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第二十三話 探索準備

 今後の冒険に向け、気合を入れた勇也はサラ姫と別れ、ターミナの宿屋へと戻る。

 サラ姫は早速明日回収班を組織し、内部の魔獣の死体を王都へ送るそうだ。

 ターミナの宿屋に着いた時は、丁度食事時であったようである。香ばしいいい匂いがして、勇也に空腹感を思い出させた。


「おなかぺこぺこだよ~。先に食べていこ~よ」


 アリスが待ちきれないようだ。勇也の袖を引っ張り、食堂へといざなおうとしている。


「部屋に荷物置いてくるから、先に食べていてくれ。この荷物が二人の武器と防具になるんだからさ。あと俺も……うひひ」


 にやけ顔の勇也を見てマリアが呆れる。


「……ユーヤ。顔がこわい」

 

「早く来ないと全部食べちゃうよ」


 そう言い残し、マリアとアリスが食堂へと元気に入っていく。今の彼女たちの顔からはわからなかったが、モバーン曰く、なんでも彼女たちは昼も食べずに待っていたらしく、随分と心配かけていたようだ。

 そのため、勇也はこれからは双子も一緒に連れて行こうと思っている。そして今後について考え始めた。


(ミノタウロス如きに苦戦するなんて、なんてザマだ! 俺も双子も装備を整えなければ長期間戦う事なんか出来ない。超古代武器ばかりに目を向けずにいろいろと生産していこう。もっと考えなくちゃ)


 考えながら部屋に入り、荷物を置く。ごみ山から拾った『オーパーツ』を並べて整理していく中で、確かにスキルがないとこれを見てもなんだかわからないだろうなと勇也は思った。


(武器を増やすなら燃料のストックがもっと欲しいな。レインボリオンがあればいいんだが、いかんせんこのままだとレインボリオンの作成前に討ち死にするだけだろう。俺自身も鍛えなくては……)


 勇也の見立てによれば、ごみ山から得られるオーパーツはだいたい頭打ちのようであった。ひょっとしたらスキルがカンストすればもっとあったのかもしれないが、ランク5の勇也にはごみ山の収集はこれで限界のようだ。


(武器、防具、補助アイテム、キャンプ用品、回復アイテム……全然揃っていないな。しっかりと準備しなくちゃ)


 サラ姫が言うには大体十日くらいで連絡できるだろうという事であった。勇也はそれまでターミナ周辺で探索の準備に取り掛かるのだ。


「ま、早速今晩から始めますか」


 勇也はひととおり整理を終え、部屋を出て食堂へ向かった。 





「ユーヤ。こっち」


 食堂に着いた勇也は双子の姿を探すと、マリアが手を上げている。二人は昨日と同じ席についていた。隣にはタルテたちもいる。どうやら部屋ごとに指定しているようだ。勇也はすぐに席に着く。


「はにゃふしなひふぉふぇんふふぁへちゃふお」


 そこには、もごもごと口に物を入れて話すアリス。どうやら早くしないと全部食べると言っているようだ。


「おまたせ、二人とも……。おおっ! うまそうだなあ。なんの肉だろう? いただきまーす!」


 勇也も空腹だったためか、すぐに肉にかぶりつく。隣の席に座っていたタルテが待ってましたといわんばかりに勇也に話しかける。


「ねーねー、ユーヤ。アリスちゃんに聞いたよ。この肉も勇也がくれたんでしょ? ごちそうさま。すっごいおいしいね。このとろけるような肉の質感……」


「おお、ほんとにうめぇな。ベア・ボアの肉なんだけど……」


 タルテの向かいにいて同じ肉を頬張っていたブランが首を傾げる。


「ベア・ボアよりも全然おいしいよ。なんていうかな……、そう、筋肉に染み渡るって言うかな……。そんな感じ。ホントにベア・ボアの肉なのかい?」


 実際はその上位のボスの肉なので断然美味しいのだろう。ゲームでもボアの肉よりは高値で取引されていたはずだ。もっともボス・ベア・ボアを相手にする人がおらず、他の大陸でもっと珍しい食材があるため流通することはほとんどなかったが。


「ブランなんかはこの肉なんか相性良さそうだな。プロテイン多そうだし」


 マッチョ体型のブランには良質なたんぱく質を備えた肉類は相性がいいのだろう。本人も喜んで食べている。もっとも彼は魔法使いを職業に選択したが……。そのブランは勇也から聞きなれない単語を耳にし、不思議そうな顔を向ける。


