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アルパカちゃんは見た

朝の日課、屋上に出て畑や花壇に水をやる。

今日は晴れている。

人参はどんどん伸びている。花をつけて種が収穫出来ればいいけど。

ジャガイモはまだ芽も出ない。家で保存してる時は油断するとすぐ芽が出るのに。

土の中では芽が出てるのかもしれない。気長に待とう。


水やりをしていてふと爪が目に入る。細長くて綺麗な、竹爪というやつだ。

こちらに来た日から爪が伸びてない気がする。たしか一週間で1ミリ伸びるんだっけ?

切っても一日で元通りになる髪、伸びない爪、いくら食べても崩れない体形。

これはどういうことだろう。

髪を見た時はもしかして、同じ日を繰り返してるのかもと思った。SFでよくある話だ。

すごくふしぎを体験してきたんだから今更すこしふしぎが起こったって動じる私じゃない。

まあ同じ日説は簡単に否定できる。

昨日作った物があるし、人参は成長してるし、何より天気が違う。

うーん、と唸っていたらお腹がぐぅ~と鳴った。

考えてもしょうがない。そんなことより朝食だ!


事件が起こった。

今日はカボチャのポタージュでも作ろうかとカボチャを選んでいると、突然カボチャが大爆発した。

どうやらハロウィン用のアイテムが混ざっていたようだ。

ハロウィンになると毎年出てくるハロウィンモンスターを倒すと落とすカボチャで、普通の農作物のカボチャと全く同じ見た目なのだ。

ただし食べようとすると爆発する。

誰だあ!こんないたずらをする奴は!

はい。私です。普通に自分で入れて忘れてました。

おかげで貯蔵庫はカボチャの中に入っていた紙くずとキャンディで散らかり放題。

サプライズはやってる方は楽しいけどやられた方は楽しくないという話があるけど、こういうことか。

この場合は両方私だけど。

朝食の前に掃除をする羽目になったので余計お腹が空いた。


それでは気を取り直してカボチャのポタージュを作ります。

まずカボチャは半分に切って、中のワタと種をスプーンでこそいで取ります。ワタは生ごみ、種は炒ると食べられたはずなので取っておきます。

中が綺麗になったら、5センチ角ぐらいに切って、皮が柔らかくなるまで茹でます。

その間にアルパカちゃんのご飯とサラダ用のお野菜を切りましょうかね。

皮がお箸でも簡単に裂けるぐらい柔らかくなったら、水を捨ててヘラを使ってお鍋の中で潰します。

ペースト状になってきたら少しずつ牛乳を加え、弱火で暖めながらバターと塩を入れて味を整えて完成。

あとは丸パンのスライスをトーストしてる間に、ソーセージに包丁で網目に切れ目を入れて、フライパンで目玉焼きと一緒に蒸し焼きにする。


それでは手と手のしわとしわを合わせて、いただきます。

まずは今日の主役、カボチャのポタージュから。

ちゃんと火傷しないようにフーフーして……うんうん。おいしい。

本当は皮を少し剥いた方がいいんだろうけど、私は皮が好きなので全部入れた。これが良かった。

とろりとしたスープの中にある砕かれた皮が舌の上でつぶつぶ感を演出している。

これはパンにも合う。いいや、パンが合う。お下品にちぎったパンにつけて。

んー!最高!パンが好き!やっぱりパンが好きだ!きっと私はパンがなかったらここで生きてはいけなかった!

そこまでではないか。冷静になろう。まだ朝だし。

ソーセージにね。切れ目を入れるとね。

まず箸で持ちやすい。そして網目の部分がカリカリになって香ばしくっていいのだ。

もちろん切らずに焼いた方が肉汁と油が閉じ込められるといった利点があるけれど、いつも食べるものをいつも同じ食べ方をしたって芸がないじゃない。

こういう邪道の食べ方も好きなんです。カリカリの所に半熟の黄身を絡めたりしちゃったりなんかしちゃってね。

絶対人が見てる前では出来ない食べ方だけどこれがおいしいのだ。

ちなみにアルパカちゃんのご飯は、サラダとパンと冷ましたポタージュで今日も完食してくれました。

ポタージュを飲んだあと口の周りに付いちゃったのをベロベロしててすごく癒された。


洗い物と洗濯、そして掃除を済ませると、倉庫に行って出来るだけキメが細かくて薄く重い板を選んで作業場に入る。

今日はボタンを作ろうと思う。

とにかく衣類が紐を結んで固定するものばかりなので、ボタンに慣れた私には不便でしょうがない。

パンツの前を止めるのにジッパーの自作は無理だけど、せめてボタンフライにしてしまいたい。

そんなわけで今日の午前中はボタン作りに没頭する。

まず大体の大きさに糸のこぎりで切る。そしてやすりで丸く削り、彫刻刀のような道具で中心に穴を二つ開けて紙やすりで磨く。

ふーむ。テキトーに考えて作ってみたけど案外良いんじゃないかな?

五円玉ほどの大きさで五つ作って、サーコートの真ん中を切って付けてみる。

サーコートはノースリーブで上からスッポリとかぶると丈がヒザ辺りまである、ロングベストのような服だ。

鎧の上から着る物なので私にはかなりオーバーサイズだったのが、切って身を詰めて丁度いいサイズに出来た。

そして出来たばかりのボタンで前を止めるので元のサーコートよりかなり着易い。

今日は長袖シャツにふんわりとさせたロングスカートを履いて、作業用に作ったエプロンをつけている。

一旦エプロンを脱いでサーコートを着て、くるりと回ってみる。

スカートのふくらみと一緒にサーコートもふわりと横に広がる。筒の状態だとこうはならなかったはずだ。リメイク前よりきっと動きやすくなったと思う。

そうだ。この際スカートのウエストも詰めてボタンフライにしようと思いつく。今はウエストで余った分を中に押し込む巻きスカート状態なのだ。

急いで三つほど新たなボタンを作り、スカートを脱いで横に上からチョキンと切れ目を入れて、ウエストに合わせて長さを詰めてボタンで止めるようにしてみる。

「出来た!」

完成が嬉しくてつい声を出してしまった。

と同時に自分の姿を省みる。

下半身を下着姿で何をしてるんだ私は。別に今履いてるスカートじゃなくて新しいのでやれば良いのに。

どうも私は物作りに夢中になると周りが見えなくなるようだ。

いそいそと完成したばかりのスカートを履いてみる。

うん。着心地も履きやすさもバッチリだ。

ちょっとぐらい激しく動いても大丈夫だぞ。

ららら~と口ずさみながら適当なステップを踏んで踊る。巻きスカートはちょっと頼りなかったけど、これなら激しい運動をしても平気だ。

しばし踊っていると誰かの視線に気付く。

踊りを中断して開けっ放しにしておいた部屋の入り口に目をやると、アルパカちゃんがこっちを見ていた。

その目はとても残念なものを見る目をしていた。

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