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第三十話 遺跡再調査

2/3誤字修正しました。それと言い回しを少し変えた部分がありますが、本文内容は変りません。

 王城でメイドをしているトアはいつも朝早く出仕する。時間帯は早朝から夕方で固定されている。


 当然休日はあり、連休がほとんど無い以外は労働環境は悪くなく、夜勤はベテランの年配のメイドが行うために時間外勤務はほとんど無い。


 出仕したトアは昨日の団欒での話をサラ姫にするべくタイミングを伺っているのだがなかなかチャンスが来ず、すでに昼過ぎになっていた。


(うーん、お茶を入れる時間までは無理かな……)


 そんなトアの耳に同僚のメイドであるユルユとルーリが話す噂話が入ってきた。二人は掃除中なので私語厳禁のはずだが、声が大きいため簡単に聞こえてくる。


「ねぇねぇ、聞いた? 『光の剣』の話。オーエン様がすごい怒ったらしいじゃない?」


「聞いた聞いた。なんでももう壊れちゃったんでしょ? なんか学者さんたちが調べていたら光が急に出なくなったらしくて、いくら調べても理由がわからないって……」


(……壊れた? 光が出ないって?)


 トアの耳がピクリと跳ね上がる。まさにタイムリーな話であり、そのまましばらく何食わぬ顔で聞き耳を立て続けている。


 レーザーブレイドの光刃が出ない理由は勇也がエナジーパックの燃料をほとんど抜き取った事からくる燃料切れである。


 だが学者たちには古代技術が理解できず、光刃の喪失の理由がわからなかった。

 わからなかった理由の一つには現在の生活に魔法を使用している事があげられるだろう。

 この惑星ユニシスに住む人々は、一応は全属性の魔法を使うことができる。


 ただ全属性の魔法を使えるといっても、自分の属性以外は手のひらサイズの効果しか出せず、成長もしない。

 そのかわり自分の属性の魔法だけは成長させる事ができるので、子供のうちから自分の属性魔法を育てていくのが一般的である。


 そう言った理由でこの惑星ユニシスの住民は日常生活には魔法をところどころで使用しているため、学者たちは魔法が関係して光刃を出しているのではと仮定したのである。


 その結果、あれこれやっているうちに燃料が切れたというオチであった。


 同僚のメイドたちの話は続く。 


「それでオーエン様が作った冒険者を探して、話を聞きたがっているみたいよ」


「でも遺跡にあったんでしょ? だったらまた拾ってくればいいのに……」


「前に遺跡を調査したときに学者さんが調べてもわからなかったじゃない……。今は遺跡のそばに発掘したごみが山積みになって困ってるって聞いたよ」


(……困ってる? 誰が?)


 トアはここで二人の話に参加をする事を決め、ユルユに話かけた。


「ねぇねぇ。その『光の剣』話って本当なの? 壊れちゃったって……」


「あっ、トアちゃん。ホントホント。もう学者さんたち真っ青な顔してたよ。代わりにオーエン様の顔は真っ赤だったけど」


「あははは。でも、なんで壊れちゃったんだろうね? その冒険者しか直せないのかなあ?」 


「そうじゃない? なんか急に光が消えたらしいよ。さっきオーエン様が学者さんたちに『給料貰ってるくせに知識は冒険者以下か! いますぐ冒険者に教えてもらって来い!』とか怒ってて私怖かったよ……」


