↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/40

第二十二話 姫の提案

 勇也とサラ姫の二人が帰還を待っていたマリアとアリス、それにモバーンの三人の前に無事な姿を見せた瞬間、悲鳴が上がった。


「ぎゃあああああっ!」


「うわあああああああああっ!」


「ひいい、ひめさまあああああっ!!」


 三人の悲鳴を聞き、身構える勇也とサラ姫。


「な、なんだ。どうした?」


「な、なにがあったんじゃ!?」 


 せっかく無事に帰ってきたのになぜか槍を構えるモバーンや、へたり込むマリア。アリスなどすでに逃げている。


「なんだ?」


「これ、どうしたのじゃ?」


 勇也とサラ姫がお互いの顔を見合わせると、そこにはゾンビのような外見のお互いの姿があった。

 無事に帰還した二人までもお互いの姿を見て悲鳴を上げる。 


「ぬわああああああっ!」


「きゃああああああーっ!!」

 

 勇也などは全身が血まみれ、顔は埃と血で本人か確認できない有様であり、サラ姫などもっと酷く、オレンジの髪は血が固まってきたのかガビガビの状況、顔は血と埃と涙と鼻水のあとでゾンビの様、服装は全身血と埃まみれの姿であった。

 更に戦闘中には興奮状態で気付かなかったが、鼻をつんざく様な悪臭がただよい、不快な気分になってくる。

 

「こ、これはひどい。てかグロい……。まいったなあ……」


「も、もういやじゃ……。はよう帰りたい……」


 勇也はマリアの姿を見つけると、すぐに声を掛けて呼んでみたが、マリアは悲しそうに震える声で答えた。


「……ユーヤと姫様がアンデッドに……。生きて帰って来るって言ってたのに……ぐす……」


「こらマリア! 誰がアンデッドだ! 二人とも無事だよ! 折角討伐成功したのにひどいじゃないか! それよりもちょっと手伝ってくれ!」


「なっ! ホントにアレの討伐に成功したのか? 姫様?」


 若干呆れ気味にマリアにお願いしている勇也の討伐が成功したという話を聞き、驚きを隠せないモバーンはサラ姫の顔をみる。サラ姫は疲れた顔を見せながらもうなずいた。


「おお! 姫様、おめでとうございます!」


 モバーンが破顔してお祝いの言葉を言うと、言われたサラ姫も笑顔を見せた。


 一方で手伝えと言われたマリアは顔を上げて勇也に聞く。


「……手伝うって?」


「マリアは水魔法が使えるだろ? ちょっと顔だけでも洗わせてくれよ」


「お、おお。まことかや? わらわも頼む。顔だけでも洗わせておくれ……」


「……うん。すぐに持ってくるね」


 疲れ顔の勇也をみてすぐにアリスを呼ぶマリア。そんな勇也とマリアのやり取りを見ていたサラ姫が力なくつぶやく。


「……どうやって宿舎まで帰ろうかのう。こんな姿じゃ目立ってしまうぞい」


「姫様、まずはお顔を洗って……」


 マリアがバケツっぽい箱に水をたたえて持ってくる。ちなみにその箱はごみ山からアリスが持って来たものだ。マリアに声を掛けられたとき、気を使って持ってきてくれたようだ。


「すまぬのう……」


 余程疲れたのだろう。サラ姫はいつもの覇気がなく、素直に顔を洗い始める。それを見たモバーンがサラ姫に提案した。


「姫様。ならば守衛待機所でお着替えください。着替えは宿舎にいるトアに持ってこさせましょう」


「ふむ、助かる。そういえばトアが宿舎におるのじゃったな。足労かけるが頼めるか?」 


「畏まりました。すぐに呼んでまいります」


 そういって待機所の方に走っていくモバーン。すぐに韋駄鳥がターミナ方面へ走っていくのが見える。どうやらモバーン自ら行ったらしい。トアという固有名詞に首を傾げる勇也を見て、マリアと髪を洗っているサラ姫が説明する。


