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トコトコトコトコトコとメェ

トコトコトコトコトコトコトコトコ。

あー、吾輩は猫であるトコトコトコトコトコトコトコトコ。

えー、えーと、現在私は、坂を駆け下りてますトコトコトコトコトコトコトコトコ。

落下して着地する前に猫に変化できたのは良かったのですが、着地というか、まだ落ちてる途中というかトコトコトコトコトコトコトコトコ。

半分壁みたいな山肌を駆け下りてますトコトコトコトコトコトコトコトコ。

と、止まろうにも止まれないというかトコトコトコトコトコトコトコトコ。

とりあえず足を超高速で動かして何とか、ことなきを得てるというかトコトコトコトコトコトコト。

いやーギリギリ、ギリギリセーフですねトコトコトコトコトコトコトコトコ。

んー、逃避だこれアウトだよこれはアウト完全にトコトコトコトコトコトコトコトコ。

おおっとちょっと傾斜が浅くなってきましたよ期待出来そうこれは期待出来そうですトコトコ。

眼下に広がる森も随分近くなってきましたしこれはそろそろ平地ですかトコトコトコトコトコ。

あれっ坂が途中で途切れてるもしかしてまた崖がシュバッ!

本日二度目のアイキャンフライ。外はエキサイティングに溢れてます。

一旦スタジオにお返ししまーす。


猫の習性で、空中で上下逆さになっても体をひねって足を下にして落ちることが出来るというものがある。

宙に投げ出された私も見事そのスキルが発動し、上下がどちらか混乱することなくちゃんと足を下に向けることが出来た。

あとは森の海へ自動的に突入するだけだ。

動物変化で体重も軽くなってるので、上手く枝葉がクッションになってくれれば大怪我はしないで済むかも知れない。

なるべく体を大きく広げ、体のどこかが枝に引っかかりやすいようにする。目だけは傷付かないように出来るだけ薄目にする。完全に瞑るのは危険だ。

来るぞ…。

バサバサバサバサ。

葉と小枝が体中を叩きつける。

勢いは弱まったが落下を止めるほどではない。

地面が見えた。このまま着地出来ればもう安心だ。

ホッとしたと同時に左手が何かに引っ張られ、落下が止まった。

目をやると、太い枝に爪が一本突き刺さってる。

えっと、落ちなかったのはいいんだけど、この状態からどうしたらいいのかわからないよ。

どなたか猫になったことがある人、木に爪が刺さったらどうしたら良いか教えてくださいな。

指一本でぶら下がってるようなものなので、猫の体でもさすがに辛い。

右手を伸ばしてみる。届かない。

そうだ。反動を付けてくるりと回って枝の上に行けないだろうか。逆上がりの要領だ。

最初はゆっくりと足を前後に動かし、徐々にスピードを上げる。

よし、今だ!と思ったところで引っかかっていた指に激痛が走り、それと同時に落下した。

体制を整える余裕もなく、腰から地面に叩き付けられる。

あいたたたたた。

腰の打った辺りをさする。なぜ痛いところはさすってしまうんだろう。別にどうにもならないのに。

地面に左手を付くとまた激痛がする。

びっくりして左手を見る。なるほど。どうやら枝に引っかかっていた爪が剥がれたようだ。


指の治療をするために変身を解き、バックパックを下ろして倒木に腰掛ける。

そういえば木のゴーレム、ウッドツリーゴーレムもいたと思い出し、慌てて立ち上がって倒木を観察する。

…大丈夫そうだ。先ほど無警戒過ぎた結果ピンチに陥ったばかりなので過剰になってしまった。そもそもウッドツリーゴーレムは友好的な生き物のはずだ。

気を取り直して倒木に座り直し、左の手袋を取る。中指の爪が無く、そこから血が流れてポタポタと地面に落ちる。

ポーションを持ってきていて良かった。

バッグから包帯とポーションを取り出し、ポーションを傷口にかける。いきなり傷が消えるようなことは無いが、とりあえず血は止まったようだ。

残ったポーションの中身をダバダバと指にかけ、そのまま包帯を軽く巻く。痛みはもうしない。

手袋を付け直し、左手を二、三度グッパグッパと握ってみる。大丈夫そうだ。


落ち着いたところで水を少し飲み、辺りを見回してみる。

