45 幕引きと新しい壁
「あら?もうおぼえちゃったの?」
「はい、次は何を教えてもらえるか楽しみです」
「少しは困らせてちょうだいな、そんなに覚えがいいと『かあさん』教える事がなくなってしまうわ」
物心つくころから他人の家を転々とした生き方でさえ日常になる、早くて数時の間だけ遅くて数年、一箇所に留まる。留まっている間は他人の家に住む住人のご意向にそって自分を作り変えていく。
息をするような容易さだ、何をされようが「泣く」「笑う」の演出は当然として不幸を演出して相手の支配欲を満たし、または望まれればペットのように相手を従い慰める。
生きるためにやってきた、そろそろ自分も成人を向かえ一人で生きる事も可能だけどそんな生活をしていた僕に学歴は無い。
こっそりと引き取り先の家から、本を見つからないように漁り独学で学びもしたがお勉強が出来る証明が必要だ。
学校へ行けば貰えるものがぼくには無い、そのまま社会に放り出されても働き先の想像はつく。
だから加藤家の使用人に、目の前の男に引き取られた時に僕は単純についていると思った。ただそれだけだ、それ以上の感想はない。
ここはどうやら僕を暫く父親役の男について周り一緒の職場で働かせたい様子、自己の貯金を持ってない僕には願っても無いチャンス。もし給料を留置所に請求されて奪われようが、仕事にいる男どもに「いい思い」をさせてやればそれなりの貯金は集るだろう。
これまでと同じく。そしてこれからも同じ。
でもだ、目の前にいる男は自分にどうして頭を深々と下げている?他人は僕をペットとして可愛がるか、やっかいな異物として見ているかだけだったのに。
分からない、理解ができない。僕はどうしたらいい?
顔に出ていたのだろう、石戸は一度顔を上げて柔らかく笑った。
「私はお前を他所から貰った子供とは思っていない、お前が私達の所にきてくれてから絹子を……「母さん」と初めて呼べるようになった、一度でも母さんと呼べるようにしてくれてありがとう」
「訳がわからない」
秋里はひどく困惑した顔で石戸を見つめる。石戸はぽつりぽつりと話出した。
「母さんの子宮は人よりも小さく未熟だったんだ、だから子供は望めなかった。そのことを気にしていた絹子を母さんと呼ぶのは私が後ろめたくてね……駄目だな、男は気が小さくて弱い」
母さんを見ているとつくづくそう思う、と呟く石戸に秋里は混乱するばかり。
絹子は石戸の妻だ、体が丈夫でなく秋里が引き取られる前から重い病に冒されていたらしい。病が進行して病院へ入院してから何度か「子供の慰め役」として足を運んだが、一度も弱い所を見せなかった。
病は末期のガン、モルヒネを投与された始め頃は薬で意識はぼんやりしていたのに、ちゃんと僕を見ていた人。何故かその姿は鮮明に思い出せる。
常に笑い逆に自分を気遣った、その頃は「健気な母親」を演じて満足していると思っていた。
もしかしたら――――それが彼女の本心だったら、なんて一度も考えた事なくて。考えられなくて。
グルグルと巡る思考の中で石戸の声が入り込んでくる。
「お前は優秀だ、文句一つなく笑顔で私達に接してくれた、私はそれがお前の全てだったと思い込んだよ」
石戸は胸ポケットから小さなメモ帳を取り出す。
「でも母さんは全部お見通しだったんだな、まったく自分が情けない」
そっと石戸は秋里へメモ帳を差し出す、秋里は少しの間どうしていいのか分からずに戸惑い、手を伸ばしメモ帳を受け取った。
文房具店なら何処にでも売っているメモ帳を秋里は開いてみた、中は文字がビッシリと書きつづられている。
内容は料理のレシピ、教えてもらった料理に知らない料理の作り方。細かく丁寧に解説もはいっていた。
しかし綺麗な字なのに段々と荒くなり無理に力を入れたように曲がり、まるで文字を書いているとヒステリーを起こしている様が思い浮かべられる文字の数々に秋里は眉を顰めた。
