第25話 桔梗たちとの建築相談と新しい従者
小さいけど自由に扱える領域を見て大はしゃぎする桔梗。
そんな姉の姿を残念そうに見つめるのは妹である椿である。
「姉がごめんなさい。今はあんな感じなんですけど普段はもっと凛々しくて格好良くて優しいんですよ」
すまなそうに深々と頭を下げてくる椿を見ていると、なんだか桔梗がかわいそうな子のように思えてくる。
一応付き合いは長いので実力も知ってはいるんだけど。
「まぁ大丈夫だよ。それより桔梗。ここの木も切っていいから材料集めるよ。島よりたくさん生えているはずだからね」
「おっ、そうだなー! さっさと家作っちまおうぜ!」
そんなわけで早速こちらにも鬼の増員がやってきて木の伐採を始める。
一応世界設定では他の世界よりも植物の成長が早くなるようにしてある。
切ったら植樹は必要だけどね。
「じゃあ次はさくらのための農場も準備しますかね」
「さくらちゃんの農場かぁ。さくらちゃんいっつもお野菜くれるんだよね」
「まるで田舎のばあちゃんみてえだよな」
「それ本人の前で言ってみてよ」
「やめろ、怖いだろ」
桔梗と椿は本当に仲の良い姉妹だ。
ちなみにさくらの基準では桔梗は敵で、椿は妹に設定されているらしい。
「まぁまださくらは帰ってこないから安心して続けてくれていいよ。さて、いい感じの土地を見つけておきますかね」
というわけでお次はたくさん土地を必要とするさくらのための農場の準備だ。
島内にもあるのだが敷地が限られているのであまり拡大することができない。
しかしこの場所ならいくら使ってもすぐに無くなることはない。
他にも島内には設置できない施設もこちらに置いておくといいだろう。
作業のほぼすべてをほかの鬼たちに任せつつ、私たちは森を抜け平原を歩くことにした。
空は青空が広がっており恒星も1つだけ輝いている。
この空も恒星も島で見られるものと同じものだ。
ここは拡張された島の領域でしかないのだから。
「ずいぶん広い場所だよな。ここは別の世界か何かなのか?」
だだっ広い平原を歩きながら桔梗が口にする。
「ここは島の拡張領域だよ。動植物は地球の生き物をコピーするしかなかったけど基本的には空も恒星も海も島のある領域と同じものだよ」
「へぇ~。んじゃそのうち動物も増えるのか?」
「そうだね。人間たちは制限しているけど動物たちは制限していないから勝手に迷い込んでよさげな場所を見つけて棲み付いて繁殖するかもしれないね」
そんなことを話していると空を鳥たちが飛んでいく姿が見えた。
少なくとも私が知る限りでは地球にいる動物もこちらの世界にいる動物も大きな差はない。
鳩や烏もいればネズミや猫、犬や狐、狼や兎などもそのままだからだ。
最初に持ち込んだ子たちが地球の子だったからというのもあるだろう。
しばらく平原を歩き、ある程度の広さを確かめるとその場所に目印を立てて場所を記録する。
何か所か同じことを繰り返すと端末のメモにさくら農場と書き込む。
「さくらのやつは農場主か何かなのか?」
「まぁ似たようなものだよ。さくらはあれでいて農場では配下を呼び出して大規模栽培とかしているからね」
ほかにも雛の工房や鈴の研究所、雛菊の診療所兼食堂なんかも用意する必要がある。
「あいつら贅沢してんだな」
「いつも頑張ってくれているからね。こちらで出来ることは出来るだけしてあげているだけさ」
「詠春お兄ちゃんえらい!」
「ありがとう、椿ちゃん」
「んで、ここにも建物を建てるんだろ?」
「うん。あとでさくらたちに聞くしかないけどね。ついでだからもう1人従者呼び出してしまうか」
「ん?誰を呼び出すんだ?」
桔梗と施設の建築相談をしていると、ふともう1人呼び出しておく必要がある従者のことを思い出した。
「くるみだよ」
「くるみちゃん!!」
くるみと聞いて目を輝かせる椿ちゃん。
「【アクセス デュオ クリエイトポータル】 おいで、くるみ」
さくらたちの時と同じように言葉を口にし、指をパチンと鳴らす。
すると目の前に小さな黒い穴が開き、その中から小さな手が伸びてくる。
やがてそれは全身をこちらに出し、怒ったような目つきで私を睨んだ。
小柄な金髪エメラルド色の瞳の髪の長い美少女狐娘、クルミだ。
「バカ詠春。どれだけ心配かけるのよ!」
そんな美少女くるみの最初の言葉は罵倒だった。