 身震いしているユルユを見たトアは、昨日のモバーンからの話で勇也が旅立った事を既に知っていたがここでは黙っていた。もう一人のメイドであるルーリがトアに話しかける。


「そういえばトアちゃんのお父様は遺跡の警備隊長だったよね? その冒険者に会ったことあるんじゃない? 『光の剣』ってごみ山から拾ったんでしょ?」


 実際はごみ山の部品を加工し、組み合わせて作ったのであるが、周囲の認識では直接拾ったと誤解されていた。トアもその程度の認識だったので特に反論することは無かった。


「会ったことあるも何も、何度も話したらしいし、私も見たことはあるよ。年は私たちと同じ位だけど、なんか冴えない感じの人だったなぁ……」


「すごーい。トアちゃん、知り合いなら話を聞いてくれば? 『光の剣』を直せたら出世するかもよ」


 その意見にはもうユルユが反論する。


「トアちゃんより姫様の方がその冒険者を知っているんだから、姫様が聞きに行くでしょ?」


「それもそっか」


 うんうんとうなずいて納得するルーリ。そして思い出したように発言する。


「……でも遺跡ってまた封印するんでしょ? そのごみどうするんだろうね? 戻すのかなあ?」


「その『光の剣』の話が出る前はどっかに埋めるって言ってた気がする……。でもお金かかるからって手付かずだったような……」


 ユルユの返事はトアがまさに聞きたい事であった。トアがユルユに確認する。 


「じゃあ、ごみってそのまま欲しい人が出てくるまで放置するのかな? 『光の剣』のおかげで引き取り手がでてくるんじゃない?」


 トアはごみの引き取り手が他に出てくれば計画がおじゃんになってしまうので、そこは懸念するところだった。だがユルユは首を横に振る。


「これからはわかんないけど、多分いないと思うよ。調べてもわかんなかったからごみになってるんだし……。『光の剣』だけ取ってあとはそのままにするんじゃないかなあ……」


「大体今見ても『光の剣』ぐらいしかわからないかもね。あ、でもわかってれば壊したりしないか……」


 と、ルーリも相槌を打った。


(やっぱり、ユーヤって人しかわからないみたいね。だったらうまくいくかも)


 トアは父であるモバーンの昨日の話から、勇也なら見ればわかると言っていた事を思い出し、これならまだ大丈夫かと安心する。

 古代の文化は現在には伝承でしか伝わっていないため、ごみを見ても誰も理解できてない事は過去の調査で立証済みであった。


 以前遺跡を調査した時、王国の学者たちは発掘された「箱」、「管」、「線」など発掘された部品をいろいろと調べ、過去にどのようなことに使用したか調査したが結局わからなかった。

 次に学者たちは発掘された「箱」、「管」、「線」などを再加工するべく熱を加えたり、折り曲げようとしたりしたが、オリハルコンの強度のためにそれも挫折している。

 その結果学者たちは役に立たないもの、すなわちごみとして放置したのである。これは国王にも報告済みであった。


(……でも遺跡って元はなんだったのかしら? なんでユーヤって人は『光の剣』だってわかったんだろう?)


 トアの疑問に答えられる人間はこの世界では今現在勇也のみである。その勇也は既に知っているが、遺跡の正体は数千年前のランバートルという乗り物の工場である。


 当時は各ラインに箱型の機器が目的に応じて設置されており、機器を起動するとマニピュレーターが内部から飛び出し、作業するというコンパクトな設計がなされていた。


 さらにその箱型の機器は、安全のために電源を落とすとマニピュレーターが自動で箱の内部に仕舞われる様な設計がされていたため、電源の落ちている現在は外見上は箱やら管やらにしか見えず、学者が誤解するのも無理の無いことであった。


 勇也はスキルの恩恵と、日本での生活で理解度が高かったために分解しようと思いつき、強引にバラして『オーパーツ』だけ取り出したのである。


 余談だが、レーザーブレイドに使用されているオーパーツである『光変換高圧出力装置』と『粒子形状固定リング』はオリハルコン資材を裁断する機器に使用されていたものであり、数千年の時を経てまた「切断作業」を復活したことになるのだが、その事は勇也も知らない事であった。


「そういえばトアちゃん、そろそろ時間じゃないの? 姫様に怒られちゃうよ」


 考え込んでいたトアにルーリが注意を促す。別にお茶は誰が出してもいいのだが今日は昨日の件もあってトアが志願していたのだ。


「えっ? あっ、いけない! もうこんな時間! ごめんね。姫様にお茶をお出ししてくる!」


「じゃあ、私たちも真面目にお掃除しますか~」


 トアはサラ姫へのお茶を入れるべく二人と別れる。幸いにもまだ間に合いそうであり、トアは急いで仕度をしに給湯室へと向かう。


「さて、これでよしっと……」


 準備を終えたトアはサラ姫の部屋へと向かうのであった。



 ☆~~~~~~~~~~~~~~☆



 サラ姫は外を見ながら物思いに耽っていた。トアがお茶を持って入ってきたのはそんなときである。もっとも最近はいつも物思いに耽っている時間の方が長いのだが。


「失礼いたします。姫様。お茶をお持ちしました」


「……うん」


(……さて、どう切り出そうかな)


