第十八話 人脈増加計画
そんなこんなでお開きになり、勇也たちは部屋へ、サラ姫たちは宿舎へ戻る。
「では、明朝ごみ山に集合じゃ。わらわは少し遅れるかも知れぬが、モバーンを遣わすので指示に従うよう」
「了解です」
「では姫様、参りましょう」
「うむ。ではユーヤ。また明日」
そういって二人は宿屋を後にする。と、同時にどたどたと階段を駆け下りる音が聞こえたかと思うと、食堂に例の新人4人組が乱入してきた。
乱入した途端に、シーフの女の子と戦士の女の子が鼻息荒くして矢継ぎ早に勇也に問い詰めてくる。
「ね、ね、姫様なんの用事だったの?」
「キミひょっとして王子様かなんかなの? お忍び?」
自分たちのパーティーの少女二人の行動に男子二人は苦笑いしている。勇也はげんなりしながら答えた。
「ま、まあおちついてくれ。ただ一緒にごみを拾おうと誘われただけだよ」
「えーっ、そうなの? あやしいなぁ~」
「姫様ってそんなことやってるんだ~」
王族って大変だとはしゃぐ少女二人。その姿を見て拍子抜けした勇也は思わず脱力してしまった。
(……あっさり信じたけど、いいのか? そんなごみ拾いのスカウトでわざわざ国の皇女が来るわけねーだろ。まあ、嘘でもないけど……)
その二人に呆れ返る男子三人と双子一組。異世界であろうとも年頃の少女はこんなものかもしれないと思うことにする。魔法使いの屈強の男子が勇也に話しかけてきた。
「うーん、姫様と用事があるんじゃ仕方ないか……。キミ強そうだから一緒に冒険して、コツなど教えて欲しかったんだけど」
「あーっ! そうそう。姫様の用事が済んだら、一緒に行こうよ。お礼はするからさ~」
なぜかスカウトされている勇也。意外なことに勇也はそれもいいかもしれないと考えている。双子の他にも人脈を作っておいて損は無いからだ。同年代の友人が増えるのもうれしい。勇也はとりあえずあいまいに返事をしておいた。
「うーん、じゃあひと段落したら声かけるよ。今は忙しいから……」
「ホントにっ! うわー、助かるよ~。その時はよろしくね、……ええっと……」
「……そういえば私達自己紹介してなくない?」
戦士の子が思い出したように言う。もやしっ子も相槌を打った。
「タルテが突っ走るからだ。彼に迷惑かけんなよ」
「えーっ、あたしのせい? ゴメーン! ……えっと?」
名前を聞かれていることに気付いた勇也が自己紹介をする。
「ああ、ゴメン。俺はユーヤ。コシロ・ユーヤだ。ユーヤって呼んでくれ」
「あたしはタルテ! シーフだよっ! こちらこそよろしくね、ユーヤ君!」
シーフの女の子が一番騒がしい。この子は隠密行動メインのシーフをやって大丈夫なのだろうかとちょっと心配になる。続いて戦士の女の子が自己紹介する。
「私はクリム。戦士だよ。剣はじつは苦手で、得意なのは短剣なんだけど。まあよろしく、ユーヤ君。で、この魔法使いっぽく見えないのが……」
「僕はブラン。よろしく、ユーヤ君。僕は魔道士に憧れてるんだけど趣味は筋トレなんだ!」
ブランは力こぶを勇也に見せ付けながら自己紹介した。もうつっ込む気にもならない……。
「最後に僕は補助士をしているクグルフ。よろしく頼む、ユーヤ君」
クールに挨拶してくるクグルフ。ようやくまともっぽい人材かと思ったら、顔色が悪いだけだった。なんか貧血っぽい。
このメンバーで大丈夫なのだろうかと不安になる勇也であった。
ひと通りパーティーの紹介を終えた4人組の視線が双子に集まる。勇也は手招きをして二人を呼び寄せた。
「みんな、こちらこそよろしく。で、最後にこの子がマリアでこっちの子がアリス。彼女たちも戦力なんで、よろしく」
「……よろしく」
「えへへ~。よろしくね~」
しかし子供の双子が戦力だと聞いて、クリムが心配そうに聞いてきた。
「大丈夫なの? 危なくない?」
「私たちはユーヤのサポートだから……」
「基本前にはでてないよ」
「そっか、それなら安心だね……」
クリムは二人の話を聞き、安心したようだ。そんな胸を撫で下ろしているクリムを見て勇也は思う。
(……まずは自分たちの心配をして欲しい。ネタ満載パーティーじゃねーかよ)
「ユーヤ君。どしたの?」
タルテが勇也が考え込んでいるのを見て声を掛ける。
「え、ああ。ユーヤでいいよ。君付けはいらないよ。それより、ちょっと気になったんだけどさ……」
「ほえ? 気になったことって?」
「ああ、みんなは職業をギルドに登録したんだろ? どうしてその職業に決めたのか気になったんだけど……」
たしかにこの四人のパーティーはミスマッチが多すぎる。勇也でなくとも気になるところであろう。
「うーん、あたしは『怪盗スティール・ハート』に憧れたからかなぁ……。かっこいいよね、義賊ってさ!」
タルテはニコニコしながら理由を説明するが、勇也は懐かしい固有名詞に驚いていた。
(まあ、シーフを選択した理由としてはいいかもしれないが、この子適性無いだろ。それよりあいつ、イベントキャラじゃなくて実在してたんか……。正体知ってるんだけどな。ドラングラント行ったら聞いて……)
「ユーヤ、どしたの? 何か知ってるの?」
「えっ、い、いや、何も。怪盗なんているんだなーと思って……。そ、それよりクリムは? どうして戦士に?」
あわてて話を逸らす勇也。怪盗さんの正体をばらすなんて無粋な真似はしない。なぜならゲーム中で約束したからだ。
話を振られたクリムが答える。
「私は昔病弱で体が弱くってね。今は病気は無いけど、体力無いから鍛えたいって思って。まあ、ナイフより重いもの持てないし、持つ気も無いけど」
(この子には戦士は無理だよおおおおお!!!)
