第十一話 告白
修正しました。またどこか直すかもしれませんがとりあえず。
ポケットからスマートフォンを取り出した勇也は、マリアとアリスに画面をオンにして見せる。
「……なんて…かいてあるの?」
「……読めないよ」
日本語で書かれた勇也のステータスに、ユニテルとのメールなど一通りを二人に見せ、勇也は告白を始める。
「……俺は簡単に言うと、この星の人間じゃない。地球って星から来た異星人なんだ」
「「――!」」
二人とも驚いた表情を浮かべ、勇也の顔を見つめる。勇也は二人にスマホを見せつつ、会話を続ける。
「これは日本語っていう言語で、俺の故郷である地球、その中にある日本って言う国の言葉なんだ。二人が読めないのも当然だよ」
「……そうなんだ」
「……ホントなの?」
マリアはなんとなく信じた様子であったが、アリスはまだちょっと信じられない様子だ。
「まあ、俺もいきなりゲームやってたらこっち飛ばされてスゲーびっくりした。けど信じざるを得ない状況にすぐ追い込まれたんだ。なにしろここは俺がやってたゲームとそっくりな世界なんだぜ!」
「……ゲームって…なに?」
おずおずとマリアが聞いてくる。
「ああ、地球にある遊びでさ。架空の世界で魔獣倒して強くなったり、いろいろ生産してお金稼いだりするんだ。その世界がまんまこの世界だったんだよ!」
「……世界がふたつって…こと?」
今度はアリスが疑問を投げかける。
「……俺の星にはパソコンという文明があってだな。ちょっとまってて…ん、これなら……」
勇也はスマホを操作し、地球で使用していたアプリケーションを起動させる。オフラインで遊べるゲームだ。ちなみに勇也個人のステータス画面などはアプリと同じ扱いで、ユニテルにより勝手にインストールされていた。
「ほら、見てごらん。こうやって動かすと……」
「わあ! きれーい!」
「……どうなってるの?」
二人は初めて見る地球のゲームに釘付けになる。リアリティのある画面に驚いているようだ。
「俺はこれよりもリアルで、この世界にそっくりな『エイシェント・ユニバース・オンライン』っていうゲームをプレイしていたんだ。そのゲームはこの惑星ユニシスが地球にデータを送って作らせたんだそうだ。なぜかって? このユニシスが危険だから、適応者を探すためなんだとさ」
「……惑星? …危険?」
「どういうこと?」
人々の生活が魔獣の危険に晒されているのはいつものことである。しかし勇也は ”ユニシスが危険” と言っていた。二人が疑問に思うのも無理はない。勇也は首を左右対称に傾げる二人に説明を開始する。
「ああ。人と魔獣は ”魔法” を使っているだろう。二人も使っていたよな。実はあれが良くないらしい。惑星のマナが魔法を使われる度に減少して、この星がもたなくなっているそうなんだ。マナってのはもともと惑星の生命エネルギーらしいんで使われると困るそうだ」
「星が滅んじゃうの? あたし魔法使っちゃってるよ!」
「…マナを使ってはいけないの? マナを使わなければ生活ができないわ。どうしたらいいの?」
この世界の住人にとって魔法は生活に密着している。魔法を使用できない生活はは考えづらく、地球人が中世の生活にもどるようなものである。
「うーん、まあ人間が使用する程度ならまだマシなんじゃないか? 問題は人よりも大型な魔獣であって、俺は魔獣を駆逐しろって言われて来たから……」
大型の魔獣が展開する『魔法障壁』は魔獣特有のパッシブスキルである。そのスキルを使用するのにマナを使用しており、大型のワイバーンなどは12枚の魔法障壁を展開する。その展開にも膨大なマナを消費するために、ユニテルは大型のボスクラスの魔獣の駆逐を勇也に依頼しているのだ。
「遠目に見たけど、二人の魔法はサーベルタイガーに効かなかっただろ? あれ魔法障壁って言うんだ。二人のマナとサーベルタイガーのマナがぶつかり合って、魔法力の弱い方が打ち消されたんだよ」
「それで……効かなかったの?」
「……くっ!?」
マリアとアリスはサーベルタイガーとの戦闘を思い出し、自分たちの攻撃魔法が効かなかった理由が分かり、悔しそうに苦い顔をする。自分たちの力が足りない為に自力で両親の仇を討つことができず、さらに勇也がいなければ自分たちの命も無かったからである。