 トアはそう思いながらこぽこぽとお茶を入れる。付け合せは焼きたてのクッキーであり、希少な乳製品である乳酪を混ぜた一品である。庶民は甘いだけの硬いクッキーしか食べられない事を考えると、やはり王家は我々とは違う身分なのだなとトアは思う。


「姫様、どうぞ」


 入れたての熱いお茶をサラ姫の前に差し出しながら、トアはサラ姫の顔をこっそりうかがう。やはりどことなく憂いを帯びた表情をしている。


「姫様。お味は如何でしょうか? 今日はハーブティーにしてみました。さわやかな香りが気分を……」


「……うん」


 サラ姫の様子を見て、トアは小さくため息をついた。一口飲んだだけでカップを置いていたからである。


「……申し訳ありません。お気に召しませんでしたか?」


「……え? いや……」


 サラ姫の僅かな反応をトアは見逃さなかった。話は聞いていると判断し、昨日の団欒の話を少しずつしてみることにする。


「姫様。実は昨日、ひょっこりと父が帰って来まして……」


「……そうか。モバーンにも迷惑をかけたな……。わらわがすま……」


 トアはサラ姫の話をさえぎって自分の話を進める。


「……それでこんなことを言うのですよ。ユーヤが旅立ったから王城の動きを聞かせろと。ユーヤって人は何も言わずに旅立ったそうですよ」


「えっ……」


 サラ姫ははっとした顔をトアに向ける。だが、すぐにうつむいて呟いた。


「……まあ、そうじゃろうな。わらわは約束を守れなかった。愛想を尽かされて当然じゃ……」


 トアはサラ姫の話を聞いて「何でこんな偉い人が冒険者相手に悩んでるんだろ?」と思ったが、口には出さず代わりに母親の話を切り出す。


「……ところが、そのユーヤさんの話を父から聞いた母が言うのです。ユーヤって人は遺跡が好きなのではなく、遺跡から出る『ごみ』が好きなんだろうと。その話を聞いた父も妙に納得しておりました」


 心当たりがあるのかサラ姫が微妙な顔つきになる。トアは話がうまくサラ姫の興味を惹いてる事に満足し、話を続ける。


「それで両親が言うのですよ。『ごみ』が増えればユーヤは帰ってくるはずだと。そして遺跡の未調査の部分から『ごみ』を持ち帰って増やした後、ユーヤに見せることができるのは姫様しかいない。姫様なら今も普通に遺跡に入れるのだからと……」


 サラ姫はカップを口につけたまま考えている。


「…………」


「……姫様。お茶のおかわりはいかがですか?」


 いつの間にか空になっていたカップを見てトアが問いかける。サラ姫は随分と考え込んでいたらしく、言われて気が付いた状態である。


「えっ? あっ! す、すまぬ……」


 あわてながらカップを差し出すサラ姫。トアはお茶を入れながら話を続ける。


「確かユーヤさんはごみ山で妙にはしゃいでいたと父が申しておりました。……でしたらたくさんの『ごみ』を用意すればユーヤさんも帰ってくるのではないでしょうか? もちろん人手が必要になりますが、姫様ならすぐに集められるでしょう」


 トアに言われ、サラ姫はなぜ勇也が遺跡に入りたがっていたかを考える。


(あのとき……、ユーヤが入りたがっていたのは、確か探しているものがあると……。我らにとっては『ごみ』でも、ユーヤにしか理解できないものがあるのかもしれぬ……。だったらユーヤが入るまでもなく、我らで手当たり次第持って帰れば済む話じゃな……)


 サラ姫はトアの意見を聞いて勇也が『ごみ』目的で遺跡に入りたがっていたと”勘違い”した。もちろん実際は勇也の思惑は違っており、トアやモバーンも勘違いしている。

 勇也は確かに『ごみ』にも期待している部分もあるが、実際は『ごみ』に含まれるであろう『オーパーツ』の確保と、遺跡の抜け穴から行ける『サイテック時代の都市跡』が目的で遺跡に入りたかったのである。

 そもそも勇也には唯一無二の超古代スキルがあるため、遺跡に入れば『オーパーツ』を見抜くことは簡単であり、それらの加工を経て『サイテック時代の都市跡』へ向かうつもりだった。

 今回の誤解は勇也がなるべく目立たないように王国のルールに従った結果だったが、ごみ山ではしゃいだせいかすっかり皆に勘違いさせていたようで、これは勇也の自業自得ともいえるだろう。