「……ぷろていんってなんだい? でも不思議だな。僕には妙に心地いい響きに聞こえるよ……」


 うっとりとプロテインと口ずさむブランに、勇也は地球での自身の知識と経験をブランに教える。この世界で通用するかは未知数だが。


「ああ、プロテインは身体を作る栄養素なんだ。肉には多く含まれているよ。しっかり食べた後筋トレして、体をしっかり休めると超回復が起きて筋肉が増大するんだよ」


「ええっ! そうなのかい? 僕は毎日思いついたときに筋トレしていたよ。休んじゃダメだと思っていたけど違うのか……」


 今までの方法が違うとわかり、ショックを受けるブラン。クグルフが代わりに口を開く。


「ところでユーヤ。姫様との仕事は終わったのか? 終わったのなら僕らにいろいろと教えてくれないか。今日大変だったんだよ」


 疲れた顔のクグルフ。何があったのか聞こうと思ったがクリムが話し始めた。


「本当だね。正直あんな怖い目に遭うなんて思ってもなかったよね。無事なのが不思議なくらいだよ……」


「あぶなかったね……」


「……どうしたんだ? なにがあったのか言ってくれないとわからんぞ」


 勇也が進まない話を催促するが、4人の顔つきは落ち込んでいる。タルテが説明を始めた。


「……ハウンドウルフとプチ・ボアの群れが急に襲ってきてさ。逃げられなくて……。あたしやクリムの攻撃はかわされるし、ブランの魔法は弾かれるし……」


「ああ……って。お、おう……」  


 学生パーティーのあまりの弱さに引き気味の勇也。アリスがちょっとにやけている。すかさず肉をまわしてごまかす。


「……結局どうなったの?」


 マリアが心底呆れた顔で聞く。そういえば双子は果敢に攻撃をして、且つ倒していたような気がする。この差はなんなのだろうか。クグルフが重く口を開いた。


「……結局は僕がフレイムボールを唱えたあとブランが石つぶてをあててさ、なんとか逃げ出したんだ。一匹は一発で倒せたけどすぐ魔力が無くなってしまってね。すぐにターミナまで戻って来たんだよ」


 クグルフの話を聞き、うなずく学生たち。だが勇也はその話にちょっとした違和感を感じた。なんだろうと考えているとマリアが疑問をクグルフにぶつけている。


「……新人のクグルフさんがフレイムボールでハウンドウルフを倒すってすごい。適性はどうだったの? なんで補助士をしているの?」


 そういえば昨日だかおとといだかに『ギルドで登録をすませた』といっていたが、実はこれがおかしい。学生ならば適性を学校で調べているはずなのである。それなのに違う職業を選んでいる。その理由はなんなのだろうか。クグルフが答えた。


「僕たちも最初は適性どおりの職だったんだ。僕は魔法使いの適性が高いんだけど、どうしてもすぐにバテてしまうんだ。違った職種の方が活躍できそうじゃないか」


 タルテやクリム、ブランも一斉に理由を口にしだす。


「あたしは神官とかシスターとか回復系の適性があったんだけどさ。クグルフはすぐバテちゃうし、ブランは気が弱くて魔獣に攻撃できないんだもん。女子で攻撃しないとダメかなと思って」


「私は適性が呪術師だったけど、男子があんなだし、タルテだけ攻撃役っていうのもね。もともと私の親も兵士の家系だったし、自分も鍛えられるからいいかなと思って。それに、なんか人様呪いそうな職業なんて嫌じゃない?」


「僕の適性は重戦士だったよ。でも魔獣ってどうしても怖いじゃないか。遠くから倒した方が安全だよ。タルテやクリムもよく前線に出れると思う。尊敬するよ……」


「……それで違う職に着いてるのか」


 適性どおりの職業に着いていなかった理由が男子がヘタレだったからという事実に、勇也や双子はあきれるばかりだった。

 しかし、適性のある職に着く事には当然メリットがあり、獲得経験値が1.5倍になるのだ。最初のうちは適性どおりに冒険した方が断然得なのである。勇也は自分の考えを4人に伝えた。


「うーん。やっぱり最初は適性どおりやってみた方がいいぞ。ある程度自分を鍛えてから転職した方が生き残りやすいし……。ブランもクグルフも気持ちはわからんでもないけど、まずは弱い相手を選んで修行を積んで自信つけろよ。もし女子になにかあったら二人とも立ち直れないぞ?」


