第十九話 装備再編
翌朝になって勇也たちはごみ山に向かった。すでにモバーンが待機しており、早速ごみを漁る準備をする。
「ユーヤ。今日は姫様公認だ。遠慮なくごみ漁りしてくれ!」
などと笑いながら声を掛けるモバーンに、勇也は元気に答える。
「任せて下さい! 今回は遠慮なく行きますよ!」
「前は遠慮してたのかよ!」
勇也はモバーンのつっ込みを受け流しながら、鑑定スキルを発動し、視界にPOPを浮かべる。まずは防具用の素材集めだ。
「おーい、マリアー。そこの板取ってくれ」
「……これ?」
勇也はうなずくと、マリアの胸元に板を合わせてサイズを測る。オリハルコン製の板だ。ちょっと薄いが、二枚重ねれば十分だろう。
サイズに満足した勇也はマリアに数を集めるように指示をだし、アリスを呼ぶ。
「アリスー、ってなにしてるんだ?」
アリスを呼び寄せると、なぜかアリスがパイプを持っていた。
「これ、勇也のパイプみたいに強いかなあ? あたしも武器欲しいよ~」
「うーん、アリスたちは魔法使えるし、別に武器……いや、そうだな。コスモガンくらい持ってた方が安全だな」
これからは戦力として期待することにしたマリアとアリスだ。武装強化は必須になる。勇也は考えを改め、アリスに指示をだした。
「じゃあ、今は作れないけど、素材だけは集めるか。アリス、そこの太い棒みたいのとってきてくれ」
「うん!」
アリスがうれしそうに棒を取りにごみ山を駆け上がっていく。意外に身が軽い。子供だからだろうか。
「防具用のプレートはすぐに手に入るから……っと、これ使えそうだな……」
そういいながら勇也が手にしたのはオリハルコンで出来たバネであった。勇也はニヤリとほくそ笑む。
「おっぱいプリンセスに何か作ってやるか……」
「――そのおっぱいプリンセスとは誰のことじゃ?」
「えっ? ぬおおおおおっ!! びっくりしたぁあああ!!」
いきなり横に現れたサラ姫に本気で驚いた勇也に、当のサラ姫は呆れかえった。
「な、なにもそこまで驚かんでもいいじゃろ……。そもそもわらわのこと言っておったのはユーヤじゃろうに」
「……えっ、ああ」
「な、なんじゃ。ぽーっとしおって……」
勇也はいきなり現れたサラ姫にも驚いたが、ちょっとすねた様な年相応の顔をしたサラ姫につい見蕩れてしまっていた。朝日に照らされた、明るい場所でみる彼女がとても美しかったからだ。
そこへマリアが駆け寄ってくる。
「……ん、ユーヤ。集めてきた。ほめて」
「おっ、おお。これだけあれば十分だな。マリア、ありがとうな」
そういってマリアの頭を撫でる勇也。アリスも戻ってくると、太目のパイプを勇也に差し出す。
「ほい、ユーヤ。これでいいの?」
「おう、上等上等。アリス。サンキューな」
「えへへ~」
得意顔をするアリスの頭を撫でながら、パイプをみる勇也。見立てどおりコスモガンの本体に使えそうで、勇也は満足げにうなずいた。それをみたサラ姫が首をかしげている。
「そんなもの何に使うのじゃ? モバーンの言うとおり訳が分からん」
サラ姫の呟きに勇也はうなずきながら答える。
「ま、そうだろうな。オーパーツが無いとただのごみでしかないしな」
「ますますわからん。それより、さっきわらわにも作ってくれるようなこと言っておったじゃろ。何を作ってくれるのじゃ?」
どうやら聞かれていたらしく、サラ姫が期待に満ちた顔で勇也に言い寄る。
「えーと。確か姫様は遺跡についてくるんだっけ?」
「うむ。当然じゃ! もしや光の剣のような武器でも作ってくれるのかえ?」
期待するサラ姫だったが、勇也の答えは違っていた。
「いや、武器じゃなくて防具でも作ろうかと。姫になにかあったら俺が王国に殺されそうだし……」
「なんじゃ、がっかりじゃな……。でもそこの双子には武器を作ってやるんじゃろ? うらやましいのう。ひいきじゃ! ずるい!」
ひと通り文句を言うと、サラ姫はハッとして顔をあげる。
