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第十二話 おばか姫登場

ちょっと短い…かな?

 二人が寝静まっても勇也は作業を続けている。そんな中、沈黙していたユニテルから連絡が入った。


『――ユーヤさん、旅は順調ですか? 仲間を増やしたようですが…』


 丁度報告しようと思っていたところで随分とタイミングがいい。恐らく様子を伺っていたのだろう。


「すいません、神様。あっさりと正体ばらしちゃいました」


『……いえ、ユーヤさんにお任せしていますので。魔獣を減らしてくれれば私からは特に言うことはありませんよ』


「そう言っていただけると助かります。正直正体を明かすのが早すぎたかなと思っていたので……」


 双子に会って初日で正体を明かした勇也に、ユニテルは特に問題ないと告げる。


『――やり易い様にやって頂ければいいのですよ。仲間を増やしたことで、早く魔獣を駆逐できるならそれに越したことはありません』


「そう思って、二人の装備を作る予定です」


『――ただ……。今回のように、孤児が出る度に仲間にするのも頂けませんね。ユーヤさんが非情にならなければいけない場面も出てくるでしょう』


 これからも二人のような孤児が出てくるかもしれない。ユニテルの指摘は今後も起こりうる事であり、十分に考えられることでもあった。


「……確かにそうですね。まいったなあ。結構この世界は孤児になるケースが多いって聞くし。福祉施設とかどうなっているんだろう? あの子達もすごい嫌がってたし……」


『――さあ、人間界のことはなんとも……』

 

 と、ユニテルはにべもない。それもそのはずで、ユニテルは自身である惑星の無事だけを考えている。いくらマナの減少を止めるためとはいえ、惑星を傷つけるような天変地異を起こしたくはない。だからこそ小細工をして勇也を召還したのであって、別に人間界を守るために召還したのではないのである。


「まあ、当面の目標は武装強化と遺跡探査ですね」


『――同時に魔獣の排除ですね』


「もちろんです」


 ユニテルに返事をしつつ、作業を終了させた勇也はレーザーブレイドを起動し、エネルギー残量の確認をする。無事に満タンになり、さらにエナジーパックのストックも増えた。


「……二人に感謝だな」


 燃料となったコロナダイトは、そばですやすやと寝息を立てている二人の少女が、親の遺産を使って勇也に買ってくれたものである。この量なら暫くは冒険を続けられるだろう。


「……よし、俺も寝るか。神様、おやすみなさい」


『――はい、ではお気をつけて。おやすみなさい』


「……と、思ったら研磨剤作ってなかったわ」


 勇也はあっさり発言を翻し、違う作業の準備に入った。ユニテルもいい加減、勇也の行動パターンに慣れたのか態度もあっさりしたものである。


『――あまり無理なさらないようにしてくださいね……まあ、言っても無駄かもしれませんが……』


「これも大事な作業なんで……」 


 勇也が無理をするのは、このサーベルタイガーの牙から作られる『研磨剤』により、オリハルコン製の刃物を作成できるのだ。加工の幅を広げるのに大事な作業なのである。


「ま、これ終わらせたら寝ますよ」


『――ご苦労様です』


 そうユニテルと会話した後、作業を終えた勇也が眠りについたのは明け方近くになってからであった。





 ☆~~~~~~~~~~~~~~☆




 

 勇也が惰眠をむさぼり、はらぺこ双子が勇也が起きるのを今か今かと待ち構えている頃、王都トキーノにある王城では、大臣が国王に議題を奏上していた。


「ふむ…またベア・ボアが田畑を荒らしたか……もうそんな季節なのじゃな……」


 トキーノ国王である『エン・ペル・ワン・トキーノ十八世』は、名君というわけでもなく、さりとて暴君でもなく、かといって凡庸かといえばそうでもなく、臣下の話を良く聞き、臣下を適材適所に配置したことで安定した政治をしている王であった。


「はっ…。御意にございます。ここいらの冒険者たちではいささか手に余るようで、誰も討伐に行かないとか……。ゆえに王都で討伐隊を組織して送って欲しいとギルドから……」


「ふむ…。きゃつらは2、3匹で群れて行動するゆえ、学生上がりの多いターミナの冒険者たちには手に負えぬか。かといって被害にあったら瞬く間に田畑が食い荒らされてしまうしのう……」


「……さらにいえば、今年はボス・ベア・ボアの姿と共に、5匹ほどの集団も見えたとか…」


「結構な集団じゃな。なんたることじゃ……。この収穫前の季節に……」


 ため息をつき、考え込む国王と大臣。件のボス・ベア・ボアという魔獣だが、ベア・ボアの頭領みたいな存在で、レベルは20に設定されており、一応はレアな存在とされている。


