↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/40

第十七話 姫の誘惑

「ん、なんじゃ。知っておるのか?」


 サラ姫の疑問に対し、勇也は簡単に説明する。もう正体云々は隠そうともしていない。


「ああ。レベル42の魔獣『ミノタウロス』だ。そりゃ、勝てないだろ」


「れべる…? よくわからんが強いってことじゃな? それよりも、どうして名前が分かるのじゃ?」


 ミノタウロスの名前を知っていた勇也に不思議そうな顔をして反応するサラ姫。当然の反応であろう。勇也はそんなサラ姫に説明する。


「まあ、俺は特別な存在なんで。だから遺跡についても詳しいぜ。道順だって体が覚えてるくらいだ」


 それもそのはず。勇也がプレイしていた『エイシェント・ユニバース・オンライン』では一応の目標である ”エイシェントドラゴンを倒す” ことと、”Sランクの冒険者” になることで裏ダンジョンへの道が開かれる。

 勇也のプレイキャラである『コシロ』と『ユーヤ』はエイシェントドラゴンを倒しており、2キャラとも裏ダンジョンへの進入は可能であった。二人でパーティーを組んで超古代素材である『オーパーツ』を回収していたのである。

 何度も何度も素材集めに通った道。勇也は体が覚えていると豪語するのも嘘ではないのだ。


 その裏ダンジョンの正式名称は『サイテック・ラビリンス』という。ゲームでは条件クリアでトキーノ遺跡のエレベータホールの抜け道から入れるダンジョンであるが、現実世界では裏ダンジョンに条件なしで入れるかもしれない。

 勇也が遺跡に入りたがっていたのはそのことを確認したかったからであった。


(――それよりトキーノ遺跡って3階層しかないんじゃないのか? なんでミノタウロスがいるんだ? 抜け穴から這い出したのか? あいつらは裏ダンジョンの一番上のフロアにいるはず……)


 ぶつぶつ言っている勇也にサラ姫が声を掛ける。


「これ、なにをぶつぶつ言っておるのじゃ?」


「ん、ああ。なんでミノタウロスが出て来てるんかなって……」


 実はミノタウロスがでてきたのは、とある理由から抜け穴が開いたためであったが、後になってその理由が判明し、勇也を驚かせ、また呆れることになる。  


「それを調べようにもまずそやつが邪魔じゃ。して、そなたは勝てそうか?」


「うーん、準備すれば多分……。でも何匹いるんだ? 多いと結構厄介だぞ」


「今のところ一匹だけじゃな……って、何匹もおるのか!?」


 サラ姫の疑問に勇也は答えず、代わりに質問をする。


「遺跡を封印してからどれ位経ったんだ?」


 その質問にはサラ姫ではなくモバーンが答えた。


「まだ一週間位だ。丁度お前さんがごみ漁りする前日くらいだったかな。魔獣が出たなんていったら街が混乱するから探索が終わって封印したことにしている」


「……まずは抜け穴封じが必要…か」


「もし魔獣を退治してくれたら遺跡を自由に見てよいぞ」


 そのサラ姫の意見に勇也は目を輝かす。


「マジで? 俺がんばっちゃうよ?」


 もともと遺跡には入る積もりだったし、どのみちミノタウロスは退治しなければならない。願ったりかなったりである。


「……ユーヤなら楽勝」


「あたしもがんばるぞ~!」


 マリアとアリスも気合満々のようだ。しかし、


「お馬鹿! 双子は当然留守番じゃ! なにかあったらどうするんじゃ!」


「ええ~っ!」


「そんなあ……」


 と、サラ姫によって止められてしまい、残念そうにしていた。


 そんな双子に勇也は二人の頭を撫でながら言う。


「まあ、今回はマジでヤバイから姫と一緒にここで留守番していてくれよ。お土産によさげなごみ拾って来てやるからさ」


「いまいち喜びづらいお土産だな……」


 モバーンが苦笑しながらつっこむと、サラ姫が横から割り込んできた。


「何を言っておる! わらわも行くに決まっておろうが!」


「ファッ!?」


 意外な発言に思わずサラ姫の顔をまじまじと見てしまう勇也。勝気そうな瞳が美しい少女である。ゲームよりちょっと大人っぽく見える。勇也は「綺麗な子だな」と…そう思った。


「な、なにをじろじろ人の顔を……、そ、そんな堂々と見るでない……」


 恥ずかしがるサラ姫を見て、勇也は自分がサラ姫に見蕩れていたと気付き、あわてて否定する。


「い、いや違う! 俺は別に…。た、ただ大丈夫かな~って!」


「別に心配いらん! わらわにはこの『エルフィムボウ』もある! そうそう引けは取らぬわ!」


 サラ姫が取り出したどこかで見たことのある弓に、勇也は声をあげて驚く。


「そ、それ、俺が作ったやつじゃねーか!」


「はあ? そんなわけなかろう。これほどの弓、どうしてそなたが作れる……のおお?」


 勇也はだまって立ち上がるとレーザーブレイドの光刃を出し、サラ姫を驚愕させる。


「フフフ……。俺はこれを再現できる男だ。生産マスターでもある俺にそんな弓を作るぐらい訳はない!」


 勇也はレーザーブレイドの光刃をしまい、また座りなおす。一方サラ姫は余程驚いたのかぽかんと口を開けたまま立っていた。


「そ、それが光の剣……。まさか本当に……」


「ま、信じなくてもいいけど~」


 勇也は得意げにふんぞり返る。


「いや、信じるぞよ!」


 サラ姫の力強い答えが部屋に響いた。


「でも、わらわにも作ってくれたらもっと信じちゃうぞよ!」


「結局それかよ!」


 サラ姫は見たことも無い技術を使用した武器に憧れを抱いたようで、瞳をキラキラさせてしつこく催促してくる。


「……ふむ、よくみるとそなたいい男じゃな」


「……どうも。でも作んないぞ」


「……のうユーヤ。わらわたちは友達じゃろ?」


 いきなりファーストネームで呼ばれて唖然とする勇也。


「……ついさっき『訳のわからん男』って罵倒されたんスけど…」


 しかしサラ姫はあきらめない。


「……のう、ユーヤ。わらわも光る剣を持っておればきっと戦力になるはず……ね?」


「……そうかもしれないけど、それは貸すだけであげるわけじゃないぞ」


「ぐぬぬ……」


 ああ言えばこう言うでのらりくらりとかわす勇也に、ついにサラ姫がしびれを切らし、最終手段に出た。

 