「――もしや、わらわに意地悪しておるのか? 胸を触らせなかったから? でも確かユーヤは小さいのが……」
変な勘繰りを始めたサラ姫に勇也がやれやれといった顔で答える。
「あのな、姫様。俺はそんなにポンポンと超古代武器を作りたくないの。だいたい、もし姫がそんな光の剣を持っていたらどうなると思う?」
「うむ、強くなって皆を率いてばったばったと魔獣を討ち取るであろうのう」
サラ姫は笑みを浮かべ、うなずきながら答える。
「で、みんなにひっぱりだこであの魔獣、この魔獣と倒していくのか?」
「うむ。国民を守るのは王族の義務じゃ! 何、光の剣あれば勇者のように連戦連勝じゃ!」
「で、次はそんな勇者のような姫様に国民は期待するんだろうな。『姫がいればどこの国にも負けないんじゃないか』って」
「うん?」
一瞬何が言いたいのか掴みかねるサラ姫。構わず勇也は話を続ける。
「姫がいれば戦争も勝てると踏んだ取り巻き連中が、姫を担ぎ上げるかもしれない。ついに姫は戦争の道具に……」
「な、何を言っておるのじゃ!」
「そして交戦中に光の剣はエネルギーが切れ、姫は捕虜に。哀れな姫は敵に陵辱されて処刑……」
勇也のトンデモ話にサラ姫が怒鳴る。
「お、お馬鹿! 話が飛躍しすぎじゃ! そんな事になるわけなかろう! わが国はどこの国とも交戦しておらぬわ!」
しかし、勇也は憤るサラ姫に逆に質問する。
「だが、姫はいいけど取り巻き連中はそう考えないんじゃないか? 姫の武器を見た取り巻き連中が製作者を調べて、結果俺が作ったのがバレたら俺にも悪いヤツラが来るかもしれんだろ? で、俺が欲に負けてソイツらにも作ってやったらどうなるかな?」
「そ、それは……」
確かに勇也の言うように自分の武器を見て欲しがる人間は出てくるだろう。実際サラ姫本人も欲しくなったのだ。そしてチカラを持った人間が野心を持たないとは限らないのである。
「な、心配になるだろ? まあ、これは俺が勝手に考えたことでそうはならないと思うけど、でも俺でも考え付くことなんだ。だから姫様には作れない。目立ちたくないんだ。ただでさえ美少女で必殺武器持ちの姫様に渡したら、俺の身動きが取れなくなるわ」
「えっ! びしょ…えっ? あっ…」
サラ姫は意地悪だと思っていた男が自分を美少女と呼んだことに動揺して、顔を真っ赤にしてうろたえていた。実はこんなはっきりと面と向かって言われたのは初めてだったのだ。しかし勇也はそんな乙女に気付かず話を進める。
「まあ、そんな訳で、姫様には防具な。マリアとアリスは俺の目の届くところにいるからOK出したんだ。姫様はさすがに無理だよ。俺は魔獣だけを狩りたいんだ。人を殺したいんじゃないんだよ」
「うう、判ったのじゃ……。じゃが先程の話、そなたがその気になれば危ないのう。怖い怖い……」
サラ姫は仕返しとばかりに勇也に意地悪く言ってくる。しかし勇也はあっさりと否定した。
「はあ? ネットもなければ野球もない世界などいらん。さっさと終わらせてペナントの結果を見たいわ!」
「はあ、またおぬしは訳の分からんことを……」
肩をすくめるサラ姫。意地悪が不発に終わったが別に悔しそうでも無い。答えは最初から分かっていたのであろう。単語は不明だったが。
「お、『圧縮ソケット』みっけ。これででかい荷物も楽に持てそうだな。うひひ」
オーパーツの一種である『圧縮ソケット』をいくつか発見し、モバーンに言われた注意を忘れて不気味に笑う勇也。気付くとサラ姫が後ずさっていた。
ちなみにこの『圧縮ソケット』の説明をすると、物質をひとつ圧縮できる。要はカプセルに収納するようなものであるが、ソケット一つにつき一つのアイテムしか圧縮出来ないので数が必要であり、無限ボックスの方が取り扱いやすい。
しかしゲームでは多種の鉱石を『鉱石』として一つにまとめる使い方をしており、使えないわけではない。何種類かの鉱石をひとつの袋に入れればまとめて圧縮できるのだ。
「な、なるほどのう……。モバーンの言うとおりこれはちょっと怖いぞい……」