「少し読めない字もあるだろうが勘弁してくれ、母さんの思いがこもったメモ帳だ」
「これは?」
几帳面だったあの人らしくない、薬や病気の所為にしても文字の落差が激しいのが気になる。
「かあさんは動作性ジストニアの書痙だった、主に筆記具を持つと出てしまう」
ジストニアは大まかに説明すると自分が出した脳の命令から反して勝手な行動を体がとる症状、筆記に関してのジストニアは「書痙」と呼ぶ。
石戸の妻である絹子は精神的な書痙ではなくて、生まれ持った大脳基底各核の異常で一度発病してしまうと完治は難しい。一生向かい合っていく病気の一つ。
周囲からの理解は難しく、奇妙な視線や誤解を若い頃から強いられ苦労していたと秋里へ伝えた。
「何度も私が代筆する、もしくはボイスレコーダーではどうだ?と提案したんだがね」
苦笑いをして「母さんは頑固だった」と言った。
「『私はつらい出産の経験はないもの、だから執筆する苦しさがきっと出産の代わりなのよ』」
石戸の言葉はどうしてか、秋里には絹子の言葉そのままに聞こえた。
メモ帳は全ページほぼ全てレシピと解説が書き綴られている、何時間だろうか何日だろうか彼女が懸命に一文字一文字には思いが残されている。
再びメモ帳に視線を動かすと、文章がぼやけて見えにくい。原因は認めたくない……自分の瞳が涙で濡れているからだ。
「……やっぱりアンタたちを僕は親とは思えない」
この瞬間に全ての柵から抜け出して単純に今までの自分を捨てるには重過ぎる。
「ああ、わかっている」
石戸は優しく秋里の肩に手を置く。
「私は加藤家の使用人をやめてどこか静かな場所を見つけ、二人で暮らそう」
秋里は大きく目を開き、顔をあげて石戸を見た。
仕事だけが生きがいのような男。名家で教育を受けたプロの使用人たちを束ねる執事になるのは簡単ではない、それに任命された石戸にとって大変名誉で誇りにしていた。
不正を嫌い自身に厳しい男が、何処で生まれたのかも知れない養子の為に長年の誇りと信念すら捨てようとしている。
「馬鹿だ」
秋里は罵った、捨てるには大きすぎるだろう。
「そうだ馬鹿だった、だからやっと此れからは正しい事ができる、お前と二人で小さな喫茶店を作ってもいい……母さんがレシピを残してくれているから大丈夫だろう」
30年間、紅茶とコーヒーは主のために毎日作り続けてきたから、それだけは自信があるぞ。
と、笑う石戸に震える声で秋里は口を開く。これだけはこの瞬間に伝えなければならない気がした。
「僕は絶対にアンタを父親なんかとは思えない……でも、できれば、アンタたちの子供に生まれた、かった……」
しゃくり上げて泣きはじめた秋里の頭を優しく撫でる、ふと石戸は頭をなでるような親らしい行動が始めてなのに苦笑いを溢し。
「何年たってもいい、私の一生かけて父親になってみせる」
力強い声にただ、ただ秋里は言葉を紡げずに泣いた。
***
楓は比較的少なめな私物を旅行用のスーツケースに忘れ物が無いように確かめてケースをしまう、隣ではファーロウが静かに楓の作業を見つめている。
「さて、これでお終い」
楓がスーツケースを持ってファーロウの移動用にしている猫籠を持つ。
「行こうか」
『はい』
ファーロウは素直に猫籠に入り、私は籠のドアをそっと閉めてスーツケースの持ってない手で持ち上げた。
今日、別荘を出て各自にある自宅にかえるのだ。「此処」では「何も」無かった、予定通りに楽しいバカンスを済ませて帰路に着く。
それでもちょっと楓はやるせない、しかし仕方が無い。秋里のことは監視つきで石戸さんと一緒に何処かへ行くらしい。
先のことは分からない、また秋里が犯罪行為に走る危惧はある。でも何だかよく分からないけどね……私の勘は大丈夫そうな気がしている。
いや、いつも正確で的確な勘のほうじゃなくてさ。女の勘?みたいな?