木々はどれも背が高く10メートルはある。あんなところから落ちたのか。大きな怪我がなくて良かった。

地面は土のようだが少しふわふわとしている。腐葉土だろうか。

人の手が入ってる様子は全くなく、原生林のようだ。

土の匂い、木の匂いがする。頬をくすぐる風が気持ちいい。

ようやく外に出たんだ。

十分に休憩を取って、上から見た海の方角に当たりをつけて歩き出す。

戻る道を確認するか迷ったが、少なくとも今はあのアースゴーレムの溢れる道に戻る気にはなれなかった。


10分ほど歩くと池に出た。

水面を覗き込む。水が透き通っている。木漏れ日が反射してキラキラと光って見えるのは小魚だろうか。

飲めはしないけど、顔を洗うぐらいは出来るだろうかと迷っていると、パキッと何かが小枝を踏む音がした。

パキッパキッパキッ。どんどん近付いてくる。

私は音を立てないように気を付けながらゆっくりと音の方向に向き直り、肩にかけた弓を左手に持ち直して右手で矢筒から矢を取り、静かに構える。

草むらの向こうにいてまだ姿は見えないが、確実に近付いて来ている。

ザワ、ザワ、ザワ、ザワザワ。何かが草を掻き分けている。

出てくるぞ。

ギュッと弦を引いて狙いを定める。

草むらの間からニョキッとふわふわの物が出てきた。

アルパカだ。

顔を出して初めてこっちに気付いたのか、つぶらな瞳でこちらを見つめている。

マキシマスオンラインのアルパカは無害な動物だ。むしろ騎乗したりバックパックを付けて荷物持ちに出来たりと馬と同じように使える動物だ。

見た目も可愛いので馬より需要があるといっていい。もちろん私も愛用者だ。

10秒ほど見つめ合うとアルパカはメェ~とひと鳴きし、池に近付くと水を飲み出した。アルパカってメェ~って鳴くんだ。羊みたい。

他にはいない、一頭だけで水を飲みに来たようだ。

警戒させないようにゆっくりとアルパカに近付き、恐る恐る触れてみる。

ふかふかだ。焼きたてのパンのようにふかふかだ。

触っても私を全く気にする様子が無い。

人馴れしてるのか、逆に人を見ないので警戒もしないのか。

弓と矢を仕舞い、バッグパックの中に手を突っ込んでパンをちぎってアルパカに差し出してみる。食べるだろうか。

アルパカは私の手のひらに乗ったパンに気付くと鼻を近づけてスンスンと匂いを嗅ぐ。可愛い。すごく可愛い。

気だるげな目をしながら、パンをむしゃりと食べる。メチャメチャ可愛い。もぐもぐしてやがる!

「お前、一緒に来ない?」パンをもうひとちぎり手に乗せて声をかける。

アルパカはスキル、テイミングでペットにすることが可能な生物だ。手懐けられるだろうか。

「メェ~」ひと鳴きしてパンを食べる。

「一緒に来る?」「メェ~」

う~ん、これは返事をしたのだろうか。

少し離れて、声をかけてみる。

「おいで」

メェ~とひと鳴きして近付いてくる。可愛い。

これはテイミング成功したんじゃないだろうか!可愛い!

ペットに出来たのなら、騎乗することも出来るはずだ。

「乗っても良い?」つぶらな瞳に問いかける。

「メェ~」潤んだ瞳で答える。何を言ってるかはよくわからないが可愛い。

アルパカの背は私の胸の辺りまであり、どうやって乗ろうかとまごまごしていると、アルパカがしゃがんでくれた。これは乗って良いってことだろう!

恐る恐る跨ると、待ってましたといわんばかりにアルパカがすくっと立ち上がる。

ほわああああああああああああああああ!

ほわあああああああああああああああああああああ!

内モモに当たる毛ががふっわふわ!おしりの下もふっわふわ!首に手を添えるとふっわふわ!ふわふわ天国だ!マーベラス!


失礼、取り乱しました。

ひとしきりふわふわを堪能したので出発することにする。

「よーし、あっちに行ってみようか」と声をかけて指を差すと「メェ」と短く鳴いて歩き出した。

これはいい。

家に帰ったら馬具も作ってやらねば。馬具?アルパカ具?んんん、なんか違うか。

こうして一人と一頭の旅は始まったのだ!

うほお!歩くとふわふわがふっわふっわにふっわふっわ!これは人をダメにするやつだよ!

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