「……面目ない」


「魔力のストックを増やすのってどうすればいいんだろう? ユーヤ、なにかコツみたいの知らないかい?」


 うなだれる男子二人に勇也はアドバイスを送ろうとするが、その前にタルテが男子二人を庇うように説明を始める。どうやら4人はかなり付き合いが長いようで、子供のころからずっと一緒だったらしい。


「ブランは子供の頃にハウンドウルフにお尻を噛まれて以来、魔獣を極端に怖く感じるみたいなの。それで体を鍛えたら克服できるかなと思って筋トレを薦めてみたんだけど……。クグルフはもとは神童って言われてたんだけどどうしても体力がね……」


 だが、タルテの弁護はアリスの一言によって霧散してしまった。


「だったら冒険者になるのはやめた方がいいよ。魔獣は容赦してこないもん。見逃してくれないんだから。戦えないなら街から出ないほうがいいよ」


「むっ! ちょっと! そんな言い方しなくても……!」


 むっとした顔でタルテが反論しようとするが、今度はマリアによって遮られてしまう。


「……私たちは万全の準備をして旅をしていたけど、結局はサーベルタイガーに両親と韋駄鳥を殺されたわ。それで私たちは仇を討ちたくてサーベルタイガーに向かっていって……倒せずに殺されそうになったの。ユーヤが来てくれたから倒せたのよ」


 反論を遮られたタルテはマリアからサーベルタイガーに両親を殺されたと聞き、さらには彼女が立ち向かっていった事に愕然とする。それを見たアリスがマリアを口添えするようにタルテへと声を掛けた。


「そうだよ! まごまごしてたら私たちも殺されてたんだから。せめて一矢報いたかったけど結局は自分たちだけでは倒せなかった。私たちだってユーヤが来たから倒せたんだよ。それくらい魔獣って強いんだからやめときなよ。勝ちたい気持ちだけ持っててもダメだし、力があっても怯んでたらダメ


なんだよ。やっぱり気持ちとそれに見合った力が無いと魔獣は倒せないってわかったんだ。だからお姉さんたちには無理だと思う。絶対にやめておいた方がいいよ!」


 二人の話を聞いたクリムがあわてて二人に問いかける。


「こ、子供二人でサーベルタイガーに向かうなんて無茶よ! どうしてすぐに逃げなかったの?」


 アリスは大人びた表情でクリムの疑問を鼻で笑い、返事をする。


「はあ? 家族が殺されて黙って逃げるなんてイヤじゃん。仇ぐらい討たなきゃやりきれないよ」


 マリアも口を開く。


「……どうせ死ぬなら戦って死にたかった。それに私たちは家族の仇である魔獣を今でも許せない。だからユーヤと一緒にいるの。これが一番私の夢に……魔獣を全滅させる事への近道だと信じてる」


「あたしは今度サーベルタイガーにあったら自力で倒したいな。それだけの力がついたら……」


 アリスは一呼吸置いて口を開く。少女の声とは思えないほど底冷えする低音で。


「――ミナゴロシにするよ」


 アリスは忘れていない。貪られた韋駄鳥の内臓を墓に埋めたときにはまだ温かかったことを。マリアも忘れない。父親が母親を庇って死んでいた事を。

 二人は忘れていない。アクアス家の韋駄鳥が車両を引いていたにもかかわらず、家族を逃がすために敢然とサーベルタイガーに抵抗し、そして目の前で食い破られた事を。

 その仇である魔獣を狩り尽くすのが双子の願いなのだ。その意思は揺らぐ事はない。

 アリスのこの殺気立った発言に押し黙る4人。それを見た勇也がやれやれと口を開いた。


「うーん。まあ、俺も4人のパーティーをみて違和感湧いてたんだけど。今理由が解った。知り合ったばかりで生意気言うのもアレだけど、やっぱり命に関わるからはっきりと言っとくよ。まずブラン」


 勇也に名指しされたブランが顔を上げる。


「攻撃できないってタルテが言っていた。でも重戦士だったら守る事も出来る。むしろメインはそっちで攻撃は一撃必殺のカウンターだろ? なぜそれだけのタフさがあるのにシールド装備して守備特化しないんだ? 場合によってはひきつけて盾で殴れ。トドメはクグルフが撃てばいいんだから」


