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見窄らしいと婚約破棄された令嬢は国を出て幸せを掴む  作者: ふぁぶにーる


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7/10

7 再会

マーガレットがいなくなってから王宮内の歪みが日に日に大きくなっていった。

その全てがマーガレットが担っていた王宮内部の仕事が

停滞してしまっていたからであった。


(なぜ言わなかった・・・)


グレイブは知らなかったのではない知ろうとしなかったのだ。

マーガレットが独断で全て行う事などない。

必ずグレイブと王妃に話はしていた。

しかし能力の乏しいグレイブではマーガレットの口から飛び出す数々の数字が頭の中で複雑にからまり一音も記憶中枢に運ばれる事はなかった。

だから記憶にない。


そして、グレイブは理解出来ないまま、王宮の歪みは王都へと広がり庶民の生活を苦しめる事となり、今ではその歪みは王都から旅立ち、国内中へと広がっていった。


東の地。

ここはマグレール辺境伯が治める領地で度々治安の乱れが生じていた。

マーガレットがいなくなって一月後に辺境伯領で些細な暴動が発生した。

規模はまだ小さいが国境の防衛も担っている辺境伯の騎士だけでは困難かと思い王宮の騎士が派遣された。

結果は失敗で終わった。

今迄はこのような暴動は直ぐに鎮圧する事が出来た。

だが、グレイブにより手当の廃止された事により騎士達の武力は半減してしまっていた。

手当等の権利は一旦、与えられたものが何の知らせもなく突然と取り上げられれば不満に思わない者はいない。

騎士達の不満は士気の低下へと繋がり、士気の低下は敗因へと繋がった。

暴動は少しずつ大きくなっていっている。

早く鎮圧しないと暴動は内乱となり国の崩壊へと繋がってしまう。

そんな状態のなか、今度は南のグレイ侯爵領で問題が発生した。


「グレイブ殿下、海港税の更新時期がもうすぐなのですが、まだ根拠が定められておりません」


海港税は貿易国との物価の調整を行うために必要なもので、この海港税が歪んでしまうとアルオニ国民の生活が歪んでしまう事になる。

また、ここで得られる税収はアルオニ国の収益の一つであり、この海港税が得られなくなれば国が傾く要因となるため、アルオニ国にとっては重要な問題であった。

その重要な海港税の更新時期が近いというにも関わらずまだ根拠が示せていなかった。

根拠が欠けた海港税は信用が欠ける事となる。

信用が欠ければ明瞭性や健全性失われてしまう。

明瞭性や健全性が失われてしまえば猜疑心が生まれる。

猜疑心が生まれた海港税は貿易の撤退へと繋がってしまう。

よって海港税には根拠が必要であったが、その根拠が示せないでいた。


「あそこはグレイ侯爵の領地であったはずだ。侯爵は何をしている」


「殿下・・・違います。海港税は王宮の収入であるため、王宮で定めなければなりません。ですが・・・」


王宮が定めなければいけないなど知らなかった。

文官の発言にまさかと鼓動の働きが一気に早まるもその血は上部まで運ばれる事なく顔に血液が送られなくなったかのように顔面蒼白となってしまった。

ふと、私の脳裏にあの見窄らしい女の顔が浮かびあがった。


「まさか・・・マーガレットか?」


「はい。マーガレット様が5年間海港税の根拠を作成しておりました」


「何故だ?根拠の提示は文官達の仕事のはず。なのに何故マーガレットがいなくなっただけでここまで影響してくるのだ!」


「それが・・・文官達は全く書類作成を行っておらずマーガレット様に丸投げをしていたようです。マーガレット様がいなくなり担当文官が根拠の書類作成を行っておりますが、5年間と空白の期間があり、五年間の怠惰は記憶の忘却には充分であります。そのため根拠の作成に時間が掛かっております。また、そのような者が作成した根拠が信用に繋がるかどうか難しい所でございますが・・・」


確かに私であったらそのような者達が作成した根拠など信用など出来ない。

契約について百戦錬磨な商人達が相手となれば余計に難しいだろう。


再び文官達の怠惰が露わとなった。

私は考える・・・が、それも無駄だと解っていた。

私が出来る訳がないのだから。

もし、出来るのならマーガレットに私の仕事を任せてなどいなかった。

私には何も出来ない事を私は知っている。

だが、無能な私が右往左往いているこの間も海港税問題も解決出来ないまま東の暴動が少しずつ大きくなっていく。

しかし、私にはどうする事も出来ない。


「兄上!」


弟のカイルが私の部屋を訪ねてきた。

昔から常々マーガレットを大切にするよう苦言を言ってきたため煩わしく思っていた弟であったが、私とは違い優秀に育ったカイルを今では頼もしく思えてしまう。


「カイルか」


「私が東の地へ行き暴動の鎮圧を図ってきます。力による鎮圧は不可能でも交渉による鎮圧がまだ可能なはずです。海港税については出来るだけ期間を引き延ばすよう文官達に指示して下さい。その間に生じる海港税は減税すると言えば相手も譲歩してくれるはずです。その間にマーガレット様に謝罪をして助けを得て来て下さい」


弟のカイルは学園を卒業したばかりでまだ若い。

だが、カイルはマーガレットと同様で学園を首席で卒業するなど優秀であった。

私とは違う。

だから、東の地はカイルに任せておけば問題ない。

ならば、問題は海港税だ。

弟の言葉を思い出す。

マーガレットに謝罪・・・

何故に私がマーガレットに謝罪しなければならないのだ。

全てマーガレットのせいではないか!