まっ秋里については全部石戸さんと凪史に投げっぱなしにしとくわ、私が関わって何か出来るわけでもなし。
私が秋里について今後できるのは、許し忘れるだけ。千奈美さんや紗枝ちゃんには少し申し訳なさを感じてしまう、のは……今は見ないフリをしよう。
それが皆で出した決断でもあるから。
楽しかった半分、「原罪の霧」で楽しめなかった半分あった別荘の玄関を私がくぐると一番遅かったらしく、執行部のメンバー全員が玄関で待っていてくれた。
「行きましょう」
ハンスが私たちに声をかけると皆頷き、来たときと同じくリムジンに乗り込む。
ここで少しだけ、今から数ヵ月後の未来の話をしよう、千奈美さんは宣言どおり私をモデルにした小説を出した。もう主人公が高校生の男子学生なのに偉い美形、そして聡明なキャラでモデルな私は照れちゃった、この物語は臨場感が抜群で特に被害者の女性の心境をこれでもかと表現しているとネットで評価が高く話題になった。
アドレスを千奈美さんと紗枝ちゃん交換しているのでその後も交流はちゃんとある、千奈美さんの小説も店に並べられる前に楓の元へ届き感想を素直にメールで伝えた。
紗枝ちゃんはあれから元気を取り戻し、店のお手伝いに奮闘している。周囲の人も純粋に無事だったのを喜び事件も「済んだ」出来事となっているようだ。
メールについていた画像に新作の小料理を見せてもらい、半分本気で食べに行こうかと思った。ファーロウに止められたけど。
私達はあの事件を通して繋がりがある、場所はお互い遠くても決して負担にならない頻度に交換日記感覚でその日のことを気軽に報告している、千奈美さんも執筆に詰まったり学生の視点を知りたかったりの内容のメールをくれる。
それが私の彼女らへの多少あった、いたたまれない感覚は薄れていった。
これが私に起きる数ヶ月後の話、あの事件は大切なものを失いかけたけれど大事な絆が持てたのでよかったと思っている。
その前に凪史の別荘から出てきた楓と執行部のメンバーはリムジンに乗って帰路は様々別行動になった。
個人個人の家は別にあるから、私は新幹線でヒバリとハンスの二人と一緒に私の街まで乗って実家へ行く。ヒバリとハンスは私より先に下りて学園に戻る間の数日は離れ離れになるね。
そして意外にも江湖ちゃん……もとい本当の名前で香子ちゃんは、実家に戻るらしい。私の家にくる?って誘ってみたんだけれど一度正面から父親と話し合いたいと。
それって「ゆるさーん!この家から二度と出さんぞ!!」につながる監禁フラグじゃないの?なんて脳裏には横切った、しかし江湖ちゃんは力強く必ず学園に帰ると私に言ったので、彼女を信じる。
ついでで悪いが大田は飛行機を使った方が早いらしいので、早々に手を振って別れた。凪史は別荘の後処理に残るんだって。
そういう私は新幹線を目的の駅で降りれば、懐かしい風景と聞き覚えのある街の名前。
故郷についたのだ。
そのままの雰囲気に笑みがこぼれた。
たった数ヶ月この土地を離れただけなのに、何年も帰ってない気がする。それもこれも学園で沢山の出来事があったおかげ。
家に帰っているぐらいは大人しく平穏でいてほしいものだ。
肩を動かしながら駅をでる、一晩中走っていたおかげで所々痛みを感じた。でもこの程度で済んだのはマシなんで有難い、と思おう。
ファーロウのおかげでプチリッチな私はバスを使わずにタクシー乗り場へ向かう、数年ほど両親と離れていたら駅まで出迎えって感動的なワンシーンもあっただろうが共働きな両親に数か月では望めないのよん。
