい、温まっている鉄板の上に流したのち自作のトンボで薄く伸ばし始めた。

まん丸でペラペラになったとろとろの生地…スライムは手際の良さと瞬く間に焼けていく様子から目が離せない!!


クレープの表面が乾ききる前に小ぶりのバナナをひと房もぎ手早くカットしたクレープ屋は、生地をひっくり返した後うしろを振り向き、ホイップ済みの生クリームを冷蔵庫から取り出した。

焼き上がった生地をスクレーパーに引っ掛けてひらひらさせながら粗熱を飛ばし、清潔な調理台の上に置いてクリームを絞り、バナナとチョコをトッピングしたのちクルクルと丸め…、オリジナルペーパーでくるっと巻いてスライムに手渡すクレープ屋。


「お待たせねー!」


出来立てのクレープを受け取り、かじってみたスライムは…あまりのウマさに感激している!!

どうやら弟子入りを希望しているみたいだぞ!!


「じゃあ見習いって事で!えっとね、じゃあこっちから入ってくれる?」


キッチンカーの中に招き入れ、設備や材料の説明をし、焼き方をレクチャーして、とりあえず接客から始めてみようという話にまとまって、三匹ほどお客さんの対応をしていた、その時。


「はい、お土産用のモンブランとずんだとチーズケーキ…ぎゃあああああああ!!!」


注文品を五本入れたレジ袋を手渡そうとしたクレープ屋は、ずっしりとした重みでバランスを崩してうっかりスライムの体表の猛毒に触れてしまい絶命した。


一度見た光景を思い出しながらスライムは奮闘したのだが、結局ペラペラの生地を焼くことはできなかった。


八回ほどチャレンジしてすっぱり諦めたスライムは、それなりに美味い素材をキッチンカーごとまるっと飲み込み満腹になってほどほど満足して草原をあとにした。




「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」


クレープ屋は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。

コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。


クレープ屋はコンビニで通販で買ったレードルの代金を支払ったあとキッチンカーに戻った。


キッチンカーの近くの駐車場出入口付近で、車の暴走事故が発生していた。


「わあ!!大変だ!!警備員さーん!!」


クレープ屋は、月替わりで県内にあるスーパーを巡り敷地内にキッチンカーを置かせてもらうという経営が順調だったものの、美味しいクレープ屋が集まるというイベントに招待してもらったことがきっかけとなって土日のみ稼働するようになり、緻密な計算で全国を旅しながら店をオープンしつつ人気を獲得し風来の神クレープ店という二つ名を得たのですが、高速道路を走行中にキッチンカーに不具合が発生し廃車することになってしまってからはなんとなく勢いがなくなってしまい、知人の製菓店にクレープ生地を卸す仕事中心に過ごすことが多くなり、たまに地域の催しで美味しいクレープを焼くおじさんとして慕われたのち83歳でこの世を去ったとのことです。




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