第28話 森の異変を調査してみよう1
くるみたちの登録証が完成後、私たちはハルさんにお願いし結晶が見つかった場所に案内してもらうことになった。
「森狼は群れで行動する動物です。他の場所の狼に比べれば弱いほうですが登録したての戦闘経験も皆無な新人では餌食になってしまうこともあるでしょう。なので森狼を狩ることが1つの実力の目安となっているのです」
「ほう」
グレーメルの街を出てしばらく、森への道を歩いているときにハルさんからそのような話を聞くことができた。
「詠春様たちは特に依頼受注の際に断られたりはしなかったですよね?」
「そうですね、言われてみれば」
ハルさんの言葉を聞いてふと思い返してみるが特に断られたようなことはなかった。
「そもそも詠春様が新人というのが私は信じられないんです。まるで歴戦の戦士のような落ち着いた雰囲気を醸し出していますので」
「そうだろうか?」
たしかに戦歴はある程度あるとは思うが……。
「あら当然じゃない。うちの詠春は今は事情があって力を出せないけど本当はすごく強いのよ」
「まー、あたしが100年挑んでも未だに勝ててないんだから当然茶当然だな」
「詠春お兄ちゃんはお父さんにも負けないんですよ!」
「そうなのですね。頼もしい限りです。ところで狐耳のお嬢さん以外の子たちは【鬼人族】でいいのでしょうか?」
ハルさんは桔梗たちの姿形を見ながらそのような疑問を口にする。
「そういえば登録証にはどう出たんだい?」
「妖鬼族って出てるぞ」
「私も見てもいいでしょうか?」
「おう、いいぞ」
そう言って見せてくれた登録証の種族欄には妖鬼族との記載があった。
ちなみに年齢は117歳である。
「私はこんな感じ~」
同じように椿も見せてくれたがやはり種族は同じのようだ。
ちなみに年齢は10歳となっている。
椿とは100歳違いの姉妹だから当然といえば当然か。
なお、スキル系はこちらでの情報がないのでまだ登録できていないようだった。
後程スキル情報の関係を整備しておこうと思う。
何分この世界にはない概念が多いので……。
「妖鬼族、ですか。知らない種族ですね」
登録された情報を見ながらハルさんはそんな言葉を口にした。
まぁ妖鬼ってのがいないのは確かだろうしね。
「鬼人族って角生えてます?」
「鬼人族ですか? はい。人型の亜人族で額や頭部に角が生えていますね」
「ならそれに近い種族って考えてくれればいいです」
「なるほど」
ちなみに桔梗にも椿にも額から上に向かって乳白色の角が生えている。
そういえば組合では角が生えている人は見なかった気がするな。
「鬼人族ってのがどうかはわからねえけど、それでいいぜ。あたしらは細かいことは気にしねえんだ。あ、でも鬼の物を盗んだら容赦はしねえけどよ」
「妖鬼族は自分が宝だと思ったものを守る癖みたいなのがあるんです。とはいえお姉ちゃんはあまり物に執着したりはしないんですけど」
「まぁ要らねえものがほとんどだしな」
そんな言葉を口にする桔梗を椿ちゃんはにこにことした笑顔で見ていた。
なお妖種は0歳から200歳まではまだ子供という扱いとなっている。
なので桔梗もまだまだ子供というのが現状だ。
「それにしても姉妹なのに年齢差がすごいんですね。桔梗さんは117歳……。これ、本当なんですか? そうは見えませんけど」
「たしかに見た目は若々しいですからね」
「おう。間違ってないぜ」
「このバカな鬼は17歳のころから詠春に付き纏ってるのよ。いい迷惑よ」
「んだとおおお!?」
「ふふ。おモテになるんですね」
ちなみにくるみの年齢も表記上は14となっているが実際は嘘なので気にしてはいけない。
そんなことを話しつつもりへと到着。
森の手前には依然居たような森狼の姿は見られなかった。
そもそも狼が街道に出てくること自体おかしい気はするんだけど。
「森狼の生息域って大体どのあたりなんですか?」
「森狼は普段森の中腹くらいに棲息しています。何かに追われたり食料が足りなくなった時は浅瀬や街道に出てくることがあります。最近までは街道付近まで餌を求めて出てくる森狼が増えていたようです」
「なるほど。それで以前森狼の討伐依頼がでていたのですね」
「はい。本来は森の外に出てくる個体は多くはないのです。森狼の目的はほとんどが食料なので食料を持っていたら投棄して速やかに離れるという回避方法もあります」
どうやら私たちが討伐していた時点で問題が起きていたらしい。
その原因が空間結晶であった場合、私たち以外には解決することは出来ないだろう。
そんなことを考えながら移動していると、緑色の小鬼のような存在と戦う探索者のグループを見つけた。
どうやらこの森にはゴブリンのような存在もいるらしい。




