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ちいさなぼくのまもるもの  作者: 星乃いりす


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090 ちいさな店主へのもうひとつのお祝い

――ちいさな店主への、もうひとつのお祝い――


買ったばかりの四輪屋台。


魔石式加熱器に、焼き物用のプレート。


それから、火属性の魔石が三つ。


ほかにも、小鍋や木のお玉、木べらに保存容器。


今日だけで、ずいぶんたくさんの道具が揃った。


ぼくは、買った品物を一つずつ確かめていた。


これなら、おかあさんと一緒に温かい料理を作れる。


あとは、何を売るか考えて、材料を用意するだけ。


「……えへへ」


嬉しくなって、四輪屋台の取っ手をそっと握った。


「ずいぶん嬉しそうだな、坊主」


行商人のおじさんが笑った。


「うん!」


「まあ、自分の屋台ができたんだからな。嬉しいのも当然か」


「えへへ」


すると、雑貨屋のおじさんが声を掛けてきた。


「おい、坊主。ちょっと待ちな」


「うん?」


振り返ると、おじさんは腕を組んで、ぼくの買った品物を眺めていた。


「……それにしても、今日はずいぶん買ってくれたな」


「うん!」


「鍋に、お玉に、へら。それから保存容器が五つ」


おじさんは、指を折りながら数えていく。


「四輪屋台に、魔石式加熱器。それに魔石もある」


「いっぱい!」


「ああ。まさか三歳の子に、これだけまとめて買ってもらうとは思わなかったぞ」


おじさんは楽しそうに笑った。


「しかも、これから自分の店を始めるんだろ?」


「そう!」


「だったら……そうだな」


おじさんは、何かを思いついたように頷いた。


「もう少し、サービスしてやるか」


「……さーびす?」


「ああ。今日はたくさん買ってくれたからな」


「ほんと?」


「おう。ちょっと待ってろ」


そう言うと、おじさんは店の奥へ歩いていった。


何を取りに行ったんだろう。


ぼくが首を傾げていると、行商人のおじさんが笑った。


「ははっ。ずいぶん気に入られたみたいだな」


「そうなの?」


「ああ。商人が自分からおまけを付けるなんて、そうそうないぞ」


「えへへ」


しばらくすると、雑貨屋のおじさんが戻ってきた。


手には、小さな布袋を三枚持っている。


「ほら。これをやるよ」


「……なあに?」


「乾物を小分けにするための袋だ」


「ふくろ?」


「ああ。保存容器の中身を分けたり、材料を整理したりするのに使えるぞ」


ぼくは、袋を一枚手に取った。


小さくて、口を紐で結べるようになっている。


「これ、いくら?」


「いらんよ」


「……ただ?」


「ああ。今日のお礼だ」


「ほんと!?」


「おう。三枚とも持っていけ」


「ありがとう!」


嬉しくなって、三枚の袋を並べてみた。


これなら、材料を種類ごとに分けられる。


何が入っているのか、袋に印を付けてもいいかもしれない。


「たいせつに、つかうね!」


「ああ。そうしてくれ」


おじさんは満足そうに頷いた。


でも、話はそれだけではなかった。


「それから、もう一つ」


「うん?」


おじさんは、ぼくがしまった魔石の方を見た。


「魔石の補充についてなんだがな」


「ほじゅう?」


「ああ。最初の一回だけ、無料で補充してやるよ」


「……ほんと!?」


「ただし、魔石一個だけだぞ」


「うん!」


これは嬉しい。


だって、魔石の補充にはお金がかかる。


でも、まだどれくらいかかるのか分かっていない。


「使って魔力が減ったら持ってこい。残量を確認して、補充してやる」


「ありがとう!」


「そのときに、どれくらい時間がかかるかも確かめておこう」


「うん!」


そうだった。


魔石の補充には、おじさん自身の魔力を使う。


時間もかかる。


だから、補充してもらうときの料金も、ちゃんと考えないといけない。


最初の一回が無料なら、そのときにいろいろ確かめられる。


それに。


おじさんが魔力を補充するところも、見せてもらえる約束だった。


「……えへへ」


「なんだ、そんなに嬉しいか?」


「うん!」


「袋より、そっちの方が嬉しそうだな」


「どっちも、うれしい!」


「ははっ。そうかそうか」


行商人のおじさんが、楽しそうにこちらを見ていた。


「しかし、今日はずいぶん気前がいいじゃないか」


「まあな」


雑貨屋のおじさんは、笑いながら答えた。


「これだけ買ってくれたんだ。こっちも何かお礼をしたくなるさ」


「それにしても、屋台を値引きして、焼き物用のプレートまで付けて、予備の魔石も二つ渡したんだろ?」


「ああ」


「その上、まだサービスするのか?」


「ははっ。自分でも少し気前がよすぎると思うよ」


おじさんは、ぼくの方を見た。


「でもな。こんな小さな子が、自分で考えて店を始めようとしてるんだ」


「……?」


「少しくらい、応援してやりたくなるだろ?」


行商人のおじさんも、笑って頷いた。


「まあ、それは分かるな」


「それに、今日だけでずいぶん買ってもらった。商人としてもありがたい話だ」


おじさんは、ぼくの頭を優しく撫でた。


「だから、これは俺からの追加のお祝いだ」


「……おいわい?」


「ああ。ちいさな店主への、もうひとつのお祝いだよ」


胸の奥が、じんわり温かくなった。


さっきも、予備の魔石を二つもらったばかりなのに。


今度は、布袋と魔石の無料補充まで。


おじさんは、ぼくのお店を応援してくれているんだ。


「……ありがとう」


ぼくは、ぺこりと頭を下げた。


「おじさん、ありがとう!」


「おう!」


おじさんは嬉しそうに笑った。


「その代わり、いい店にするんだぞ」


「うん!」


「それと、いつかお前さんの店で、うまいものを食わせてくれ」


「もちろん!」


ぼくは勢いよく頷いた。


「おじさんには、とくべつに、おいしいのつくる!」


「ははっ! そりゃ楽しみだ!」


行商人のおじさんも、横から声を掛けてきた。


「おいおい。俺の分も忘れるなよ?」


「わすれない!」


「よし。じゃあ、二人とも楽しみにしてるからな」


「うん!」


ぼくは、もらった布袋を大切にしまった。


今日、買ったもの。


おまけでもらったもの。


開店祝いにもらったもの。


そして、今度は追加のお祝いまでもらった。


少しずつ、ぼくのお店の準備が進んでいる。


でも、今日嬉しかったのは、道具が増えたことだけじゃない。


ぼくのお店を楽しみにしてくれる人がいる。


応援してくれる人がいる。


それが、何より嬉しかった。


「……えへへ」


ぼくは、自分の四輪屋台を見上げた。


早く、おかあさんにも教えてあげたいな。

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ここまで読んでいただき、ありがとうございます☺️ 少しでも「続きが気になる」「この子をもう少し見守ってみたい」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても嬉しいです。 皆さまからの応援を励みに、これからも小さな主人公の物語を大切に書いていきます。 次のお話も楽しんでいただけますように。
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