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地下アイドル探偵、真夏の夜の鎮魂歌  作者: さば缶
第7章: 「新たな一歩」
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第5節:「未来の決意」

あらゆる曲の最後の余韻が消えたステージには、まだ暖かな拍手と涙の残響が漂っていた。

客席が明るくなり、観客が帰り支度を始めるなか、私はひとりステージに残る。

メンバーたちは楽屋へ戻ったけれど、どうしてもここを離れたくなかった。


「――莉音、私たちは前に進んでるよ。」


振り返ると、ステージ中央には大きなスタンドに飾られた水無瀬莉音の写真がライトを受けて微かに反射していた。

思い返すのは、事件で大切な仲間を失った苦しみ。

けれど今、私たちは再び歌うことを選んだ。胸の奥で痛む記憶も、涙も、そのまま抱えながらステージに立った。


「あなたの笑顔を忘れない。……これからも、ずっと一緒だよ。」


誰にも聞こえないような声で写真に語りかける。

すると、まるで莉音が微笑んでいるような錯覚を覚えて、目頭が熱くなった。

客席を見渡すと、まだ座席に残って静かに涙を流しているファンの姿が見える。

彼らも私たちと同じように、莉音との思い出を抱えているのだろう。


@idol_love832 泣きすぎて顔がぐちゃぐちゃ… でも、未来ちゃんたち本当にすごいよ。


@lf_rebirth #ラストフレーズ新章 ってタグで盛り上がってるし、 莉音ちゃんの夢がちゃんと繋がってるんだ…!


スタッフからスマホを見せてもらうと、SNSのタイムラインにはそんな投稿が並んでいた。

やっぱり、私たちはひとりじゃない。

事件の痛みを乗り越えるたび、ファンも共に歩んでくれる。

客席で鼻をすすりながら拍手を続ける人たちを見て、胸が熱くなる。


「私たちの“ラストフレーズ”は終わらない。これは新たな始まりの音。」


そう呟いた瞬間、心の奥で何かが解放された気がした。

事件でズタズタにされたグループが、ようやくもう一度光を掴もうとしている。

私はファンに向かって深くおじぎをし、軽く両手を振り、ありがとうございました、と口を動かす。

掛け声は聞こえないけれど、小さく頭を下げる人や、泣きながら手を振り返してくれる人がいる。


最後にもう一度、莉音の写真を見つめてからステージを降りる。

袖に隠れた瞬間、楽屋へ向かう通路をゆっくり歩く。

頭に浮かぶのは、今後のこと――次のライブで何を歌うのか、どんな演出をするのか、まだ全然決まっていない。

だけど、暗闇と光の間で揺れ動きながら、それでも前進するしかない。


「未来はまだこれから。私たちの歌は、ずっと響き続ける――。」


つぶやきながら階段を下りると、その先にはメンバーが待っていて、

私の姿を見るなり少し安心したように微笑んだ。

彼女たちの瞳には、まだ涙の痕が残っているけれど、みんな同じ方向を向いているのがわかる。

ここからが本当の勝負。思い切り苦しみ、でも思い切り楽しむためにステージに立ち続ける。

莉音が愛した夢を、もう一度、私たちの手で花開かせるために。

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