「トアとはモバーンの娘じゃ…。ぬう、落ちぬ」


 その話を聞いた勇也が驚いた。


「えっ! モバーンさんって娘さんいるんですか?」


「ん? トアは王城で働いておるぞ。そもそもモバーンやトアの出身であるボルエロ家は男爵家じゃ。そこの次男であるモバーンは貴族の一員で、もともと城の兵士をしておる。腕が立つので遺跡の警備隊長に任命したのじゃ」

 

 サラ姫から話を聞いた勇也はモバーンの意外な素性に驚くと共に、彼の貴族に見えない気さくな人柄に対する感想を話す。


「へえ、意外だなあ。モバーンさんって気さくでいい意味で貴族らしくないっていうか……。なんとなく貴族って威張っているイメージが俺の中にあるんだけど……」

 

 勇也の感想に対しサラ姫が説明する。


「なにをいっておる。貴族の一員だからこそ働いてもらわなくてはならぬじゃろ。民に示しがつかぬからのう。家名をかさに働かぬなどもってのほかじゃ。自分の就きたい職を選ばせた後、王の名において任命する。そこで働いて食い扶持ぐらい自分で稼いでもらう」


 このトキーノ王国のの貴族は「公爵」、「侯爵」、「伯爵」、「子爵」、「男爵」の順に爵位があり、全部で50家程の貴族階級がいる。しかし伯爵以下、しかもそこの次男以下の人間は大して偉いわけでもない。


 その理由は150年ほど前に、家柄で横柄な態度を取った貴族が民衆に次々に襲撃され、あっけなく捕らえられてしまい、貴族の脆弱さが民衆にバレてしまった事件が発端である。その事件の際に、民衆の反乱に手を焼いた王室が取った政策の名残なのだ。

 

 その政策とは、家柄で驕り、働きもしない貴族の領地を全て直轄地とし、当主以外の身内などには平民に混じって働かせ、税を納めさせる事で、民衆に横柄な態度を取らせない様に法律を定めたのである。


 その代わり、王国は貴族階級に対し、『貴族手当て』を出し、ちょっとだけ民衆よりも優遇をするという法律も決めている。


 それ以来全ての土地は王国の管理下とし、貴族は金銭だけで差別化されているが、不動産を王国から購入することは出来るため、金持ちが有利になっている。なので貴族と言っても貧乏貴族の家は、金持ちの商人の家などよりも貧相な家が多い。


 一応、貴族手当てには王国の税収から分配される。貴族には諸外国との取引や会合など、貴族しか出来ない仕事などもあるため、階級に応じてもらえる手当てには差を付けており、民衆も貴族の必要性は知っているため、特に不満も無く、年月を重ねてきている様であった。むしろ、あまりに落ちぶれた貴族が多く、逆に民衆が気を使い始め、それにより、お互いの溝は年月と共に埋まっていったのである。


 当時、この政策が決定したときは、無事だった貴族が当然反発したが、大貴族たちは民衆によって徹底的に破壊されていたため、結局は兵も集まらずに泣き寝入りすることになったという。 


 サラ姫の話によれば、どうやらこの国の貴族、特に本家を継がない人は独立して職に就かないといけないらしい。ふと勇也は思いついた。


「でも、働かずに逃げる貴族はどうするんだ? 本家にひきこもるとかいった貴族さんは?」


 その勇也の質問にサラ姫はさも当然といったように答える。


「勅命でもって集め、強制的に働かせるだけじゃ。それでも逃げたら反逆の意思ありとして捕らえ、奴隷化するだけじゃよ」


「こ、怖えぇ……。この国の貴族はニートになれないのか……」


 洗髪に悪戦苦闘をしているサラ姫の話を聞き、勇也は貴族に同情した。今度はサラ姫が勇也に声を掛ける。


「それよりもユーヤよ」


「ん? どした?」


「……今後の事じゃがのう」


「おう、それそれ! 俺、これからは自由に遺跡に入っていいんだろ?」


 勇也は一番聞きたいことをストレートにサラ姫に聞く。しかし、サラ姫の反応は鈍かった。


「魔獣を討伐したからそれは問題ないのじゃが……」


「ん、それって……?」


「実はこの魔獣討伐の件は国王陛下も存じておる。昨日のうちに我等で今日討伐すると報告しておるのじゃが、そなたのことをぼかして『旅の途中の腕の立つ冒険者』という説明をしておるのじゃ」


