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第1章(4)オリバー、初手を考える ①

名主の山本からもらった茶を、ばあさん、つまりオリバーの母はとても喜んで、今度茶飲み会に拠出すると茶葉をごっそり取り分けていった。

アメリアは不満なようだったが、オリバーとしては棚から降って来た牡丹餅に固執する性格ではなかった。

それに、次の日からは秋晴れが戻り、集落が再び米仕事に専念する手番が回されて来た。

刈り入れの時期は、老若男女問わず役割を負っていた。

掛けた稲束を外して田から運び出す、脱穀する、藁くずを取り、籾擦りをして玄米にする。

便利な道具は徐々に生み出され効率は上がっていたが、作業は、集落全体分を皆で協力して行うため、人海戦術がまだ相当に有効であって、この時期は誰もがせかせかと動いていた。


千歯扱きや唐箕とうみ踏臼ふみうすなどの道具類は、何軒かごとに共用されており、専用の置き場が建てられていた。

水が近いという地の利のある置き場には、水車を利用する籾摺り機を設置できて省力化に貢献していたが、浮いた労働力が他の支援に回るだけで、決して楽ができるわけではなかった。

農業者達のほとんどは、向こう1年の生活の糧と収入とを、この稲刈りの時期に一気に得る。

また米の出来、1年手塩にかけて来た結果を目の当たりにするまでは、楽をするという選択肢は頭になく、全作業の終息に目途が立ってから、どっと押し寄せる疲れとともにようやく欲しくなるものであった。

そのくらい、この時期の農業者達は気が張っていて多忙であった。


オリバーももちろんその1人であるが、多忙だからといって預けられたミッションを後回しにするわけにはいかない。

種蒔きや施肥などの作業には適した時期があり、それを逃せば作柄に影響したり、下手をすると作付自体が1年先送りになってしまう。

オリバーは、一日の作業を急ピッチで終わらせ、まだ明るいうちに、土目当てで集落内を歩いた。

まず、今年はじゃがいもとネギが作られている大きめの畑を見に行った。

大きめと言ってもせいぜい1ヘクタールほどで、藩校で習ったような、南西の諸藩の規模には遠く及ばなかった。

南西では、米作りに適さない平地で、それこそこの集落の田に相当する面積が全て畑というような思い切った農業が行われているということだった。

もっとも、それが苦肉の策であることも否めない。

この国では、農業者の租税は作物の現物かその売却益で支払うことになっており、野菜の方が農業者の手取りは増える。

にもかかわらず野菜・果樹・花卉かきなどの生産者が爆発的に増えないのは、この国の主食が米であることに始まり、栽培の手間が毎日かかり、米ほど長期保存ができず収穫後は基本売り切らなければならないことや、連作障害と言って芋なら芋だけ、にんじんならにんじんだけをずっと作り続けることができないという欠点が複合的に影響した。

どちらかというと、野菜等の大規模生産は、その土地で稲作用の用水が取れないことで選ばれる、農業者の究極の選択という意味合いが強かった。


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