第33話 ソフィーとイリスと怒られる詠春
ソフィーを迎え入れることを決定したところで本来なら城の中を探索しておきたいところなのだが、まずはハルさんに報告とソフィーの移動先の準備をしなければならない。
探索は後回しにした方が良いだろう。
「というわけでソフィー。少しここで待っていてくれるかな? 私たちは一度戻って色々準備をする必要があるから」
「わかりました」
「領域へのポータルは私が繋ぐから、くるみはさくらと雛菊に報告を頼む」
「まかせて」
そんなわけで今までの出来事をすべてさくらたちに共有することにした。
特に雛菊にとっては他人事ではないだろうしね。
「雛菊……? 雛菊といえば管理者様のお名前……」
「ん? ソフィー雛菊のことを知っているのかい? てっきり星界から出てきてないものとばかり思ってたけど」
意外なことにソフィーは雛菊を知っているらしい。
「私たちのいた時代には時々降りてきて色々とお手伝いをしてくれていました。詠春様は、雛菊様とどのようなご関係で……?」
「んー、雛菊は私の家族であり従者でもあるね。後でちゃんと紹介はするけど、私たちはちょっと特殊なんだ」
「なるほど……」
まだどう説明していいか悩んではいるけど、近いうちにこちら側になってしまったソフィーにはちゃんと教えてあげたいと思う。
「さて、次の問題はソフィーの仮の身体の調達だけど……」
「仮の身体、ですか? ご用意可能なのですか……?」
「あぁ、できるよ。まぁ結晶体はそのままに力と意識などの情報を移すだけだからね。ただし、それ相応の身体を用意する必要があるんだけど……。うーん、今すぐには材料が足りないからなぁ……」
「なんだか難しそうです……」
実際、空間結晶の情報も得たソフィーの情報をしっかり受け止められる身体を用意するのはそう難しいことではない。
問題となるのは素材が今すぐ用意できないというだけで……。
『話は聞かせていただきました』
「ん? イリス?」
ソフィー用の身体の素材について悩んでいるとイリスがこちらに声を掛けてきた。
珍しい。
『結晶生命体もいわば情報生命体です。つまり私たちと同類というわけです』
「んまぁそうとも言えるね」
『ですので、私の2つある身体のうち1つをソフィーさんに差し上げれば問題は解決するかと』
なんとイリスは自分の活動用の身体を提供すると言い出したのだ。
情報生命体であるイリスは肉体を持たない存在である。
なので私たちと一緒に活動する際には何かしらの入れ物が必要となる。
以前にイリスにはイリスの趣味でデザインした活動用の女性型の肉体を2つ用意していた。
そのうち1つを提供すると言い出したわけだ。
「いいのかい? どちらもお気に入りだったんじゃ?」
『ふふ、いいんです。もう1つの肉体はいわば私の分身であるわけで、それを使用したソフィーさんは私の妹という位置づけになると思うんです』
「そ、そうなのかなぁ……」
ややドヤっとした顔をしながらそう言い放つイリスのホログラフ。
まぁイリスがそう言うのなら後はこちらで調整すればいいだけなわけで。
「ソフィー? 同じような情報生命体のイリスって子が君の身体を提供したいって言ってるんだけど、受けるかい? イリスの趣味で作ったものだからソフィーの趣味には合わないかもしれないけど」
「い、頂けるんですか!?」
「あ、う、うん。もちろん別の身体も素材が揃えば作るから、とりあえずは」
「であれば、そちらで構いません。はぁ……。外に出られる日が来るなんて……」
ソフィーは感極まったのか、結晶体の身体からキラキラと光る結晶の涙を流した。
まるで水晶を粉にしたかのようなそれは、床面に落ちると光となって消えていってしまった。
『これで問題は1つ解決ですね。ところでマスター? 重要な技術者であるソフィーさんも迎え入れたわけですので、そろそろ目標を決めてはいかがでしょう? 現在のところ『いずれ帰る』以外の目標が設定されていませんよ? 当面は島の開発が目標のようですが、他に何をなさいますか?』
「あー……。考えてなかったな。とりあえず島の開発と結晶に覆われた大陸の正常化が1つの目標かな。あとはのんびりしつつ交流したり旅行したりかなぁ」
『相変わらず無計画ですね。そんなことじゃ色々な人に愛想を尽かされてしまいますよ? もっとちゃんと考えてくださいね』
「あ、はい……」
あまりにも行き当たりばったりに活動していたためイリスにがっつり叱られてしまった。
改めてちゃんと目標を考えてみようかな。




