73話
よく、どんなに飼い慣らされようとも野生に生きるものは野生を忘れない等な話を聞く。だが其れもピンキリだろうと言うのか俺の持論。
素の野生が合理的を極めて、食うための労力意外は寝て過ごす野生は……、労力が要らないまま寝てられる状況になれば簡単にその社会を受け入れる。
ネコ科の場合は狩りと遊びが本能の同じ範疇に組まれてるせいで、其処を勘違いする観察者も多いのだが。
またイヌ科でも子共の頃なら行動はネコ科とそう変わらない。
まして餌や食事は飼い主から貰うものという意識が根ざせば、例え狩りで獲物を自給できていたとしても、「ご飯は?」と普通に聞いてくるようになったりならなかったり……な。
要するに、クロマニャオン奴隷商会を潜伏地にして三日も経つと、ポメ獣人の飼い慣らしは完了した。
フィンカを頂点とした群れの意識も完成したようで、特に躾を意識しなくても勝手に上位者の様子を見て行動する空気になっていた。
そして……そんな新社会の異端になる筈の本来の経営者は……味覚洗脳が十分過ぎる成果を出して、堕落の権化と化してたり。
まぁ、依頼者の脱線方面の依頼内容には特に問題無い状況のようで。
連れ帰る算段はいまだに着いて無いが……、向こうでは既に契約系の問題は解消してるようだった。
流石は貴族。黒めの面倒の漂白はお手の物。
とは言え、そっちは二次案件なので正直、成果云々はどうでもいい。
まずはトポックの都市情報。
俺が此処を拠点としたのを、単なる新人の余所者が増えた程度な感じに受け取られたようで、奴隷需要の調査をな体裁で徘徊する分には無警戒で行動できた。
と言うよりも、正規の商人は貴族の息がかかってる都合上扱えず、非合法の商人なら多少でも怪しいのは許容範囲な感じらしい。
むしろ、そういった連中に金銭的な旨味をケチらない主義で成り立っているともな。
名も知らぬ前文明由来の地下施設を再利用した都市、そんな情報自体には追加できる情報はほぽ無し。
ただ住人の推測から、地上に多い大型の魔物を避けた交通網として地下通路が整備され、当時の各都市、今なら遺跡を結んでいるな感じらしい。
しかし其れを記した地図は有るものの、やはり住人の経験からのもので隠し通路などの抜けは多い。
この数日の俺の行動は、そんな通路の確認だけに費やしていた。
ただ、遺跡に直に繋がっている通路ってのは便利なもので。
フィンカ軍曹の新兵教育期間の間に新たに一つ、儀式魔術を置いた遺跡の発見、解除の成功を果たしてたりもしていたり。
内容はヒドラに準じた魔物を産む機能の遺跡。
今回はスライム。最近知名度の上がったファンタジー王道のじゃなくて、物理で殴れる和製の方で有名なグミ玉の感じの方だった。
ただ巨大なだけなので、叩いて砕いて核を露出させたら終わりである。
素材としては見事にゼラチン。しかも動物性の臭みが皆無か寒天に近い品質のゼラチン。
如何にも、子共が喜ぶ菓子を作れとばかりな素材だった。
残念な事に、プニプニの食感を活かした菓子類は子共には受けが悪かった。
流石は獣人か、歯ごたえのある物の方が良いらしい。
逆に、エイギーの方を一発で堕としたと言うか。
甘露付けの果物のゼリーだったしなぁ。女性にストライクな物と言えばそうだった。
反応は心身共に従順化してるが、其処はほぼ最初からなので信用の条件にはしていない。少なくとも、ポメ達の売買が完了するまでは拘束状態を維持はしておく。
地図と地理の情報が得られたので魔導国への移動経路も判明したし。
ミラテル側は買い取り要員が移送手段付きで来る算段がもう実行中だそうで。
予定では片道三週間。
とりあえず、その間は此処を拠点に動くのも決定した感じであったり。
更に三日が過ぎて、もう一つ遺跡を発見した。
これも魔物を湧かすタイプで、そのため当初の儀式魔術の予想が的外れ側に傾く事となる。
しかし其れが新たな疑問の元にもなる。
この地方には単体で活動する大型の魔物が多い。その情報の根源が其れじゃな懸念が出たからだ。
自然発生でではなく魔術の結果としてが伝承化したなら、少し問題が複雑になるし。
なにせこの遺跡が誕生した頃から儀式魔術が機能していた証拠にもなるからだ。
……そうなると、ミラテルのために施された儀式魔術だという前提も怪しくなるし。
ミラテルは見た目通りの年齢では無いが、まだ時代を無視した程の年月を生きたとは言えない。
そして彼女の曾祖父がこの魔術を施した時期が果たして何時だったのかと言う疑問も生まれた。
……少なくとも、彼女のために魔術を準備したという説明は成り立たないな。
時代が完全に合わない。
辻褄を合わせるために、とりあえずな整合性を求めるとすると……、元々存在していた儀式魔術をミラテル用に改造した?
そんなところが妥当な気もする。
そうすると、可能性としては全ての儀式魔術がミラテルに関係するな仮定は成立しなくなる場合も有るか?
本来の魔術の効果を変質化した一部がミラテル嬢に作用している。
それが今まで調査観察した遺跡の様相に出ている……といった可能性。
この思いつきを裏付ける調査結果は……、実は出ているな。
多分、魔石が置かれている物は全てが其れ。
逆に魔物の出る場所は、元々の状態を維持しているのでは。
……どうだろう、この仮説?
意識越しに依頼主にも伝えてみる。
今のところ、どの遺跡を潰してもその結果はミラテルに届いてはいない。
結果が出ていない以上、根拠はゼロに等しいものでもあるんだが。
ただ、向こうでも悩んでいる感じは伝わって来ているか。
そして、そんな伝達をした翌日に一時帰還の指示が来た。
どうやら、向こうの曾祖父に関する資料を一度洗い直すらしい。
今度は前より調査情報も増えたし、何か新しい発見も有りそうな、な予想をしたそうで。
手当たり次第に魔力のラインを追う手段は終わらせないものの、少しは効率性を高めた内容に切り替えるかもな方針となるらしい。
……と言うか、な。
もしも既存の、手付かずの儀式魔術諸共に潰す方向の場合に起きる心配が増えたらしい。
何か別の問題を生む可能性でも見つけたかね?
其処は此方では判別できない部分だし。
そんな訳で、ポメ獣人回収に合わせた帰還が決まり、俺たちは一時の観光的に、この都市で休暇っぽい日々を過ごせてたりしたのだったり。