「仕方あるまい……ね、ユーヤ。……わらわの胸……触って……みる?」 


 サラ姫が妖艶に微笑みながらシャツの胸元のボタンをひとつはずし、見事な谷間が現れる。


「なん…だ、と……」


 勇也は無意識のうちにふらりとサラ姫に向き合い、その主張の激しい胸を見る。

 サラ姫は勇也の目を見つめながら怪しく微笑み続けている。


「うふふ……どうじゃ? わらわにも……作ってくれたら……」


 勇也は魅惑的な谷間に釘付けになっており、うつろな目をしてふらふらと手を伸ばす。


「イエス…ユア……ハイ……」


 しかし、勇也の手がサラ姫の胸に触れる寸前、何者かが立ちはだかった。勇也はあからさまにがっかりした声をあげる。


「あ、あれ? こんなもん? なんか寂しくね?」


 みるとマリアが勇也の手を自身の胸に当てていた。そのマリアの献身的な行動により、勇也は正気に戻る。


「……失礼な。三年後に期待して」


 ぷんぷん怒ったマリアがサラ姫から引き剥がし、サラ姫は肩をすくめて残念がる。


「……まあ、胸触らせる位で光の剣が手に入るなら安いもんだったのじゃがのう。小さいのが好きなら仕方が無いわ」


「……おい!」


 勇也は誤解だと反論するが、いつのまにかアリスとシチューを食べていたモバーンが一言いった。


「ま、姫様の胸触ったら不敬罪でしょっぴかれるからな。マリアちゃんに感謝しろよ」


「そ、そうか。マリア、ありがとうな」


「……ユーヤを守るのは当然」


 がっかりされてしまったマリアだが、彼女の名誉のために言っておくと、膨らんでないわけではない。まだ発展途上なだけであり、勇也が主張激しい胸を触ったつもりだったのが、実際触ったのが発展途上の胸だったから比較されただけである。


「で、与太話はともかく今後どうするんだ?」


 飽きてきたらしいモバーンが勇也に聞く。良く見ると顔が赤く、酒を飲んでるらしい。上官であるサラ姫に問いただしたところ、許可は出してあるからかまわないそうだ。こういったところがサラ姫が部下に慕われる所以であろう。


「ま、遺跡に入れるなら受けますよ。ただちょっと準備させて欲しいですね。武器はともかく防具がヤバイんで」


 勇也は今は脱いでるが、もともとの装備はぺらぺらの胸当てである。ミノタウロスを相手にするには流石に役不足であった。サラ姫が提案する。


「ふむ、ならばプレートメイルを貸そうか? あれならば頑丈であろう」


 しかし、生産マスターである勇也にとってはそれすらも物足りない装備であった。


「いや、ミノタウロスの特技『戦斧二連撃』は鉄装備じゃ心もとない。やっぱりオリハルコン以上でないと心配だ」


 勇也は知ってて当たり前のように話しているが、次々と聞きなれない単語が出て来て、サラ姫は落ち着かない。


「……ユーヤ、そなたは一体何者なのじゃ? おりはるこんとはなんじゃ? なぜ遭ったこともない魔獣の事がわかるのじゃ? わらわにはさっぱり分からぬぞ!」


 勇也は素知らぬ顔して答える。


「そりゃそうだ。実際はどうなるのか俺にも分からんもん。ただそうなんだろうなって気がするだけ」


「そんなお馬鹿な…!」


 サラ姫の勇也に対する評価は微妙なものであった。確かに超古代の武器を作ったのだろう。だが正体が不明であったために信用に足る人材か分からずもどかしい。そんなサラ姫の戸惑いを打ち消すように勇也ははっきりと告げる。


「まあ、遺跡に入って魔獣を狩るのはもともと俺の中では決定事項だ。ミノタウロス位なら何とかなるかもしれないからな。うまくいったら遺跡に入る許可証をくれるんだろ? しっかりがんばりますよ」


「えっ…う、うむ……」 


 サラ姫の返事に勇也は満足げにうなずくと、明日ごみ山に行くことをモバーンに告げる。


「さーて、装備に必要なごみはあるかな? ウッシシシシ」


 品の無い笑い声を上げ、勇也たちは部屋に戻ろうとするが、サラ姫があわてて止める。


「こ、これ、待つのじゃ。わらわも遺跡に入るのじゃから、ごみ山にわらわも付いて行くぞい」


「……姫様が見ても面白いもん何もないぞ」


「ごみからユーヤが何を作るのか興味があるのじゃ」


「はぁ……」


 興味津々の顔をしたサラ姫をみてモバーンが呆けた勇也にこっそり注意する。


「……姫様の前でごみを見て奇声あげんなよ。あれみんな気味悪がってたからな」


「ふぐっ! が、がんばります……」


 そのモバーンの一言に、ごみを拾うときは無言でと心に誓う勇也であった。



すいません。結局遺跡に入れませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。