「……ん? 腕が立つかはわからんが、それに何か問題が?」


 まあ、確かに冒険者であるので間違ってない。何が問題なんだろうかと勇也は首をひねる。


「……論功恩賞の際、魔獣を討伐したそなたに陛下がお会いになるじゃろうて。何しろ封印した魔獣を倒したのじゃからのう。よく考えたら当然じゃ」


「国王陛下が俺に? ミノタウロスを倒した位で?」


 まさかと驚く勇也であったが、これは当然だろう。なにしろサラ姫と一緒に王国が封印したミノタウロスの討伐に成功したのだから。トキーノ王国にとっては勇也が考える以上にミノタウロスは難敵だったのだ。さらにサラ姫は続ける。


「……問題は陛下に謁見すればかなり目立つであろうという事じゃな。そなたは目立つのは嫌なのじゃろ?」


 大変名誉な事なのだが、勇也にとっては非常に困る。なにしろ一躍時の人になってしまうだろう。超古代武器がばれるのも時間の問題である。勇也は困り顔で言った。


「この場で姫様が発掘許可出して終わんないのか?」


 勇也はサラ姫に自分の望みをぶつけるが、サラ姫は首を振った。


「何を言っておる。わらわと一緒に行って魔獣を討伐したのじゃ。すぐに魔獣の死体も回収されるじゃろう。それを見たら陛下はきっとわらわたちに話を聞きたがる。いい加減な事は言えぬぞ」


 勇也はああと口を開ける。派手に切断されたミノタウロスを見れば国王ならずとも興味を持つかもしれない。


「そこで、ユーヤに提案じゃが……」


「え、何? なんかいい案があるんすか?」


 サラ姫は大分綺麗になった髪をアリスの風魔法で乾かしている。残念ながらドリルヘアーは乱れたままであったが。そして話を続ける。


「うむ。陛下に会えば一躍注目を集め、すぐにそなたの武器も皆にばれてしまうじゃろう。そこでじゃ。逆にユーヤにお願いしたい。王国の『特別遺跡探査官』として遺跡探査の任務に就いてもらえぬか。ユーヤさえ良ければ陛下に奏上しようと思うのじゃが」


「ふーむ。つまり結局目立つ位なら王国に仕えろと……、そういうことか?」


「まあ、そうとってくれれば良い。そもそも目立ったところで王国の仕事であれば怪しくなかろう。発掘品も調査という名目で使えばよい。そのかわり王国に結果を報告せよ。生活に役に立つものがあれば再現したい。その線でどうじゃ?」


 うーんと考え込む勇也。メリットは確かにあるが、デメリットもある。頭の中で天秤にかけているのだ。

 

「姫様、もし俺がその話を受けたとして、俺をやっかむ人がでたり、昨日の姫様みたいに武器作ってくれよ~とかおねだりする人がでたりしたらどうするんだ? 前も言ったと思うけど、結構厄介じゃね?」


「……考えたがそれは多分ないじゃろう」


「え、なんで?」


 勇也の心配事に対するサラ姫の答えは意外であった。勇也は理由を尋ねた。


「当たり前じゃろ。二名の兵士を倒し、遺跡を封印しなければならなかったほど強い魔獣を倒した男をやっかんでみよ。なら自分で討伐せよと言われるだけじゃ。しかも証人はわらわで、回収班もすぐに派遣するつもりだから証拠もでる。だからそんな話自体湧かぬよ」


 勇也は腕を組んで考え込む。


(ふむう。どうすっかなあ……)