それにくどいようだけど、みんなが使う公共の乗り物だったらやっぱり目立っちゃうのか二度見とかされるの。最悪じ~っと見てくる人もいるから結構疲れる、以前よりだいぶスルースキルが上がったから苦痛ではないけれど面倒。
タクシー乗り場に行き、並んでいる先頭のタクシーに乗って家に向かう。
私の家はそれほど駅と離れてはいない、信号にいっぱい捕まっても車で三十分もあるとつくような場所にある。
家に近づいてくるにつれて景色はなじみ深い道へ続く、小学のころに毎日歩いた通学路の歩道、よく利用していたおばちゃんが一人で切り盛りしている本屋さんに中学生なって初めて一人で入った喫茶店。
懐かしい思い出がよみがえる、タクシーの車内から見える風景はどれも記憶にあるのと変わりない。
「あっ……」
思わず楓は声を溢す、自分が着ていた制服で高校の女子生徒が二人、雑談しながら歩いていた。
知っている子ではない、面識さえない。私とこの子たちの共通点は、ただ私がかつて通っていた学校の……子ってだけ。
互いに顔も知らず、顔見知りの誰かの妹ですらない。
だけれども、私もあの制服をきて毎日面倒に思いながら、学校へ登校をして何だかんだで笑いながら過ごしていた三年間があった。
私にはあったのだ、女でいたころの私が。
私はそこで気が付いた、心の底がヒュッと冷えたみたいにゾッとしていく。もう私だった「私」を証明してくれる存在がこの世にもう無い事を。
その時楓の心を悟ったようにタクシーは短いトンネルに入り込む。車のガラスに反射して見える男の私。
そして本心から私は自分の顔を見て、思ったのは。
「あなたは誰?」
という知らない顔を見ている“私”だった。
「ただいま」
楓の乗せたタクシーは無事に愛しの自宅までつき、家の玄関のドアの鍵を開けようとしたら開いていたのでドアノブを持って自宅へ入る。
「おかえり~」
数か月ぶりにきく電話越しではない母の声に楓はファーロウが入っている猫の籠をもったままリビングへ行く。
リビングにつくと、忙しそうに私の好きな食べものを手当たり次第作っているお母さんと一緒に、弟の啓一が慣れない手つきで手伝っている。
春雨入りのお母さん特製、春巻きのようだ。お母さんがテキパキ具を入れた皮を巻いていくのを見て分かった。
「よっ兄貴お帰り」
啓一が私に言う、それに笑って返事を私はした。しばらく会ってなかったからもう少しだけ会話を続けようと口を開らきかけたけれど、啓一がくしゃみをしたので動物アレルギーだったのを思い出す。
「ファーロウを部屋に連れて行くね、ついでにちょっと自分の部屋を整えてくる」
慌ててファーロウを連れて自室のある二階へ、啓一とファーロウを隔離しなければ。弟のアレルギーは動物の毛に反応してクシャミと鼻水が止まらなくなってしまう。
数か月ぶりの我が部屋のドアを開けて入った。今暮らしている鳳凰学園へ転校する前に部屋の整頓をしたから部屋はガランとしてほとんど物がなかった。
この部屋を出るときに全ての女物を捨てて行ったけ、新しい生活に向けて覚悟にも似た気持ちだった。新しい人生に生半可な気持ちでこれからの私を生きていくのが怖かった。
前触れもなく私は女から男へ性転換した、それについてはもうファーロウに何も思わない。だって別の角度から考えてみると地球では恐らく私以外では「原罪の霧」を封玉できないでしょう。
成り行きとはいえ穢れし者になった馬来先輩や秋里を止められた、それはつまり男に性転換したからこそ馬来先輩に白蓮を奪われた江湖ちゃんと秋里に誘拐された千奈美さん、紗枝ちゃんを助けられたんだ。
けれど……。
