第29話 森の異変を調査してみよう2
ゴブリンのような生き物と戦っている探索者のグループを見ながら森の中へと移動していく。
森の面積は結構広いようで、遠くにほかの探索者の気配を感じることもできた。
「この森は薬師が使う薬草も多く生えている関係で採集依頼なんかも結構あるんです。まぁ小鬼や犬頭、森狼や一角兎などの敵対種族も存在していますけど」
「その小鬼ってさっき見た緑色の生物ですか?」
「えぇ、そうです。こっちの言葉ではゴブリンと言いますが、私たちの地方では小鬼と呼んでます」
「ほう」
ゴブリンにも色々な呼び方があるようで、ハルさんの地方では小鬼呼びが主流のようだ。
「でもなんかな~。あいつらどっちかって言うと餓鬼だろ。見た目そのまんまだぞ」
「まぁそうだね。もしかすると餓鬼の転生先がゴブリンなのかもしれないね」
「だとしたら笑えない話だけどな」
どうやら桔梗はゴブリンを小鬼呼ばわりすることに抵抗があるようだ。
まぁこの辺りは種族のプライドのようなものかもしれない。
「そういえば桔梗さんと椿さんとくるみさんはどの程度戦えるのですか?」
「ん? あたしか?」
不意にハルさんが3人に話を振った。
どうやら戦闘力が気になるようだ。
「ん~、どうやって示すかな~」
「その辺りの石ころでも砕いてみればいいんじゃないかな?」
「お、それはいいな。椿はあたしほどはできねえし、実際に戦った時が一番いいかもしれないな。くるみは遠距離が基本だからなぁ」
「私は別に戦えない枠でもいいわよ? 前衛じゃないし」
「私は槍とか剣とか好きですね。お姉ちゃんは金棒ですけど」
「おうよ。ミンチにしてやるよ」
「あはは……。やはり実力を見せてもらわなくて大丈夫そうです」
「ん? そうか? まぁ戦うときになったら戦えばいいか」
「それでお願いします」
自信満々なセリフから何かを感じ取ったのだろう、ハルさんは確認することをやめたようだ。
「じゃあとりあえず敵を見つけたら叩いて良いのよね? 今はダメとかある?」
「特にはありませんね。件の巣穴まではもう少し先ですので見かけたら倒してしまって構いませんよ」
「ん~。じゃあ早速通りかかりそうなやつがいるから仕留めてくるわ」
「えっ?」
言うや否や、桔梗はその場からあっという間に姿を消し、少し後「ゲギャーーーーー!!」という醜い断末魔の悲鳴が響き渡った。
そしてーー。
「ほれ、これでいいだろ?」
桔梗は手に頭の潰れたゴブリンを持って戻ってきたのだ。
脳漿と血に塗れたその光景はさすがのハルさんでも目を逸らすほどだったらしい。
「えっと、その、何と言いますか、じ、実力はよくわかりました……」
「あん?」
「お姉ちゃん。金棒で潰したら倒した証明も手に入らないんじゃない? ちょっとお父さんのやり方の真似しすぎだよ?」
「ん~、そっか。んじゃあ潰さないように心がけて戦うことにするわ」
「うん、お願いね。あとそのゴブリンはばっちいから捨てて。詠春お兄ちゃん、このゴブリン処理できる?」
「あぁ、任せてくれ」
「んじゃここおいとくからやってくれ」
流れるように潰されたゴブリンの処理が決まっていく。
そんな様子を呆れた目で見つめるくるみと、何がなんだかわからないといった顔をしてみているハルさんがいた。
さっそく桔梗が地面に置いたゴブリンに手を翳し、インベントリの死体欄に収納。
その後廃棄を行う。
他から見ると手を翳しただけでゴブリンが光の粒子になって消えていくように見えるはずだ。
「えっ!? い、今の何です!? 小鬼の死体が光の粒になって消えていったんですけど!?」
さすがのハルさんでもキャパオーバーだったらしい。
なので軽く説明することに。
「今のは私独自が持っているインベントリという名の特殊な倉庫にゴブリンの死体を移したんです。その後廃棄処理をしたという感じです」
「い、いんべんとり……。廃棄……」
さすがに色々と畳みかけてしまったせいか、ハルさんが片手をこめかみに当てて目を閉じてしまった。
なんかごめんなさい。
「詠春も桔梗も見せるならちょっとずつ見せなさいよ。この世界の常識を考えてあげて」
「「はい……」」
「もうお姉ちゃんったら」
くるみと椿ちゃんにしっかり怒られてしまったのでした。
ちなみにハルさんはまだ思考の彼方へ旅立ったままのようである。




