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第二十八話 王国の動き

短めです。

「それでは、姫様。お気をつけて」


 モバーンが敬礼すると、サラ姫は無言でうなずき、車両に乗る。

 そのまま出発した車両をモバーンは見送り、車両の姿が見えなくなると敬礼を解き、ため息をついた。


(やれやれ、騎士団連中の相手は疲れるぜ……。姫様もかわいそうにな……)


 勇也に褒賞を全て辞退され、拒絶されたと感じて気落ちしたサラ姫に同情する一方で、騎士団の高圧的な態度に不愉快さを感じているモバーン。

 彼らが勇也に褒賞の件を伝えに行き、辞退されたのは昨日のことである。モバーンは昨日の件と今後について勇也に聞くため、真っ直ぐに宿屋へと向かい勇也を訪ねたが、勇也はすでに旅立ったあとであった。


「はあ? もういないって? いつ出てったんです?」


「いや。昨日姫様が帰ってちょっとしてからだよ。なんでも『別の大陸』へ行くとか……」


「なんてこった……、『別の大陸』ってドラングラントですかい?」


「なんだい。姫様の用事だったんじゃないのかい? そこまでは聞いてないねぇ……」


「い、いや。すんません、おかみさん。ちょっとびっくりして……。じゃ、俺はこれで……」


 モバーンはそそくさと宿屋を出て、職場へと向かう。


(まさかすぐに出てくとは思わなかったぞ、ユーヤ。この話聞いたら姫様もショックだろうな……。大体あいつどこいったんだ? 遺跡のゴミ位だったらなんとかしてやるのになあ……)


 モバーン自身も少なからずショックを受けているようで、うまいこと考えがまとめられずにいるようだ。


(しかし……、姫様に言ってもいいものか……)


 はあ、とため息をつきながら、とぼとぼと遺跡の待機所へと到着したモバーンであった。


「ああ、おかえりなさい。隊長」


「……おう、なんか変ったことなかったか? またごみ拾いに来たヤツがいるとか」


「は?……いえ、べつに来ておりませんが」


 部下にそれとなく勇也が来てないか聞いたモバーンであったが、ここには来ていなかった。


(武器を没収されたらここに来るかと思ったが、来ていないか……。もう必要な分は拾ったってことか……)


 勇也が他に行きそうな場所をあれこれ考えるモバーンだったが、結局は思いつかなかった。


(……俺も詳しくアイツを知ってる訳じゃないしなあ……。まあ、街や関所の門番連中は俺の知ってるヤツが多いし、ヤツらに個人的に聞いてみよう。姫様に話すのはユーヤの行き先が分かってからの方がいいだろう……。今は落ち込んでるみたいだしな)


 モバーンは『未知の力』を持つ勇也を個人的にかなり応援している。理由は自分も『光の剣』に魅せられた一人だということもあるが、一番の理由はサラ姫が本当に楽しそうに話をしていたからである。王城での彼女は元気ではあるが、あんなに楽しそうな顔は見せていなかったからだ。


 モバーンは心の中で勇也へと話しかける。

 

(なあ、ユーヤ。遺跡が発見されたとき、姫様はすごく嬉しそうだった。だが、遺跡の発掘品が訳の分からないものばっかりだと知った姫様は顔には出さなかったがすごく落ち込んでいたんだ。でもお前の話をしたらすぐに飛びついてきた。それからお前に会ってからというもの、姫様はお前の話ばっかりしてたんだぜ。陛下に同情しちまうくらいによお……。水くせぇじゃねぇかよ。行き先位教えてくれりゃあいいものをよお……)


 勇也から相談が無かった事を残念に思うモバーンだったが、勇也からしてみれば遺跡を封印し、武器を回収されたことで『警戒された』と思うのも無理からぬ事だと思い直す。


(……確かに武器まで取られちゃ王国が何考えてるか疑うのも無理ねぇか。とりあえず王都でトアに話しておくか)


 すぐに気を取り直し、早速考えを実行に移そうとする。思い切りの良さはモバーンの取り得のひとつでもある。


(トアをユーヤのパーティーに入れてくれって頼んでおけばよかったかな。俺がもっと若ければな間違いなく参加したんだが……。まあ、トアは嫌がるだろうが……)


「ちょっと王都まで行って来る。あとは頼むわ。しばらく何も無いはずだからな」


「……はあ? もうですか? 隊長も大変ですね。お気をつけて」


 部下に指示を出し終えるとモバーンは韋駄鳥にまたがる。


「よし! 王都まで走れ!」


 モバーンは動き出した。

 