 勇也は次にクグルフに目をむける。クグルフと目が合うと勇也は口を開いた。


「クグルフ。すぐにバテるってことはやっぱり才能があるんだ。威力も高いって聞くから多分一つの魔法に込める魔力が多いんだと思う。だから今度は全部出し切れ。気を失ってもいい。後の三人はそのためにいるんだ。限界を突破すれば体が必要魔力を計算して枠を増やそうとする。戦闘中に気を失うのが怖ければ、寝る前に『トーチ』とかで熟練をあげる手段もある。多分魔力を全部出し切れていないから増えないんだ。庇わずに気を失え。これから毎日気を失え。あとはブランが背負って帰るだろ。但し一日一回だけな。つぎはタルテ」

 

 はいっと身構えるタルテ。勇也はタルテにも気付いた点を告げる。


「タルテはお姉さん気質っていうのかな? なんか男子を甘やかしてるっていうかなんというか……うまく言えないけど、回復役がパーティーにいてくれるだけで安心して戦闘できるんだから、なにもシーフにならんでもよかったんだ。攻撃は他三人でやればいい」


 勇也の発言にうなだれるタルテ。その姿を見たアリスが口を挟む。


「これはあたしの勘なんだけどさ。ひょっとしてブランさんの件ってお姉ちゃんが原因なんじゃないの?」


 どうやら図星だったらしくますます小さくなるタルテ。ブランがタルテを庇う。


「あの時はしょうがないよ。こどものハウンドウルフはかわいいから」


「……でも、あたしが拾わなければ」


「……なんのこっちゃ?」


 勇也はクリムに尋ねる。どうやら遠足に行ったときタルテが子供のハウンドウルフを拾い、親のハウンドウルフがそれに気付いてタルテを襲ったところ、ブランがタルテを庇って尻を噛まれたらしい。

 なかなかいい話だが、そのハウンドウルフは親子揃ってばっさり首を先生に落とされたらしく、ブランにはそれもトラウマになっているようだった。

 なんでもブランはあのあと死線をさまよったそうだ。タルテが人助けになりそうな事をするようになったのはそれかららしい。人に迷惑を掛けたくない。役に立ちたいと言って。


 その話を聞いた勇也はようやく納得した。クリムも以前は病弱だったといっているし、クグルフもブランも昔なんかあったのだ。それでタルテを中心に冒険者のパーティーを組んだのだと。

 いくら商人コースに進んでも就職先が同じになる保障は無い。だったら冒険者を、というのがそもそもの始まりらしい。

 要は4人とも仲が良すぎて、このまま一緒に大人になりたい。4人で一緒の仕事をするためには冒険者が一番手っ取り早く、かつ協力し合えるからぴったりだと思ったのだと。将来も4人でいられる事が結成の前提だったのだ。

 最後に勇也はクリムに伝える。

 

「最後はクリム。家が戦士系って言ってたな。でも自分は呪術師だと。なぜに戦士になる。戦士系の家から上級職の呪術師の適性なんて滅多に無いぞ。そもそも『のろい』じゃない。『まじない』だ! 多属性職じゃないか! なのになぜ戦士になる? 勿体無い。今すぐ戻れ!」


「エッ? えええええっ?」


 混乱しかけたクリムに勇也はさらに追い討ちをかける。


「ああ、もう! なぜだ! 呪術師なんて序盤は『ブラインド』くらいの補助魔法しかないけど、終盤は必殺の『シャドウフレア』が使える。しかも雷属性に繋がる職業じゃないか! 『エレキックフィールド』のランク10はシードラゴンまで拘束するんだぞ! 最終的に一番の火力になりそうだというのになぜに戦士?」


 勇也の表現はゲームでの話であり、クリムたちには理解できない。当然言われたクリムから疑問の声が上がった。


「……なんかいろいろ言われたけど、どうしてそんな事がわかるの? ホントにそうなの? 終盤ってどういうことなの? そんな立派な知り合いでもいるの?」


「俺にはわかる。とらすとみー!」


 腕を組んで自信満々に言ってのける勇也を、クリムはうさんくさそうに見ている。だが勇也は止まらず、言いたい事を言い始めた。


 「話聞いて思うけど、お前さんたちはちゃんと学校で勉強したのか? あたま使えよ! なんだよ、ハウンドウルフなんか10匹くらいさくっと倒せや! ブランもビビッてんじゃねぇよ! ケツの仇だろうが! 10匹倒すまで帰ってくんな! クグルフも一発でぴよってんじゃねぇよ! もっと外に出て身体を鍛えろ。肉をもっと食え! だいたいタルテだって怪盗に憧れちゃダメだろうが! 人に迷惑かけちゃダメだろ! クリムも剣が苦手なのに戦士とかナメてんじゃねぇよ! 俺が魔獣なら真っ先にクリムを狙うわ!」