楓は見慣れたはずの部屋を見渡す、壁には白と黄色の可愛い机と椅子、窓にはシックな花のイラストのカーテン、端っこには雑貨で集めた女の子が好む小物をたくさん並べた棚が空っぽ。あるのは組み立て式のパイプ式ベッドがカバーのない状態でマットが敷かれている。
思い出の数々の品がなくなって部屋の光景が寂しいと感じた。
今日の夜ベッドを使うためには布団をベッドに敷いておかないと安眠できない、部屋に上がる前にお母さんから布団一式は干してあるからと聞いた、大変ありがたい気持ちよく寝れるだろう。
床にファーロウの入った籠をおろし、籠の扉を開けて出してやり楓は空けていた間にたまった部屋の埃を簡単に払ってやろうと窓を開けて風をいれる。
クローゼットを開けて小型のコードレス掃除機を出そうと手をクローゼットの中に入れると、何かに当たって物がクローゼットの中に落ちた。屈んで落ちた物を拾ってみると、卒業証明書を入れてある卒業生が校長先生みたいな偉い先生から貰う黒い賞状筒だった。
「わあ……こんな所にあったんだ見つからないわけだわ」
懐かしく賞状筒を眺めるとたくさんのプリクラが貼ってあった、プリクラには卒業しても友達!とか、ある意味定番のメッセージを書いて貼ったけな。
部活の友達とクラスの友達がプリクラの狭い画面にギュウギュウになって映っている、そこに不自然な一人分の空間が女の私が映っているはずだった。時間と性別がリセットされたので女の私は修正され存在が消えていた。
ファーロウが楓の顔を下から覗くと懐かしそうよりも悲しそう表情をしていた、だからソッとファーロウは楓の部屋から出て行く。
猫のファーロウが居なくなった事すら気づいていない楓はプリクラを眺め続けていた、そして賞状筒の蓋を開けて卒業証明書を広げてみる。
三年間通った学校の校章も私が卒業した手書きを印刷した日付も卒業生とであると綴った文章もあるのに、私の名前だけが消えていた。
新井 楓はここにいるのに何処にもいない、心で呟くと途端にすごい孤独感に私は襲われてきた。
勿論ファーロウを始め男になってから出会った友達は大好きだ、でも何故だか足元をチリチリと蝋燭の炎に焼かれて危うくなっていく感覚が、タクシーに乗った時からずっと続いている。
性転換してゴタゴタしていて学園に転校するのも躊躇の暇もなく、新しい環境への緊張感もあって実は余裕がなかったのだろう。しかし今は違う、タクシーに乗っている間に見た女子高校生たちが思い出させた。
私の人生の、私の人格の、それらのすべてを作ってきた基礎の証が全てなくなった。関わりが断ち切られた、その何とも言葉にできない悲しさが這いように楓に近づいてくるのを感じる。
掃除を放棄して楓は階段を下りる、台所にはトイレに行って姿の見えない弟の代わりに母親がサラダをテーブルに並べている後ろ姿に楓は思わず。
「ねえ、お母さん私……」
そうするとお母さんは振り返り、ニッコリと笑う。変わらない笑みに楓はホッとした次の瞬間に。
「いやぁね、楓ちゃん『私』なんて女の子みたい」
それとも上品な学園は自分の事を「私」って呼ぶの?と逆に質問された。
「――……いや~そうなんだ、報告していなかったけど実は俺ちょっと特殊な部の副部長になっちゃってさ、所で雑巾どこ?」
驚いたお母さんは興味津々の顔で夕食に教えてねと、「私」という単語を気にも留めずに雑巾の在処を楓に教えた。そしてまた背中を見せて夕食の用意を続ける。
私はお母さんの背中にむかって無意識に手を伸ばしていた、自分の手に気付き。私はゆっくりと手を握って閉じた。
年単位で放置ごめんなさい、ぼちぼち再開させてもらいます。