 ただ、その皆の”勘違い”は勇也にとって今後いい方向へ進んでいくことになる。


「それで、私思ったんです。ユーヤさんは『ごみ』が好き。そして王国は『ごみ』が問題になっていた。だったら『ごみ』を全部ユーヤさんにあげてしまえば双方幸せになれたのではと……」


「……でも、いまさらじゃ。……それに、ユーヤは旅立ったのだろう?」


 寂しそうに言うサラ姫の発言にトアはうなずく。


「はい。ですのでユーヤさんが他国に行く前に遺跡の再調査の情報を流して引き止めるのは今しかございません。それに丁度噂の『光の剣』が壊れたそうですから、王国の遺跡への期待が高まると思います。”いまさら”ではなく、”今”が絶好の機会なのです」


「……今しかない……か。確かにユーヤのおかげで遺跡の魔獣の脅威は消えて安全ではあるが……」


 すでにミノタウロスは勇也に討たれ、先日死体を回収したときも安全であった事をサラ姫は思い出す。


「そうです。そこで提案ですが、ユーヤさんが帰ってきたら今度はごみの再利用に知識のある『ごみの専門業者』として登録してしまえばいいのではないでしょうか?」 

 

 聞きなれない『ごみの専門業者』に首を傾げるサラ姫に、トアは説明を続ける。


「父から聞きましたがユーヤさんは姫様に防具を作ったそうじゃないですか。だったら『光の剣』以外のごみの利用方法も彼なら思いつくのではないですか? 冒険者ではなく『ごみの専門業者』であれば陛下もお気になさらないのではと思いました」


 だがサラ姫はその話を聞いてうつむいてしまった。


「……ユーヤはもう遺跡に入れぬ。『ごみ』といえど渡すのは無理じゃ……」 


 だがトアはサラ姫の意見にあっさり反論した。


「……別にユーヤさんでなくても構いません。『業者』ですから。誰かユーヤさんに近しい人はいませんか?」


「……あっ! 双子! 双子がおる!」


 サラ姫は勇也にべったりな双子を思い出す。確かマリアとアリスという双子はアクアス家の忘れ形見であったと。そのアクアス家は王都の元商家であり、再興させる名分にしてもいいかもしれないとも思う。