「お、いろいろある。これでコスモガン二人分確保。でもアレはないなあ……」
「なにが無いんじゃ? わらわも探すぞい」
「『亜空間固定ゲート』と『亜空間座標指定装置』、それと『物質スキャナ』かな。あれがあれば『無限ボックス』ができるんだけど……」
「さっぱりわからぬ……。まあ、まかせる。ユーヤが実際に力があるのが分かっただけでも前進じゃ」
どうやらサラ姫は信じてくれているらしい。民衆の評判どおり、本当にやさしい、人を大切に思える姫様であるのだ。
「ま、今日はこんなもんかな。遺跡に入る前に防具を作るか。マリアとアリスの分は悪いけど後になる。ごめんな」
そう言って二人の頭を撫でる勇也。二人もうなずいている。そんな勇也はサラ姫の目には優しいお兄ちゃんという感じで写っていた。
「じゃあ、早速作りますかね」
すでに勇也はバネを準備し、オリハルコンのプレートへと結合していく。次に工具で別のプレートを少し歪曲させると、小さい盾のような形にして、そのままバネ付きのプレートに接合する。
腕に密着する部分にはボス・ベア・ボアの皮を使用し、衝撃が緩和できるよう工夫している。そして完成したのがオリハルコン製のスプリングバックラーである。
この防具はサラ姫用に勇也が作ったもので、防御力+150。特性は『衝撃緩和』『物理攻撃20%反射』という優れものである。残念ながらサラ姫はステータスが見れないのでイマイチ実感湧かないのだが。
「ほれ、姫様。これどうぞ。弓で戦うって言うから、装着式のバックラーの方がいいだろうと思ってさ」
だが盾を受け取ったサラ姫は、軽々と盾を作り上げた勇也に唖然としていた。
「お、おお。こんなあっさりと作れるとは……。しかしあれじゃな。ほんとにユーヤはすごいんじゃな。ちょっとびっくり」
生産マスターを誇る勇也にとっては大した手間でもないが、本来の常識では考えられないことらしい。目立たないチートだと思っていたが、実はかなりの事であったようだ。勇也は今更ながらに自分のデタラメさに驚くのだった。
サラ姫はバックラーを装備し、いろいろと試していた。
「ふむ、随分軽いのう……。ちょっと薄さが心配じゃよ、大丈夫?」
サラ姫はこの軽量化されたバックラーの強度に不安を感じていた。ステータス画面を見れれば不安はなくなったであろうが、彼女は見れないのだ。その不安を払拭すべく、勇也がテストをする。
「言うと思った。じゃあ、モバーンさん。思いっきり盾に切りつけてください」
サラ姫から盾を返してもらい、モバーンに依頼する勇也。当のモバーンは眠そうにしていたらしく、あわてて顔を上げていた。
「お、おお。この盾に攻撃すんのか? 大丈夫か?」
「大丈夫! どーんと来いっす!」
知らねえぞといいながら切りつけてくるモバーン。その一撃は歴戦の戦士に相応しい一撃であり、やはり腕利きの戦士であることが伺えた。しかし、
――カイィーーン!
「うおっ!」
軽い音を立ててあっさりとモバーンの一撃を防ぐバックラー。スプリングの作用でモバーンは少し弾かれたらしく、たたらを踏んでいた。
「わははは! 大成功!」
大笑いする勇也。これには当のモバーンや、持ち主になるサラ姫も口を開けて呆然とするばかりだ。何しろこの薄いバックラーは傷も付いておらず、王国の騎士団の防具以上に硬く、また特殊効果も付与されていたのだから。
「さ、姫様どうぞ」
笑顔でサラ姫にバックラーを手渡す勇也。サラ姫の表情はまだ信じられなさそうな顔をしていた。
「……ほんと、でたらめじゃな」
「だから言ったろ。目立ちたくないって。だから姫様、内緒で頼みますよ」
「……わかっておるよ。そのかわり……」
サラ姫の顔にいたずらっぽく笑みが浮かぶ。
「――遺跡に入ったら、わらわにもそなたの武器をさわらせておくれ」
まだ諦めきれなかったようでした。
次こそ遺跡に入る……はずです……多分。
※12/15 必要なオーパーツを追加しました。