「武器に関しても問題ない。そもそも遺跡探査の責任者はわらわじゃ。わらわの裁可無しに作成はさせぬよ。それに……」


「それに?」


 サラ姫は勇也に向かい合う。


「実を言うとわらわも超古代文明に興味はあったんじゃ。子供の頃サイテックの伝説を聞いて以来ずっと興味があってのう。遺跡が発見されたときは興奮して、陛下にお願いして強引に責任者にしてもらったのじゃよ」


 えへへ…と照れながら話し出すサラ姫。彼女が責任者になったのは彼女本人の希望であった。よく考えれば責任者になる事はともかく、遺跡の探査で前線に出てくることから余程興味があったことが伺える。

 王室の人間なら指示を出した後、報告を待つのが一般的であるが、彼女は率先して指揮をとったのだ。彼女はそんな自身の思いを勇也に話し始める。


「じゃがのう……。最初に遺跡を発掘して内部の発掘品を調べた時、わらわたちには発掘したものがなんなのかサッパリわからず、結局発掘品を山積みにして放置したのじゃ。発掘品を戻すのも大変だし、今回の魔獣の件もあったしのう。正直期待はずれじゃった……」


「ああ。まあ……、あれ見ても価値があるかなんか分かんないよな。箱やら線やらしかないし……」


 大した美術品もなく機械が入ったケースや導線くらいしかなかった遺跡はサラ姫たちの興味は引かなかったようだ。超古代スキルがなく、地球での技術も知らなければそんなものなのだろう。


「ちょうどその時、若い男が来てごみ山を興味深そうに見ておったと報告が上がって、わらわもちょっと記憶しておったのじゃ」


「そ、それってまさか?」


 サラ姫は遺跡の責任者である。よってごみ山ではしゃぐ勇也の事が報告に上がってもおかしくはない。赤面した勇也にサラ姫はにこやかに話し続ける。


「ふふっ。誰のことかのう? だが、そのあとわらわは王都へ帰り、遺跡の封印の事を報告しに帰ってから、ベア・ボアを狩る兵士を再編成したりと忙しくての。すぐに期待はずれの遺跡の事は忘れておった」


 サラ姫の話は続く。


「そして我等はそのままベア・ボアを討伐しに大森林に行ったのじゃ。報告ではボスを含む5匹くらいだと聞いておったのじゃが、思った以上に魔獣の数が多く苦戦してのう。乱戦でモバーンがいない事に後で気づいた位じゃ。面目ないことじゃ」


 申し訳無さそうにしているサラ姫に、勇也が答える。


「うーん、モバーンさんには悪いけど、倒れた人に構ってる余裕なんて乱戦ではありえないだろ。スキを見せたらこっちも危ないんだから。モバーンさんはなんて言ってるんです?」


「ユーヤと同じような事を言っておった。じゃがすぐにそなたの話になってそれっきりじゃ」


「まあ、そんなもんでしょ……。って俺の話って何?」


 突然に出てきた自分の話と聞いて、勇也はサラ姫にどんな内容かを聞き返す。サラ姫は思い出しながら答えた。


「ほれ、ボス・ベア・ボアを含むベア・ボアの群れをユーヤひとりで全滅させたじゃろ。その時大森林でモバーンから聞いたそなたの光の剣の武勇伝と、その光の剣をそなたがごみ山から作成したらしいと聞いて、そこからそなたが遺跡の事を何か知っているのではないかと推測したのじゃよ」


 サラ姫は恥ずかしそうにしつつも、うれしそうに勇也に笑顔を向ける。


「はしたない話じゃが、モバーンからそなたの話を聞いたわらわは興奮しておった。『ああ、噂の若い男は遺跡についてどんな事を知っているんだろう? 会ってみたい!』って……」