「まあ、普通に近距離で切りつけたり、魔力の高い魔術師がいればあっさり倒せる程度のヤツなんだけどな。子供二人にはちょっと無理な相手だよ」
勇也はそんなことを言っているが、サーベルタイガーはそこまで弱い魔獣でもない。特に素早く動かれ、魔法が当たらなければ危険度が増すのだ。勇也の装備している武器が圧倒的に強いのである。
「魔法障壁を突破するのに、更に強力な魔法攻撃を放つ。マナが無くなるのが加速するって訳だ。それを防ぐために、俺はサイテックの超古代兵器を使うのさ。こいつらはマナではなく資源を燃料に使用するからな」
「そうなんだ…」
「…でも違う星から来たんでしょ? どうしてサイテックの超古代兵器を作れるの? ううん、実際に見たから信じてるけど…不思議ね…」
しかしマリアの疑問に対する勇也の答えは、実にあっさりとしたものであった。
「俺にもわからん。でもなぜか手に取るように分かるんだ。ホントなんでだろうな? 俺、地球じゃそんなに器用でもなかったのに」
これこそが転送時に与えられたチートである。ゲームデータと融合し、再構築された勇也は現実でも生産マスターとなった。言ってみればゲームキャラと同義のであるの勇也こそがユニテルが放つ生体兵器なのだ。
「……とまあ、突拍子もない話だけど…異星人だって信じてくれるか?」
「う、うん…」
「……もちろん」
アリスの微妙な顔つきとは裏腹に、マリアは話を聞いてすぐに信じたようだ。正直言えば勇也自身も最初は夢だと思って信じていなかったのに、なんて素直な少女であろうか。その理由をマリアはきっぱりと答えた。
「まず、その武器が強力で、しかも見たことがないこと。装備の割に旅慣れていることや、魔獣の襲撃に動じなかったこと。きっと魔獣が『どの程度強いか』知っているんだろうなって…。あと、聞き慣れない食べ物や地名を知っていることもそうかな…。あとは…」
一旦言いよどんだマリア。今度はちょっと恥ずかしそうに言った。
「…私たちにやさしくしてくれたこと……かな。…それで…さっきも言ったけどこのひとは…不思議なひと…って思ってた」
「うん、普通はギルドに孤児がでたって報告するんだよ。それで終わり。だって冒険するのに足手まといだもんね。ユーヤみたいに、いちいち連れまわさないよ」
この世界はアリスが言うようにシビアな物の考えをする。そのことを勇也は知らなかったこともマリアが信用する切っ掛けになったのだろう。話を聞くに他の大陸なんかでは結構頻繁に孤児が出るらしいのだ。一家全滅の方が圧倒的に多いらしいのであるが。
その中でトキーノ大陸は比較的平和であるが、流石にサーベルタイガー相手に助かるのは難しいようだ。アリス曰く、自分たちは十数年ぶりに魔獣に襲われて出た孤児だという。かなり薄いところを引いたようだ。
「なるほど。それでコイツ変だなって思ったわけか。確かにゲームでのこの世界しか知らないし、現実のこの世界とは結構違ってたもんなあ。もちろん地球とは全然違うし」
「へ、変だなんて…」
「それよりユーヤって、その『げーむ』だとすごい強かったの?」
アリスはゲームの勇也のことが気になったらしい。惑星に選ばれたと言う勇也に興味があるようだ。
「おお、結構強いと思うぜ。ワイバーン位なら一撃で倒してたし。魔獣の集団も結構一掃してたから…。意外かもしれないけど自分、スゲー金持ちだったんすよ……。ファンドラクトに自前の工房もってたんだぞ!」
「なっ…!」
「一撃って…。う、うっそだあ!」
ワイバーンを一撃で倒す人間はこの世界には存在しない。もちろんゲームでの話である。だが勇也のキャラクターである『コシロ』は一人でワイバーンを倒している。重力系のアイテムで拘束し、反重力ウイング装備による天空からのビームサーベルでの一刀両断で勝利するという必勝パターンをもっていた。数少ない超古代装備で圧倒的な戦闘力を有する勇也のキャラ『コシロ』は、討伐ランキングTOPクラスだったのだ。そしてそれは、この世界でも出来るはずなのである。何しろ神様の後押しがあるのだから…。
「…まあ、確かに今のままじゃ難しいだろうな。そこで俺の正体を知った二人に改めてお願いがある」
「「お願い?」」
勇也は二人に向き合い、まっすぐに見つめ、
「…俺に力を貸してくれないか」
そういって、頭を下げたのである。
「…ユ、ユーヤ」