話を聞いた勇也はすぐに転職させようと考える。重いもの持てないんじゃ戦士としてどうなのだろうか。気を取り直して戦士向けの体格を誇る漢に声を掛ける。
「ブ、ブランは、なぜに魔法使い?」
「ああ、僕は固有魔法を使いたくてね。かっこいいじゃない。自分で考えた魔法で敵を倒していくのってさ。まあ、魔力は少ないから、体を鍛えているんだ」
(筋力よりも魔力あげろよおおおおおお!!!!)
駄目だこいつら、早く何とかしないと。最後にクグルフに聞いてみる。
「僕? ああ、補助士って楽そうだからね。戦闘はクリムたちに任せて、サポートに徹する。そうすれば動かなくていいし。そもそも僕は魔力は高いんだけど、すぐに尽きて気を失ってしまうんだ。だから補助士なんだよ。楽だし」
楽を二回言ったクグルフに勇也は思わず質問する。
「ま、魔力が高いんなら、鍛えて魔法使いを選んでみたら良かったんじゃ……?」
「えー、疲れるじゃないか……」
(冒険者が楽しようとすんなよおおおおおお!!!!!)
勇也は心でつっ込みを入れていたが、それも限界を向かえたようである。机を叩いて立ち上がる。
「俺も今度一緒に行ってみんなの適性を図る。異論は認めん!」
「おおー! ついに冒険開始だね。楽しみ! じゃあ最初はタミールに行こうよ! お魚食べたーい!」
「それよりアイテム採集しに行ってお金貰おうよ。ほしい本があるんだ」
「私、魔よけの鈴買わないと……」
「出るのは筋トレ終わったらでいい?」
楽しそうに勇也に話しかける四人組。どうも冒険を軽く考えているようで、ちょっと脅かしてやろうかと思ったがすぐに思い直す。なぜなら学生のノリそのままであり、四人が心底楽しそうにしていたからである。
(ま、俺たちがサポートすればいっか……)
ふと双子の様子を見ると、いつのまにか椅子に座っていたアリスがかわいくあくびをしている。そういえば今日はボス・ベア・ボアを倒したりと忙しい一日だった。もう限界だろう。
「ごめん、みんな。明日も早いから今日はこれで。落ち着いたら連絡するから」
「あ、うん。こっちこそ忙しいのにごめん。僕たちはギルドにいえば連絡つくから」
申し訳なさそうにブランが謝る。
そしてそれぞれが部屋に戻り、勇也は双子を寝かせたあと、ひとりになってスマホをみてみる。するとユニテルからメールが届いていた。その内容は……、
『――遺跡の抜け穴開けときました。これで魔獣を退治しやすくなるはずです。えっへん!』
「犯人は神様かよ!!」
遺跡に入れなくなった理由が酷すぎる。まさか犯人が身内だったとは。
思わずスマホにつっ込む勇也。そしてスマホをみたついでに自分の現在のステータスを確認しておく。
コシロ・ユーヤ
LV 18
HP 402
TP 366
『STATES』 『EQUIPMENT』
STR(腕力) 125 :コスモガン+1000 属性:光 効果:貫通
CON(耐久) 91 :ぺらぺらの胸当て+10
AGL(機敏) 101 :革の靴+10
INT(知性) 105 :
LUC(幸運) 93 :神樹の琥珀 [水属性吸収 土属性無効 即死無効]
STM(体力) 120 :
GUT(根性) 105 :
「おお、かなり上がってる。最近疲れないと思ったらレベルがちゃんと上がっていたのか」
サーベルタイガーやボス・ベア・ボアなどを倒したことで、しっかりと経験値を得ていたようである。
そんな自身の成長に満足し、勇也はベッドに横になる。
こうして波乱の一日は終わった。
どうも遺跡探索ははまだ先になりそうです。遺跡に入ろうとしたら準備してなかったことに気付きまして、準備期間を差し込みました。