 サラ姫はモバーンの話から勇也が超古代文明について何らかの知識があると推測したらしい。

 それで彼女は勇也から超古代の話を聞きに、ターミナの宿屋まで勇也に会いに来たのだ。自分の推測の裏づけをし、その話の展開次第でミノタウロスの討伐依頼をするために。

 その話を聞いた勇也は一人納得したようでうんうんとうなずく。


「なるほどねぇ。もともと姫様は古代文明に興味があったから、モバーンさんから話を聞いて俺のスキルに感づいたのか。だから姫様自らやってきたんだな。だったら納得だ。得体の知れない俺に姫様自ら依頼してくるなんて変だと思ったんだ」


 サラ姫はうなずいて、微笑みつつ口を開いた。


「ふふっ。そこからすぐに宿屋でユーヤと会って話を聞いて、本物の光の剣を見た瞬間、わらわは思ったのじゃ。『きっとあの魔獣も倒せる。ユーヤがいれば遺跡の探査が進むかもしれない』って。実は自分が遺跡に付いて行くと言ったのは、光の剣の威力を間近で見たかったからじゃ……」


 勇也がサラ姫にレーザーブレイドを見せた事で、勇也の超古代スキルに対するサラ姫の推測は確信に変わり、更なる興味を持たせていたらしい。百聞は一見にしかずとはよく言ったものである。


「それに、期待通り光の剣はわらわを助けてくれた。わらわが手も足もでなかったあの恐ろしい魔獣を簡単に切り裂いたのじゃから!」


「姫様はそう言うけど、正直俺はもっと簡単に倒せると思ったんだけどなあ……」


 後頭部を掻きながら勇也は申し訳無さそうに言った。だがサラ姫は静かに首を振る。


「わらわが腰を抜かしていなければもっと簡単じゃったろう。……その、すまぬ。あのときは…その……」


 遺跡での出来事を思い出したのか、もごもごと口ごもるサラ姫は顔を真っ赤にしてうつむく。しかしすぐに、羞恥をかき消すように叫んだ。


「ま、まあわらわの予想したとおり、この討伐の一件でユーヤが超古代文明に詳しく、更に剛の者であることがわかったから。それに、わらわも超古代文明に興味があると言ったじゃろ。わらわたちが力を合わせれば遺跡探査もきっとうまくいくぞい」


「まあ、確かに昨日のレーザーブレイドへの喰い付きは半端なかったしなあ……」


 勇也は宿屋での一件を思い出し、ため息混じりに納得する。サラ姫が話を続ける。


「御伽噺だと思っていた文明を裏付ける遺跡の出現と、その文明を理解できるユーヤの出現はきっと偶然ではない。わらわはそう思うんじゃ、だから……」 


 サラ姫は真剣な顔つきで勇也を見つめる。


「……ユーヤ。わらわもなるべくそなたの希望に沿うようにする。だからお願いじゃ。『特別遺跡探査官』として遺跡の探査をしてくれぬか? ユーヤのような人材が必要なのじゃ」


 いつのまにかサラ姫は勇也の手を両手で握り締めている。小さくても温かい、それでいて力強い少女の手。サラ姫の真摯な願いに勇也はついに折れる。やれやれとため息まじりにうなずいた。


「……まあ、遺跡に入るにはそれしかないか……。わかった。その線でお願いしますわ。ただし、人間を相手に超古代武器は使わないし、使わせない。それだけは約束して欲しい。魔獣は片っ端から狩っていくけどな」


