虚空より呼び出すものその名は
六時間ぶり、二度目のおはようございます。
この麗らかな日差しに包まれてのお昼寝に終止符を打ったのは腹中よりあふるる福音でございました。要はお腹が空いて起きました。
人というのは不思議なもので、寝ていてもお腹が空くんですね。
単純に私の食い意地が張ってるだけという説もありますが、俗説に過ぎません。人類皆そうです。そうなるはずです。
お腹が空いてしょうがないのでお昼はすぐ出来るものにします。
はい、こちらが焼く前のピザです。ではフライパンに入れて、窯の火と同じところに入れて、焼きまーす。
急出てきたけどピザって何?って思いました?
はい。こちらの焼く前のピザ、テストプレイ中に作った中間食材ですね。
本来はまず水と小麦粉から捏ねた小麦粉を作って、それとチーズ、ベーコン、サラミなどを材料にして焼く前のピザができ、それを焼くことでピザの完成です。
今回使用するのは焼く前の段階のピザですね。
ところでこのピザ、ゲームでは三段階を経てようやく作れる食べ物なのに、別に意味はないんですよ。
ダブルクリックするとキャラクターが食事をするサウンドエフェクトと共に消滅するだけ。
一応空腹というステータスが満たされますが、別に空腹でもプレイに問題はありません。餓死とかそういうことには絶対になりません。
なのにわざわざピザを作って食べちゃう。面白いですねー。すごく無駄ですねー。
でもそれがいいんです。
なんならピザを作る途中に消費されるチーズやベーコンをそれぞれ個別に食べた方が空腹が満たされますからね。なんというパラドクスでしょう。
そんな完全に無駄スキルのクッキングが私は大好きです。
と言ってる間にピザ焼けました。熱々の内に食べましょう。
「ピザはマグマのようにグツグツとしたチーズが冷めない内に口に放り込め」という格言もあります。ありましたっけ。
お皿に乗せて、ナイフを中心から外に入れ、くるくると巻いてフォークで刺してお上品に食べます。
この食べ方、憧れてたんですよ。アメリカンなピザでは出来ない食べ方ですからね。
背筋をピンと伸ばして気取った顔をしながら口に入れる。もぐもぐもぐ。
なるほど。
トマトが入ってないのが多少物足りないけど、おいしいおいしい。
台チーズ具材チーズといった層に分かれてチーズがソースの無さを補って有り余り、満足感が十分に満たせる。
子供の頃に見た映画の主人公がチーズピザ大好物だったな。
当時は「チーズだけなんて」なんて思ってたけど、今はなんとなくわかる気がする。それでも私はお肉分を入れるけど。
はぁ。ため息が出る。
フライパンサイズで小さめだったとはいえ、もう食べ終わってしまう。なんという喪失感。最後の一口はじっくり味わおう。
十分に味わってから飲み下す。ご馳走さまでし、とみせかけてかーらーのー!もう一枚焼いてましたー!一枚目を取り出してから間髪いれずに焼き始めてましたー!イエーイ!
それではラウンド、ツー!ファイ!
午前中は十分に休養が取ったので、午後はいつもの訓練をする。
弓にはかなり慣れてきた。ただ、二十本のリズムにちょっと慣れ過ぎてるかもしれない。矢筒は大きくする予定なのであまり良くない。
近接訓練はとりあえず素振りをした後に、分身からの攻撃を避ける練習をしてみる。当たっても痛くは無いが怖い。顔に来るとつい目をつむってしまう。
ポールアームも試してみる。パイク、ハルバードなどを試してみたが、バルディッシュがしっくりくる。
私の背丈より少し長い鉄の棒の先に斧のような刃が付いている武器だ。パイクほど長くなく、ハルバードより先端が軽いので取り回しがいい。
構えたり肩に担いだりとポーズを取ってみる。どうだい、一丁前の武芸者に見えるかな?