「改めてお願いしたい。俺に力を貸してくれ!」
真摯に頭を下げる勇也に対する二人の答えは決まっていた。勇也が顔を上げようとした瞬間、勇也の両頬に二人の唇が、ほんのちょっとだけマリアはアリスよりも長く、やさしく触れた。
「…えへへ~」
「……けいやく……」
そのままマリアとアリスが勇也にしがみつく。勇也は二人を抱きしめ、
「…俺がお前たちを守るよ。その代わり、二人が俺を守ってくれ」
勇也は二人の頭を撫でながら優しく語り掛ける。
「…よろしくな、マリア。アリスも…」
「うんっ!」
「…ん、がんばってお手伝いする」
「よし! 今日はもう寝ろ。明日から忙しいぞ。俺は仕込みやってから寝るわ」
勇也が立ち上がって仕込みの準備に入る。武器に補給するためのコロナダイトの加工と、サーベルタイガーの牙を研磨剤にする作業だ。
「そういえば、鉱石をどうやって粉にするの?」
アリスが興味をもった様子で近づいてくる。どうやら寝る気は無いらしい。確かにそこまで夜が遅いわけでもない。
(こうなったら、徹底的に二人に教え込むか…。さすがに一人で全てをこなすのは難しそうだからな…)
そう考えた勇也はアリスにオリハルコン製の乳鉢っぽいものと、自作したオリハルコン製のハンマーを取り出して見せる。
「まあ、簡単だよ。この道具で磨り潰すだけだ」
「そんなんでいいんだ!」
アリスが驚くのも無理は無い。見た目はあまり綺麗とはいえず、ガラクタにしか見えない道具なのだから。
「まあ、見ててくれ。よっと…」
ごり、ごり、ごり…
硬い鉱石がすぐに粉々になる。オリハルコンの硬度の他に、勇也のスキルも相まって効率よく作業が進む。本来はもっと大変なのであるが、アリスは簡単そうだと判断してすぐに飽きてしまったようだ。
「ん~。…なんか眠くなってきちゃったよ……」
「まあ、いろいろあって疲れただろ。もう寝なさい」
「うん、おやすみ~」
あくびをしながらベッドに向かうアリス。マリアはまだ眠くはなさそうだ。
「マリアももう寝ろ。今日は疲れただろ」
「ううん、まだ大丈夫。それに明日から何をするのか聞いてなかったから…」
「ふむ…明日はな……」
勇也は仕込みを続けながら考えていた予定をマリアに教える。
「明日はベア・ボアを討って素材のベア・ボアの皮を手に入れようと思ってる。言ったろ。二人の防具を作るって」
「ベア・ボアって…。群れて行動する魔獣だよね。王都で討伐隊が出される位の魔獣だよ…大丈夫?」
ベア・ボアとはトキーノ大陸に分布する魔獣である。顔は熊っぽいが、体つきは猪っぽい、見た目どおりに力が強く守備力が高い。レベルは15とそんなに高くはないが、群れて行動するため、結構な痛手を負うケースもあるのだ。しかし勇也は、
「んん? アウトレンジからのコスモガンでの攻撃で瞬殺すっから大丈夫だよ」
「…え、そう…なの?」
なおも心配そうな顔をするマリアに勇也は笑いながら言った。
「大丈夫。俺がついてるから安心しろって。言ったろ、守るって」
その言葉を聞いてようやく安心したのか、マリアもようやく微笑んでくれた。
「うん。じゃあ明日はベア・ボアの皮を取って、防具を作るんだね?」
「は? 革のよろいなんぞ作らないぞ」
「…えっ?」
またも意味不明な勇也の発言にマリアは混乱しそうになる。確かに皮で作るとは聞いていないが、何のためにベア・ボアの皮を取りに行くのだろうか。
「革で装飾品を作るだけで、中身はオリハルコン製にするからな。俺の仲間の防具がちゃちな革よろいなんぞ認めん!」
「おりはるこん?」
「うむ、皮を加工している間に、ごみ山でオリハルコンを大量に持って帰るから。マリアたちも手伝ってくれよ」
「う、うん…」
マリアはオリハルコンを知らないらしく、うなずくだけであった。しかし勇也はそれに気付かず作業を続ける。
(他に武器も揃えないといかんな…)
と、マリアが待ちぼうけてその場で寝息を立てるまで、勇也は作業に没頭してしまうのであった…。
補足説明:オリハルコンについて
サイテック時代ではオリハルコンがかなり使われています。現代のステンレスのような合金と考えて頂くといいかもしれません。熱伝導率の低さと硬度によってメインの金属として使われていた…という設定です。いまのユニシスでは硬くて捨てられない粗大ごみ扱いですが…。