 4人のヘタレっぷりに勇也がキレてボロクソに批判を始めると、流石の4人も機嫌が悪くなったようだ。


「むっかー! 言ったなー! わかったよ。明日転職して倒してくるよ。言うとおりにしてダメだったら宿代全額出してもらうからね!」


「今のユーヤの発言には流石の僕もちょっとむっときたよ。そこまで自信満々に言うなら、キミの言うとおりにやって見せるよ。この筋肉で10匹といわず100匹でも狩ってくるよ」


「今日中に魔力幅をあげて見返してみせるよ。明日が楽しみだね」


「雷魔法が当たってしまったらごめんなさいね。今のうちに謝っておくから」


 そういいながら4人はそれぞれの部屋に戻る。4人が出て行ったことで食堂は静寂に包まれ、勇也はため息をついた。


「ふう、あんだけ言えばあいつらも奮起すんだろ。ま、ハウンドウルフくらいなら楽勝だろう。ここで無理してみないと成長できんもんな。あいつらお互いを庇いすぎなんだよ……。おっと、ヒントは教えたぜ。それでダメならよっぽどダメってことさ」


「ねぇユーヤ。そんなことより私たちはどうするの? 遺跡ってまだ入れないんでしょ?」


「うーん。まずは準備だな。コロナダイトが無いからまずは……」


 勇也は自身の武器の燃料と今後の新たに増えるはずの武器の燃料の事を二人に話す。結構な費用がかかりそうであり、マリアとアリスが手分けして採集する計画を立てていたところ、意外なところから救世主が現れた。


「おや、コロナダイトなんかなんに使うんだい? 使うんならウチのをあげるよ。去年の相場で大量に買ってあるから、好きなだけもっておいきよ。なあに、ボアの肉のお礼だよ。そうそう、あの肉って……」


 食器を片付けに来たおかみさんが親しげに話しかけてくる。その話を勇也は聞いた途端に、


「マジっすか? マジでいいんすか?」


「え……。あ、ああ……」


 猛烈な勢いで食いつく勇也にさすがのおかみさんもどん引きである。コロナダイトでこんなに食いついた人間は、おかみさんの人生で初めてのことだったであろう。


「裏の倉庫ですか? イッテキマース!」


 そう言って立ち上がった瞬間に倉庫へダッシュする勇也。倉庫を開けるなり奇声を上げる。


「うしゃー! こりゃすげえ! これだけあれば結構戦えそうだぜ!」


 ようやく追いついた双子とおかみさんが勇也に呆れている。当の本人は全く気に留めないが。


「……全部はダメだよ。使う分だけにしなよ。今年は高いんだから」


 当然のごとく釘を差すおかみさん。だがそれでも数十袋に分けられたコロナダイトが所狭しと倉庫に置かれている。ちなみに一袋が大体マリアとアリスのプレゼント分と同じ位の量であり、勇也を満足させるには十分であった。


「じゃあ、5袋ほど頂いてもいいですか?」


「おや、それだけかい? さっきの食い付きからもっと持ってくと思ったけど。まあ、重いからね……」


「ありがとうございます! 助かります!」


「まあ、また差し入れでもしておくれよ」


 うれしそうに笑いかけるおかみさんに勇也と双子は笑顔を返す。


「よーし、部屋に帰って生産するぞ。マリアとアリスも手伝ってくれ。忙しくなるぞ!」


「おー!」


「……がんばる!」


 気合を入れて部屋に戻る勇也たちを笑顔で見送るおかみさん。彼女はいつものように神に願う。彼らが無事に帰ってくることを。


 そんな彼女の願いに気付かない勇也はコロナダイトを片手に気合を入れる。


「これで発電機を動かせるかもしれないぜ! うっひっひ!」


「なにができるか楽しみ」


 マリアはもう気にしない事にした。

12/21 ちょっと矛盾点を修正しました。

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