「うむ。わかっておるよ。皇女として約束しよう」


 サラ姫は勇也の手を握り締めたまま力強くうなずき、勇也もまた笑顔を返す。


「マリアとアリスも遺跡に連れて行くけどいい?」


 勇也はマリアとアリスの顔を見てから、サラ姫に言った。


「……まあ、止めても勝手についていきそうじゃからな。二人は勇也の助手ということでよいか?」


 その話を聞いた二人は、ぱあっと笑顔になる。二人は勇也にしがみついた。


「ユーヤはあたしたちが守るよ」


「……私はユーヤの一部。行くのは当然」


 サラ姫は肩をすくめながらもうなずく。


「うむ。わらわは早速王都に戻り、陛下に奏上しよう。沙汰があるまで待っていて欲しい」


 勇也たちはサラ姫に向かって揃ってうなずく。と、同時にモバーンが戻ってきた。他に韋駄鳥に跨った若い女性の姿も見える。彼女がトアという娘だろう。


「姫様。こちらへ」


 トアの誘導にうなずいたサラ姫は待機所の方へ向かう前に勇也に声を掛ける。


「ユーヤ。釘を差しておくがまだ遺跡に入ってはいかぬぞ。回収班が調査して、そなたの任命が終わってからじゃ。それまではおとなしくしておくれ。すぐに王都に呼ぶからのう」


「ぐぬぬ……」


「ふふーん。そなたのことなどお見通しじゃよ!」


 得意げにそう言い残し、笑顔でサラ姫はトアと待機所へ向かっていった。


「うーん。まあ、しょうがないか。なら俺たちも準備といこうか。マリアとアリスの装備を底上げしたり、アイテムを作成したりとやる事は多いからな」


 勇也は二人の少女を見て声を掛けると、すぐにアリスが反応した。


「まずはコスモガンだね。あとは……なにがあるの?」


「……私はかわいい装備がいいな」


 マリアは外見も大事らしい。それを聞いた勇也はごみ山を前に唸る。そして大事な事に気がついた。


「……そういえば燃料が無いわ。まずは金策だな」


 遺跡での戦いとそれ以前の戦いでも結構使っている。予備パックはあとひとつあるが、これからの戦いを考えれば心もとない。それを聞いたアリスが驚いた。


「えーっ! もうないの? こないだ買ったばかりなのに!」


「……これからは三人分必要」


 マリアの言うようにこれからは三人分の燃料が必要になる。更なる金策が必要になるのだ。


「仕方ない。二人とも手伝ってくれ……」


「……なにするの?」


「手伝いってなにするの?」 


 期待に満ちた目を向けるマリアとアリス。勇也はため息をつきながらマリアとアリスに説明した。


「ほえー。たくさんあればあるほどいいんだね」


「……まあ、俺はスキルマスターだし材料あればすぐ作れると思う。たくさん集めてくれ」


「……うん! がんばる!」


 何のことはない。パーティーメンバーが一回解散して、それぞれが採集し、あとで集まって生産するだけの単純作業である。ちなみに目標はアムリタだ。道具屋に言われたのを思い出したからであった。

 しかし、勇也がマリアとアリスに採集の指示をだして出発しようとしたとき、そばで聞き耳を立てていたモバーンが呆れて声を掛けた。


「おい、ユーヤ。まず着替えろ。そんな格好で街にいったら大騒ぎになるだろ。あと、話は聞いた。金がないなら姫様に相談しろ。どうも姫様はお前さんを買っている様だし、力を貸してくれると思うぞ」


 その話を聞いた勇也は首を傾げる。


「うーん。あんまり借りを作りたくないんだよなぁ……」


「まあ、言わんとすることはわかる。だがこれで陛下に任命されれば遺跡に入れるんだろ? その準備だとすれば姫様は金を出してくれると思うぞ」


 そのモバーンの話を聞いて勇也は思う。

 これからの遺跡探査へ向けてどんな準備をしようかと。

 そして国王から『特別遺跡探査官』として任命されれば堂々と遺跡に入ることができ、そこでいろいろな調査ができるだろう。

 遺跡では様々な『オーパーツ』を発掘し、様々な開発をしなければならない。

 魔獣を駆逐し、惑星を救うために。

 これからが本番なのだ。


 気付いたら日が暮れかけている。


 遠くで魔獣の遠吠えが聞こえてくる。


 双子の少女が勇也に微笑み掛ける。


 勇也は暮れかけた空へ向かって腕を伸ばし、力強く叫んだ。


「そうだ! 俺たちの戦いはこれからだ!」

目標の十万文字達成! 

読んでいただいた方全てに感謝を。

本当にありがとうございます。


12/21 トキーノ王国の貴族について説明文を差し込みました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。