表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/85

79話

ミラテル嬢と師匠を通じての魔術関連の調査と修学。

俺の中の知識量としては十分な成果なのだが、依頼の本質の方面では余り良い状況とは言えない感じに。

それは、俺が翻訳教本を作って解析した曾祖父の個人情報が存外にヤバ過ぎる内容だったせいで。


どうにも、俺が仮定した遺跡の儀式魔術の改造の事がかなり正解に近いのでは。また、その改造による悪影響が想定より深刻なのでは?

そんな感じの推測に落ち着いていったようなので。


ミラテル嬢の解析スタッフの結論としては、魔物を湧かす遺跡の本質は魔王の魔力を元にこの世界から敵対されない変質化を遂げさせた魔物の生成ではないか、というもの。

それは半分偶然ながら、俺がトウテツの壺を通して得た情報から出た答えだった。

「魔物の生成」といったキーワードから質問し検索した結果だったんだがな。

細かい解析データは無かったが、儀式魔術の概要を説明したら、「それも機能としては私のものと同質です」とあっさり回答が得られたので。


推測としては、遺跡が太古の都市だった場合、元々は魔素の集まりやすい土地が選ばれる事は必然としても、その利点が捨てられ廃墟化しているのが不自然という事。

なんでも魔素濃度の高い土地はあらゆる意味で生活基盤を置きやすい。それは魔術系の知識が無くても「作物が健康に育ちやすい」や「疲れ難くないで活力を感じやすい」な体感性でも感じられるからだとか。

そんな土地を放棄する理由は、例え戦乱や災害があっても一時的なもので終わる筈なのだという話で。


それなのに廃墟となっている。

そうなる理由が有るとするならば、その土地に戻れない理由が有る筈なのだから。

または、戻らない選択後に新たな変化が有ったとなる。


そして当時の状況を知るモノの答えとしては、其処が封地化したのでは……と言うものであった。


当然、次の質問は「封地とは?」になる。

すると「最も可能性の高いものは」と前もっての内容として……魔王の墳墓という答えがきた。


墳墓の意味はそのままのものだ。

その地に魔王が埋葬された。元々絶えず世界全体から敵対される対象なのだから、当然、何人もの魔王が討伐され、処理される歴史も有る訳で。

しかもだ。魔王の肉体は死んでも魔力の塊として永く存在する事が多いのだとか。余りに魔力的な異質っぷりが仇となり、腐敗すら許されずの亡骸と化すのだそうで。


わざわざ手間のかかる魔力属性の変換処置も混ぜての魔物の生成となると、根源となる魔力の異質さを変える必要が有る証拠なのだと。


ふむ、とつい納得しかけた俺だったが、其処に「おかしい」と茶々を入れたのは師匠だった。

クス代の出した仮説だと、その遺跡は其の場所だけで完結する魔術回路になる。

なら何故、其処と魔導国の、しかもミラテルとの魔力のラインが繋がっているのか……という話になる。

少なくとも、変質化した魔力を繋げて送る工程が必要な、何かの要素が足りてない。

……と、其処まで語って、師匠が思考の海に潜った。

と言うか、いきなり妙に顔色が悪くなった。


暫くそうしてた師匠が復活すると、今度は俺への「特別授業をするよ」の宣言。

何故か、全ての作業を中断して地下工房へと連れ戻される流れに。


やらされた内容は魔道具の作成。

作る物は何でもいい。ただし、遠隔操作性と大量に動作魔力を必要とする燃費の悪い物と、不思議な注文だけはつけられた。

ではと少し悩んでみて……、作成したのは魔力を流す間だけ機能する通信機。

いわゆる現代知識チート定番のアイテムで、文化レベルが低ければ世界が広いといった理由をチャラにする情報伝達ツールとなる。

個人間での繋がりだけでなく、保有魔力が高いといった制限さえクリアすれば誰でも使えるという物だ。

最近、遠出で長期間連絡の取れない相手も増えたので、緩和用に創ってみましたな精神で。


実機提出をすれば「丁度良い」と喜ばれたが、ここまでしても師匠が何をしたいのかがいまいち謎な。

しかも、実動テストを何度も何度もやらされてる内に、何故かミラテル嬢までが登場したり。

「私が呼んだ」と師匠には言われたが、いや、その理由が判らんとですたい。

すると、「じゃあ、その通信魔道具を使って、今度は流す魔力の進む波を見てみな」と謎の指示が。


……魔力の波、か。

いやまぁ、それは今言われてもな感じだ。

元々何度も魔力充填の行為はしているし。目に見てな感覚では無いが圧が移動する感じは前から知っている。

そう言うと、「じゃあ、その感覚で御令嬢の魔力の出入りを感じてごらん」と、これまた謎の指示を貰って……、

……え?