一応と付けたのは出会っても動きが鈍いので逃げやすく、ドロップアイテムも皮が若干強い事と、肉が三倍取れるくらいで特にありがたくも無く、ゲームではプレイヤーもボス・ベア・ボアを倒せるようなレベルならば、既に他の大陸に渡っている事が多いため、イマイチありがたみの無い魔獣と認識されている。下手をすれば出会った事の無いプレイヤーの方が多いかもしれない。


 しかし、ここは現実の世界であり、田畑を荒らす巨大な魔獣が集団で現れるという事件は、十分に厄介な国難になる。


「致し方あるまい……。町の住民より食料を調達し、罠を作って仕留める外あるまいて。結構なエサが必要じゃろうのう……」


「はっ。なにしろベア・ボアもそこそこな巨体でございますゆえ……」


「うむ。まあよい。早急に手配いたせ! 作戦が成功し、大量のベア・ボアを仕留めたらその肉でもって祭りを開き、住民を労おう」


「ははーっ!」


 国王と大臣が協議した作戦は、大量の食料をエサにボス・ベア・ボアたちをおびき寄せ、一網打尽にする作戦であった。下手をすれば人的に甚大な被害が出る危険な作戦であるが、放っておいても作物に甚大な被害がでてしまうゆえに、これしかないと思われる作戦でもあったのだが……。


「――なにを仰いますか! 陛下!」


 大声と共に颯爽と登場したのは、オレンジ色のドリルヘアーを振り回し、白いドレスを鬱陶しそうに掴んで素早く駆け寄る、勝気な顔をした美少女であった。彼女の姿をみた大臣があわてて礼をする。


「こ、これはサラ姫様……」


 しかし、サラ姫と呼ばれた少女は大臣を一瞥すると、


「――お馬鹿!! そなたはなぜ陛下に住民を犠牲にするような作戦を取らせるのじゃ!」


「そ、そのようなことは……」


 しどろもどろとなり、対応に困っている大臣に国王が助け舟をだす。


「サラ姫よ。これはすでに決定したこと。誰に聞いたか知らぬが、そなたが口を挟むことではない。下がれ!」


 しかし、サラ姫と言われた少女は誰に似たのか父親である国王を前に一歩も引かない。


「いいえ下がりませぬ! そもそも魔獣を討ち取るならばエサを使っておびき寄せるでもなく、見つけ次第に師団でもって各個撃破すればよいではありませんか。情報によれば魔獣は大森林から出てくることが分かっているのです。ボスがいると言ってもたかだか5匹程度、物の数ではございませぬ。20人程で師団を結成し、大森林周辺を見張り、魔獣が出てきたらすぐに討ち取れば住民は無用の調達をしなくてすみまする。この国の兵士はこのためにいるのではありませんか。わらわに指揮をお任せください。たかだかベア・ボア如き魔獣は焼き払ってご覧に入れまする。では兵が待っておりますゆえ、わらわはこれにて失礼致します……」


 そう一気に早口で捲くし立てると、来たときと同じように颯爽と身を翻して部屋を出て行った。頭を抱えた国王が大臣に向かってポツリとつぶやく。


「……兵が待ってると申しておったな。なぜにすでに組織しておるのか不思議なのじゃが……」 


「……はあ、姫様は独自の情報網を持っておいでのようでして、その……。それと、焼き払うとも……自ら先頭にお立ちになるようですが……」


「……もともとどこかから話を聞いて、自分で行くつもりで準備も済んでおったのじゃろうな。止めても無駄じゃろう。大臣よ、いつもの事ですまぬが……」


「はっ! 姫様の安全の確保に全力を尽くしまする!」


「……はぁ~っ。誰に似たのじゃ、あのおてんば娘は! 心配ばかりかけおって!」


 国王は椅子からずり落ちそうになるくらい脱力し、大臣はサラ姫のフォローという大事な仕事が出来たためにあわてて走り回ることになった。


 このサラ姫、本名は『サラ・マム・ドリア・トキーノ』という15歳のお姫様であり、周囲からは『おばか姫』と呼ばれている少女であった。


 おばか姫は馬鹿だからそんなあだ名なのではなく、口癖でそんなあだ名になりました。強気ですが心のきれいなお姫様です。ちなきょにゅ…げふんげふん!


12/21ちょっと改稿しました。

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