第35話 新しい身体とソフィー1
早速ルピナスのモジュールにやってきた私たちはイリスの2つ目の身体を特殊医療室にて調整することにした。
やることは単純でイリスの2つ目の身体をソフィー用に調整するだけだ。
イリスは銀髪赤目の身体を気に入って使用しているので、その対となっている銀髪金目の身体をソフィー用に使用する。
まぁぱっと見双子にしかみえなくなるけど。
「マスター。予備の身体を転送しますのでモジュール内の転送室でお受け取りください」
イリスがそう報告した直後、特殊医療室内に設置されている転送装置にイリスの予備の身体が現れた。
その身体をそっと受け取り抱きかかえると、そのまま医療ポッドまで運び内部で横たえる。
「次は転移装置をソフィーの空間に繋ぐだけだね」
さっそく転移装置の接続先を1つ増やす。
すでに彼女のいる地点には転移アンカーを設置しているのでこちらの装置と繋ぐことで向こうと行き来ができるようになる。
それに転移装置経由だと空間の狭間から漏れ出す不快感や環境の変化などを抑えることができる。
「座標は問題なさそうだな。次は接続開始っと」
「マスター? くるみちゃんから報告を聞いて戻ってまいりました。もう始めているんですね?」
「おや? さくらにくるみに雛菊。まだ向こうに居ていいのに」
不意に声を掛けられたので確認してみると、そこにはさくらとくるみと雛菊がいたのだ。
どうやら急いでこっちに来たらしい。
「向こうには鈴ちゃんと雛ちゃんがいるので大丈夫です。問題が起きれば雛菊ちゃんがすぐ向かいますし」
「はい、ご主人様。今のところエリーゼさんの容体に悪い変化はありません。明日には目覚めるはずです」
「そうか、それならよかった。マッシュさんも気が気じゃないだろうしね」
「はい。何度か様子を見に来られてその都度怒られていましたよ」
「ははは。それならそれでよかったよ。最悪な事態だけは避けられたようだし」
どうやらマッシュさんも元気になってくれているようだ。
やはり家族が無事なのが嬉しいのだろう。
「ただ、エリーゼさんは空間結晶との相性が良いらしく、今回のことである程度制御することができるようになりましたが同時に結晶を利用する能力を獲得してしまったようです。これは想定外でした」
「ふむ……」
どうやらエリーゼさんは身体を空間結晶に侵食された影響でこの世界にはない力を獲得してしまったようだ。
本来なら死ぬ運命を私が捻じ曲げ治療したせいで、耐性ができてしまったのだろう。
人体の神秘というべきかなんというべきか。
「となると、今後は私の方で様子を見る必要があるね。ふーむ。であるならソフィーの件もあるしちょうどいいのか」
「そういえばソフィーさんという方は過去の時代の方とのことでしたね」
「雛菊に聞いた話とソフィーの話を聞いた限りでは第二紀の人類のようだよ」
「そう……ですか……」
第二紀人類の話を聞いた雛菊は寂しそうにそう呟いた。
思い入れがあったのだろうか。
「じゃあ転移させるからこっちで受け入れよろしく」
「「はい」」
さくらと雛菊にサポートを任せ、私は転移装置経由でソフィーのいる結晶鉱山に転移した。
さっそく場内にいるソフィーの元へ向かい、簡単にこれからのことを説明する。
「やぁソフィー。これから私たちの艦のモジュールに君を連れていく。そこで新しい肉体を得ることになるわけだけど、大丈夫かい?」
場内に1人取り残されていたソフィーは私の姿を確認すると嬉しそうに駆け寄ってきた。
「お待ちしておりました。えぇ、問題ありません。ただその場合、この城はどうなるのでしょう……」
ソフィーはそう口にすると、場内を見回した。
「君が生きている限りそのままだよ。新しい身体でも問題なく力は使えるし、ここにも来られるから安心していい」
「それならよかったです。今は失われてしまいましたが、私の思い出でもありますので……」
「うん。それじゃあ行こうか」
「はい」
私がそっとソフィーに手を差し出すと、ソフィーは小さな手をそっと重ねてくれる。
そしてエスコートするようにゆっくりと歩きながらモジュールに繋がるポータルに向かって歩き出したのだ。