魔力の、「出入り」?


ミラテル嬢から伸びる魔力のライン。

どのラインも圧としては流れの強い水道管のような感じで……、あれ?

大半のラインは彼女へとの入力の流れ。しかし、よくよく注目するとそれを同数レベルが彼女を起点に出力されているラインも有る。

ただし、その方向は全て真下だ。

出力も漏れ出ている程度の弱さなんで、完全に見落としていた要素。

そして此方は、もう完璧に俺の見落としだ。

彼女の足下、その地下から迫り出した魔力太いラインが彼女を分岐点の始まりとして噴水のように上空へと伸びていっている。

それも、ギリギリで彼女に接しない感じで。

その流れをMAPも動員して追ってみれば……、それは軽く探知範囲を超えていて……、しかし、今までの経験からして何処かの地方の遺跡へと続いているのは確実な気がした。


観察内容に慣れたせいか、よく詳しい分別ができてきた。

彼女に集約する魔力のラインの内、彼女を経由する流れは一割も無い。大半は彼女に集まりつつも寸前で避けて地下へと続いている。しかも半分は出力方向。

つまりも最終的な魔力の終端はミラテル嬢では無いという証明になる。


……これは……実に大きな、前提情報の間違いになる。

今までの行動が全て無駄な感じの。

完全に徒労だったな、感じの。


それでも、正確な情報を伝えない理由は無いのでありのままに。

対して、ミラテル嬢は単なる驚きを返して来たが、師匠は「やっばりね」と変に納得させる結果になった。


師匠だけが知っている情報が欠けてると。

当然、俺は疑問の答えを聞くわけで……、ただし、後になって聞かなきゃ良かったと嘆くのが必至なものを知る事になった訳だが。


完結に言おう。


魔導国。

アビラヒ魔導国の初代、建国の王は魔王だった。

そして今のこの地は、初代の亡骸を封印した巨大な墳墓でもあるのだそうだ。



まぁ、開いた口が塞がらない。


この爆弾発言は、実は人柱経験者の御年輩なら大体は知っている魔導国の真実の一つだそうで。

そもそも、人柱を用意してまで大量の魔力を集める最大の理由が、魔王の亡骸を封印するためのものなのだとか。


初代の王は、結果的に魔王にはなったが生前は俺のように慎重に行動する異世界人だったそうで。

魔術の研鑽に貢献しつつで役二千年、在位した後に入没。

ただし、それは人としての意識を磨り減らして生きる屍と化してのものだったそうだ。

……まぁ、人間の意識がそう長く保てない感じの想像はできる。人としての動物性を維持できるのだって30年前後で枯れるようだし。意識や精神だって人にとっちゃ生理現象なのだし、それが枯れたら気持ちも枯れるだろうな。


……老害化した魔王か……。

うん、絶対に害悪だこれ。


精神が壊れる前に自分で創った封印に収まった初代王は、後の世代に自身の完全消滅を命じたそうで。

それが、人柱の塔であり……おそらくは、各地に存在する遺跡なのではと。

どうも師匠も、魔導国の都市外の情報には疎いようで。

ただし、わざわざ魔力の流れを確立させている事から可能性は高いとは思う。


つまり、各地の遺跡は魔王化した初代の魔力を害少なく消費させる機構な訳だ。

魔物を生むのは……、生物化させる事で寿命も与え、被害性を蓄積しないためとかか?

素材として有益なら討伐もされるだろうし。

また魔物となれば危険性も有る訳で、都市から離した位置になのも配慮と感じないでもないか。

其処が後々、どこぞの木っ端貴族の領地化するのは想定外と。


……となるとだ。

その機能をある意味逆転させて、ミラテルへと集約させる改造をしたって言うのは……、実は結構拙いんじゃないかね?

実際、余りに近い距離のせいか、ミラテル嬢が終点にならず、その魔力が本体である初代王へと帰っているのはラインの流れで確実だろうし。



意外な繋がりで随分とヤバい推測が出てしまった。

しかもだ、図らずもその機構を一部分でも壊したのが俺だったり。

こりゃちょっと静観できる内容でも無かろうと、その場で「今から非常事態だと思って動くよ」の師匠の言葉には誰も反論できないのだと理解する。


そしてこの日から、ミラテル嬢は再び人柱へと常駐するのが誰とも無くに決められた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