練習場の外で見てるアルパカちゃんに目をやると、反芻でもしてるのか、口をもぐもぐしながらあまり興味なさげな目で見ている。きびしい。
ちなみに練習場は危ないので基本的に入らないようにお願いしている。言えばちゃんと守ってくれる。めっちゃ頭良い。すごい。可愛いし。
とりあえず今日からはバルディッシュの素振りも日課に加えよう。
おやつはクッキー。今日はナッツ入り。
アルパカちゃんにはリンゴを割ってあげる。
優雅なアフタヌーンミルクである。ティーがないので牛乳さ。
夕食までまだ時間がある。
それまで魔法をいくつか練習しようと思う。
魔法。
魔法というネーミングには常々疑問に思うことがある。
魔ってなに?なんで魔って字が入ってる謎の現象を何の疑問も持たずに平気で使ってるの?と。
もちろんゲームによっては魔法とは言わないものもあるが、思いっきり魔法という名前で出てくるものが大半だ。
「魔王を倒すぞ!!」などと言いながら脳みそ筋肉キャラ以外は普通に魔法とやらを使って敵を倒したり回復したり時には鍵を開けたり。
うーん。それって魔の力なんだよね?魔の力で魔族とか魔王とか倒しちゃうの?どっちが魔族?魔族って何?等々疑問が湧いてくる。
その点に関してマキシマスは一応の理屈はある。
この世界の魔法は意外と歴史が浅く、例のシリーズ一作目のラスボス、魔術師が開発、確立した法術である。
法術にはいくつか種類があり、その中の一系統で魔術師の作り出したものの系譜が魔法と呼ばれるわけだ。
今ある全ての魔法のスクロールを写し取った魔術書と、一通りの触媒を入れた巾着を腰に下げる。
触媒は食材として馴染みがある生姜、ガーリックの二つ以外は硫黄、クモの巣、マンドレイクにマンドラゴラ、血の苔に血の石がある。
マンドレイクとマンドラゴラは同じ植物だが、マキシマスでは地表に出る茎や葉、花に実がマンドレイク、根をマンドラゴラと呼ぶようだ。
マンドレイクは主に毒性の魔法やポーションに使われる。マンドラゴラは回復魔法や傷薬の材料だ。同じ植物なのに全く逆の性質を持つなんて不思議な植物。
血の苔と血の石はよくわからない。苔は単なる赤い苔に見えるし、血の石はビー玉ぐらいの大きさで、血を固めたようなものに見える。こわ。
これらをそれぞれ種類別の試験管に詰めてコルクのフタをした。
他の系統でも触媒を使う物はあるが、魔法で使う物は以上である。
さて、準備は万端。あとは使ってみるだけだ。
とりあえず魔法が使えることはわかってる。何を使ってみるか。
攻撃魔法は大きく分けて火、氷、雷と爆発魔法がある。あとは定番の隕石を呼び出したり地震を起こしたり。
定番中の定番である風はない。どの攻撃魔法も風が関わってるといえば関わってるが、風単体となるとイメージし難かったのだろうか。
そして状態異常魔法に毒のポイズンや麻痺させるパラライズ、呪いをかけてステータスを下げるカースなどがある。
攻撃魔法以外だと治癒や状態異常回復、移動魔法に召喚魔法などなどなど。
何か適当なのはないかとパラパラ魔術書をめくる。
あった。今の私にもっともふさわしい魔法があるじゃないか。
「空と大地と海より来たれり森羅万象の源よ我は求め訴えたり、サモンフード!」
構えた手からまず魔法陣が浮き上がり、光を放つ。
光が収まると手の中にはマフィンが現れていた。やった!成功だ!
マフィン、知ってます?…あはは。違いますよお菓子のマフィンじゃないです。そんなわけないじゃないですかやだなぁ。私そんな食いしん坊に見えます?
イングリッシュマフィンですよ。わかりやすく言うと、そうですね。
ハンバーガー屋さんの朝メニューでソーセージと目玉焼きが挟んであるパンです。はい。パンです。みんな大好きパン。
食いしん坊でしたね。皆さんが思ってる通りの。
あ、詠唱とか別に意味はないです。なんかこう、ね。一度は言ってみたいでしょう?こういうの。
「サモンフード!」
ほら、出てきた。今度はリンゴが出てきた。
この魔法、ただ食べ物が出てくるだけなんです。楽しいですね。
一応味も見てみましょうか。
じゃあマフィンをひとくち。
もぐもぐ。うん。普通にパンだ。おいしい。
ただ本格的なイングリッシュマフィンなので、口の中パッサパサ!パッサパサ!どうしてくれんだマフィンちゃん!
ちなみにサモンフードは触媒にマンドラゴラを使います。マンドラゴラは確か、市場価格でひとつ5ゴールド。リンゴはひとつ1ゴールド。完全に赤字です。
まあ市場価格なんて今の私には関係ないので、いいんですけど。ご参考までに。
その後も色んな魔法を試してみた。
攻撃魔法は屋内で使うと危なっかしいので自分にかける治癒や補助を中心に。
ただ、クリエイトゴーレムだけは上手くいかなかった。
読んで字の通り、ゴーレムを作り出す魔法でアース、エア、ウォーター、ファイアのゴーレムが作り出せる。はずだった。
何か条件があるのだろうか。
ゲームの中でも最難度の魔法なので、使えなくて当然なのかも。
時計を見ると六時を過ぎていたので今日の訓練は終了とする。
さあご飯だご飯だ今日は何を食べようか。