 ☆~~~~~~~~~~~~~~☆



 王都に着いたサラ姫はレーザーブレイドを回収した事を伝えるため、早速国王に謁見を求める。

 ほどなく家臣団が召集され、サラ姫はレーザーブレイドを持ち、王の間へ入ると、早速国王に勇也の褒賞の一件を報告した。


「ほう。冒険者は回収に応じたか。殊勝なことではないか。どれ、『光の剣』とやらを見せてみよ」


 国王は勇也が素直に回収に応じたことに意外そうにしながらも笑顔で応じ、早速サラ姫へレーザーブレイドを見せる様に招く。


「はい。これにございます」


「どれどれ……。なんだ、なにもないではないか」


「失礼いたしまする」


 そう言ってサラ姫はレーザーブレイドを受け取り、スイッチを入れ起動する。


 すると桜色に輝く光刃が出現し、周囲を驚かせた。


「おおっ!」


「なんと!」


「おお……、これが『光の剣』か……。よい、サラよ。許可する。何か切って見せい」


「……では、そこの銅像をこれへ」


 サラ姫の掛け声と共に訳の分からない形のモニュメントがサラ姫の前に置かれる。

 どうやら数十年前の芸術家の作品で先代の国王が気に入って購入したらしいのだが、その形は何を意味するか皆わかってなかったものなので、今回の試し切りでようやく意義が出来たといえるだろう。

 大きさも強度も手ごろで、今回のレーザーブレイドの試し切りにはうってつけともいえる作品である。たとえ芸術家の本来の意図とは違うとしても。


「では、いきます」


「うむ」


 国王の許可と同時に、サラ姫が軽くレーザーブレイドを振りぬく。バチンという音と共に火花が飛び散るが、あっさりとモニュメントを分断した。

 ゴトンと重厚な音を立ててずり落ちるモニュメントの半身は、切り口が赤く溶融している。


「うおっ!」


「なっ……!」


 国王をはじめ、家臣団もレーザーブレイドの威力に呆気に取られている。


「で、ではそこの全身鎧フルメイルを切って見せよ」


 国王の命により側に飾られた鉄製の全身鎧が引っ張り出されサラ姫の前に置かれるが、これもモニュメントと同様にあっさり真っ二つにされた。


「おおう……」


「……これは、凄まじい威力ですな」


 オーエンがレーザーブレイドの威力を目の当たりにし、感嘆の声を上げると、周囲も同調した。


「全くですな。これが兵士に行き渡れば王国軍は格段に強くなりましょう」


「量産できるのならばすごい事になりそうだな」


 ここでオーエンが一歩前に出て国王に質問した。


「陛下。例の冒険者を雇用しますか? 『光の剣』も今はこちらにあり、素直に回収に応じた事も合わせると危険は少ないと存じますが……」


 だが国王は首を横に振った。


「いや、まずは学者に『光の剣』を調べさせよ。もし量産させるのならば仕組みを理解し、遺跡のごみから拾うのではなく、素材から生産可能にするほうが良かろう」


「それはもっともですが、仕組みを理解するのであれば作った本人に問うのが一番早いのではありませんか?」


「いや、冒険者を余はまだ信用できぬ。つまりは王国の人間が『光の剣』の特性を理解出来ればよいのだ。オーエン。先日話していた通り王国の関係者の女性たちを集め冒険者風に装わせよ。篭絡させて例の冒険者から技術情報を抜き出すのだ。学者に調べさせ不明点を明確にしてから例の冒険者に問い合わせるように事前に仕込みをしておけ。彼の者とはつなぎが出来ていればそれでよかろうよ」


「なるほど、雇うまでも無いと……」


 なぜか頑なに国王は勇也を信用しない。実は国王は勇也だけではなく冒険者全員を信用していないのだが、その理由を知っているのは今この場にはいなかった。


「それと関所や街の出入り口の監視を強化し、例の冒険者の行動を把握しておくように」


「かしこまりました。早速手配いたします」


 オーエンはうやうやしく頭を下げる。


 残念ながら勇也はすでに出立した後である。タイミングとしては一日遅かったようだ。勇也はしばらく身を潜め、その間見つかる事はなかった。王国の対応は後手になるが、当然今の段階でわかる人間はいない。


 この一連のやりとりを聞いたサラ姫は内心呆れ果てていた。


(なんということじゃ。これなら見限ってもらって正解じゃ。『光の剣』の軍事利用もそうじゃが、たらし込んで情報だけ出させようとは……。わらわもユーヤと一緒にあちこち旅に出たいのう……)


 かなわぬ夢に思いを馳せたサラ姫は、無意識のうちに大きなため息をついた。


(しかし、それもかなわぬ。最初から学者としてユーヤを紹介したり、事前にじいやに相談してたりしたら、あっけなく雇用されたやもしれぬのに……。せっかちなわらわが全てぶち壊してしまった……)


 ため息をついている間に、『光の剣』の議題は終わり、別の議題へと変わろうとしている。サラ姫はレーザーブレイドを近侍に渡し、場を辞して部屋へと戻る。


「……わらわはやっぱり『おばか姫』……か」


 声が出ていることにサラ姫は気付かなかった。

王子時代にいろいろあった相手が今はぼ……おっと、誰か来たようだ……。

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