マーガレットがいなくならなければ全てが上手くいっていたのだ。


(本当にそうなのか?)


マーガレットがいなくなったせいなのか?

文官達の怠惰がマーガレットの負担を大きくしていたのではないのか?

私が愚かだからマーガレットに負担させてしまったのではないのか?

だが、私は疑問に思う。

いくらマーガレットが優秀だったとしてもマーガレットにそのような時間があったのだろうか。

そこで私は初めて一つの答えに結びついた。

貴族令嬢とは思えないあの姿。

もしやマーガレットには時間がなかったのでは?

マーガレットに食事をする時間があったのか?

マーガレットに睡眠をとる時間があったのか?


『見窄らしい女!!』


私は何も知らなかった・・・などと言う言葉もいい加減、私自身も飽きて来た。

知らない、知ろうとしない事は罪だ。

人々は無知は七つの大罪にも含まれておらず罪ではないと言う者がいる。

だが、違う。

無知は罪なのだ。

私が無知だから解る。

私がどれほどの罪を侵してしまったのかを。

無知は八つ目の大罪なのだ。


(マーガレットに謝罪か・・・)


「カイル、マーガレットは隣国に行ってしまった。どうすれば会える?」


どうすればマーガレットに会えるのか無能な私では答えが出せなかった。

だが、優秀な弟ならもしかしたら方歩を思いつくかもしれない。

兄として情けないが今の私にはプライドというものがなくなってしまっていた。


「・・・謝るのですか?」


「・・・ああ」


「マグーシュ領の環境は変わりつつあります。おそらくマーガレット様によるものでしょう。隣国の陛下にマグーシュ領への視察の承諾を得られるよう父上に相談して見ましょう」


「・・・頼む」


承諾は直ぐに得られた。

流石は弟だ。

王となるのは弟のような力が必要なのだろう。

私では・・・


視察員として向かうのは代表として私と新しく就任した文官長そして経理部門・税務部門の文官達とマーガレットに謝罪をすべき者達であった。

文官長は数日前に就任した者で今までの文官長男は現状の責任と辺境伯領で問題を起こしたため責任を取らせる形で辞職させる事となった。


隣国のマグーシュ領へと向かう。

マグーシュ領へ向かうには必ずマホーニー領を訪れなければいけない。

王宮の団体がマホーニー領内に入ると空気が変わった。

すれ違う領民から敵対心・猜疑心の眼差しで見られていた。

その眼差しは自国の王家の者に送るべきものではなく敵国に送るものであった。

マホーニー辺境伯と挨拶を交わし事情を話して通して貰ったが民から送られる視線は変わらない。

その答えがマホーニー辺境伯から渡された書状にある事も解った。


マホーニー領は既に国外となってしまっていた。

可笑しな事だ。

マホーニー領を通り過ぎマグーシュ領に入った方が空気が軽く感じられた。

そして、そのような状態を招いたのが私であった。

自領の姫が王宮で酷使された結果、見窄らしい女という不名誉な渾名を与えられ戻って来たのだ面白く思わないのは当たり前だ。

私は己の愚かさに唇を噛みしめマグーシュ公爵邸へと向かった。


(誰だ?)


マーガレットと婚約を結ぶ時、父上から『お前は知能が欠如している。そのため優秀な者を婚約者とした』と言われた。

私は父親から『お前は馬鹿だ』と言われた事が面白くなかった。

しかも辺境伯と田舎令嬢との婚約など気に食わなかった。

だから私は婚約者の顔見せの時に顔を出さなかった。

婚約者と会おうとしなかった。

婚約者の顔を見ようとしなかった。

なので私が知っているマーガレットは見窄らしい女であった。

しかし、目の前にいる令嬢は私の知るマーガレットではなかった。

ゴワゴワとした髪はさらさらと絹のように腰まで靡かせ、メッキのように薄汚れていた髪色は見事な金髪であった。

目のクマもなくなり、痩せ細っていた身体も健康的な身体へと変わっていた。

私の前に立つ令嬢は見窄らしいとはかけはなれた美しく麗しき令嬢が立っていた。

私は今になってマーガレットの真実を初めて見た。


(これが・・・本当のマーガレットなのか)


目の前にいる令嬢は何処から見ても美しき高貴な令嬢にしか見えなかった。

後悔という感情が様々なたらればとなって頭の中を駆け巡る。

おそらく私だけではなく一緒に訪れた者の皆が後悔した事だろう。

彼女が王妃となっていればアルオニ国の繁栄は間違いなかったと。

そして、その繁栄はもう戻る事はないのだ。

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