「……なるほど。彼女らに『ごみ』を素材として渡し、ユーヤに『作品』を作らせるわけじゃな……」


「はい。渡した『ごみ』が最終的にユーヤさんに渡ればいいだけですので、だれが受け取ろうが問題はありません」


「……わかった。今の話、まだ誰にも言うでないぞ」


 サラ姫は立ち上がった。


「はい。ですが両親は知っておりますが……」


「お馬鹿。それ以外でじゃ……。陛下のところへ行ってくる」


 サラ姫はようやく笑顔を見せる。


「はい。行ってらっしゃいませ」


 トアは肩の荷が下りたのか、いつもより深くお辞儀をした。



 ☆~~~~~~~~~~~~~~☆ 



「おお、サラ。良いところへ来た」


 王の間へ来た途端に国王に呼ばれたサラ姫は、一礼して国王の御前に出る。


「はい。何でございましょうか?」


「うむ。『光の剣』の話だ。そなたはなにか例の冒険者から聞いておらぬか? あっという間に壊れてしまったそうだが原因がわからなくて困っておる」


 サラ姫は国王の話が予想通り『光の剣』の話であったことに内心喜んだ。話が早くなりそうだからである。


「申し訳ありませぬが皆目見当もつきませぬ。わらわは仕組みについては聞いておりませぬゆえ……」


「……ううむ。やはり例の冒険者に話を聞かねばならぬか……」


 国王もさすがにレーザーブレイドの威力を目の当たりにして以来、その力を得たいと思い始めたようで若干態度が軟化しているようである。だが現実は甘くは無かった。


「陛下。わらわからも報告がありまする。例の冒険者はすでに旅立ったようで行方が知れませぬ」


「なんだと……。もしやすでに外国へ行ったのか?」


「さて。関所などに問い合わせてみないとなんとも……」


 サラ姫自身も知りたい情報であるため、ここは同調しておく事にする。


「うむ。オーエンよ、至急手配せよ!」


「はい。ご安心を。すでに手配済みでございます」


 オーエンはレーザーブレイドが壊れた(実際は燃料切れだが)と連絡を受けてからいち早く冒険者の出入りの監視を強化するよう通達を出していた。

 だが、今のサラ姫は勇也を見つけるのではなくおびき寄せる作戦を取ったため、遂行すべく国王に進言する。ただその前に勇也が見つかればすぐに会いに行くつもりではあるが。


「陛下。『光の剣』の話はわらわも聞き及んでおります。冒険者もすでに他国へ渡ってるやも知れませぬ。ゆえにもう一度遺跡で『光の剣』が無いか探してまいりたく存じます」


「なんだと。遺跡は封印する約束だろう?」


「はい。ですのでその前に未調査の部分を探してみたいと。魔獣は既に無く、近衛騎士団も連れて行くつもりですのでご安心くださりませ。封印する前に全ての調査だけでも終わらせたく存じます。責任者として悔いを残したくありませぬ。どうかわがままをお許しください」


 国王はサラ姫の話を聞き、少し考える。


(ふむ。サラも以前から遺跡にはこだわりがあるようだし、諦めさせるには最後まで調査させてやるのもいいか……。胡散臭い冒険者も魔獣もいない事だし、近衛騎士団も連れて行くなら安全であろう。うまくいけば『光の剣』があるかも知れぬしな……)


 レーザーブレイドの効果は抜群だったようで、国王はあっけなくサラ姫に再調査の許可を出した。


「サラよ。十分に気をつけるのであれば構わん。好きなようにやってみよ。そなたの調査が終わったら封印することにしよう。見事『光の剣』を見つけて参れ」


「はい。ありがとうございます」


 サラ姫はいつも以上に深々と頭を下げた後、そそくさと王の間から出て行った。


 彼女のその後の行動は素早かった。

 まず部屋の前で掃除をしていたトアを無理やり連れ出し、そして騎士団詰所で近衛騎士団を編成し、さらには王都のあちこちで遺跡の再調査について触れ回る。


「よし! 出発じゃ!」


 準備作業を終えたサラ姫は元気よく号令をかけ、編隊を組んでターミナへ移動を開始する。

 特に何事も無く、一行は日が暮れたころにターミナの宿舎に着いた。

 サラ姫は先にターミナに戻っていたモバーンと打ち合わせを済ませ、翌朝からの遺跡の再調査について大号令を発した後、夜遅くにようやく就寝する。

 翌朝になると住民にもサラ姫が遺跡の再調査のために来たのだとわかるように目立つ行動を取りつつ遺跡に向かう。


 そしてついに再調査が開始された。


 しかし、予想に反して未調査の遺跡の地下3階層(工場でいうところの1階)は、だだっ広く、がらんとしているだけで特に持って帰る物もほとんど無いようだった。


(……これは、当てが外れたかのう。がらんどうで、何も無く、ほとんど人手が要らないくらいじゃ……おや?)


 ちょっとがっかりしたサラ姫は遺跡の中で小部屋を見つける。その中に入ってみると、朽ちかけた机の上で埃をかぶった板のようなものに線が繋がっているのが見え、その線の先には箱の中の石版らしきものに繋がれている様であった。


(……この石版みたいなものは……? そういえば確かユーヤもこれの小さいのを持っておったような気がするのう……。これも持って帰るか……)


 サラ姫は勇也が以前スマートフォンで自分のステータスを見ていたことに気付いており、それがきっかけでこの石版らしきものを持って帰ろうと決めたのである。


 そしてこのサラ姫の持ち帰った石版らしきものが、今後の勇也の冒険を圧倒的に有利にさせる事となるのだ。


 この石版らしきものを勇也が鑑定すればこうPOPが出るだろう。


『商品管理タブレット』と。


 だがこれは現実世界での過去の工場の持ち物としての名称である。

 このタブレットは当時、出来上がったランバートルなどの商品を倉庫に転送するために使用されていた。

 使い方は簡単で、商品をスキャンし、転送ボタンを押せば『亜空間』の倉庫へ転送できる。

 倉庫へ転送された商品は、そのままタブレットへ登録され、商品一覧に表示される。

 この工場では、それを元に商品管理を行っていたのである。 


 そして、このタブレットはゲーム上ではこう呼ばれていた。


 ――『無限ボックス』


 勇也が一番欲しがっていたアイテムが、サラ姫の手に入ったのである。

30話記念でスーパーアイテムをゲットしました。主人公じゃない人が……。


 ここまで読んでくださってありがとうございます。もっとがんばります。

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