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71話

フィンカに問うてみた。「あの獣人たちに気付かれずに様子確認ができないか」と。

「無理」と簡潔に答えが来た。


今回は隠し扉の構造的な作用で感知されていないが、本来ならどんな形であれ五感で感じ取れる距離で獣人以上に誰かを感知するのは無理だそうで。

遠回しに俺のチートな探知能力が賞賛されてるのは……なんとなく伝わる答え。

と言うか、単純に高性能が尊ばれる気風だそうで。

其処を人外の域と怯えないのが人間とは違う感性の部分と。


結局のところ、俺も隠し扉を開放しないと其れ以上の情報は得られそうもないので素直に行動する方向で。


そうして、いざ対面となってみたら……

『きゃーーーーーーーっ』っと脳内に歓喜の大絶叫が轟いて、そっちの方で一瞬意識を持って行かれかけたり。

大事な場面でまさかの誤射(フレンドリファイヤ)とは。

……いや、殉職の何割かは確かに其れなんだけども。


だがまぁ、この現場を見たらの反応としては……理解できないものでもないので。

反射的な怒りは湧いても、呆れの方が直ぐに強くなる。


俺の膝丈の毛玉の群れ。

其れぞれがか細いアクセサリのような鎖で繋がれてるのは、拘束と言うよりは無秩序な拡散を防ごうな枷で。

より具体的に言うと、保育園の三歳児の群れの統率が基本的に不可能な其れと同じ原理なやつ。


あれー?


獣人って基本フィンカの同類と思ってたんだが。

愛玩性は高くても中身には野生の暴力が満ちた……、狼を犬に堕としたような物。


しかし、この毛玉たちは。

野生は何処に?

二足歩行のポメランアンの群れにはどーやっても其れが見えないんだけど?


わいわいキヤーキヤーと、突然現れた俺たちに警戒心皆無の突進。

そしてリード……もとい、鎖の限界に遮られてピーンと跳ねて床に落ちる。

繰り返し繰り返し、止まんねー。

その内それが楽しくなったのか、ターゲットが俺たちから外れて無秩序な突進プレイも始まったようで。


本当に、……自由奔放が体現したような群れだった。


その状況はとりあえず置き、自分で此処の環境面を見れた事で安心した部分。

獣人の子等が無邪気全開のように、監禁とは少し違うようなところ。

似た雰囲気だと日本のペットショップそのものの様。

壁際に設えられた、カプセルホテルが如しのケージ連。

今は全員其処から出され、飛び越えられない高さの囲いの中で遊びの時間のようで。

其れで尚、移動制限の鎖付きなのがどれだけ自由だ、このガキ共の印象を抱かせる。


腹減ったの経緯は単純の飯の時間の都合らしい。

部屋の一角には簡易でも厨房のようなものが設置してあり、大量の皿やら椀が積まれている。これで食事が出されてなかったとしたら、此処の設備の責任者は鬼畜としか言いようがないだろう。

と言うか。

どう見ても犬系の獣人なら満腹中枢自体が壊れていても納得なので。

飼い主が栄養管理しなかったら、あっという間に栄養の過剰摂取で逆に栄養失調を起こして早世する。

愛玩としての犬は、そんなレベルで飼育の面倒な動物なのだし。


……いやいやいや、違う、違う。

獣人だった。ポメではない。

……行動パターンがまんまだったので半分本気で勘違いしてた。



そしてまあ、ポメ獣人等に圧倒されて別の存在が居る事を完全に見逃していた。

と言うか、ポメに埋もれてたので。

群がられてた、と言うのが正解か。

毛玉の掛け布団で「至福!」と言う表情を満面に浮かべた人間種の女性。

一目で[駄目な人]と判る表情過ぎて、たぶんポメ等がこっちに反応するまで自我すら手放してたのが丸わかり。それじゃ流石にMAPに反応させるのも難しい。

だって、人間としての思考すら捨ててたと思われるし。


いや訂正。


横たわりから上半身を起こして此方を見てる様子から、いまだに精神は返ってきてねーですよ、この人。


……まぁ、それも幸いかなぁと。

ポメにまとわり憑かれながらも女性を確保。簡易の拘束の後、後から他の人間か来ないかを警戒しつつの一休みとした。


ああ、ポメ等は簡単に、ホーンラビットの唐揚げの塔を見せたら懐柔できた。

洋犬に忠実性を求めたらいかん。

十数世紀を従属の命として改良された動物は、主人が誰であれ同じ種族であれば従う対象なのだからして。


……いやいや、違う、違う。


いかんなぁ、俺も本当のポメとポメ獣人との勘違いが抜けない。

と言うか、行動が似過ぎていて撹乱されまくる。


……ちなみに、興味対象には全力突進の性質がフィンカの第一印象的には最悪だったのか、現状から逃亡し、絶えず室内の物陰から此方を伺う警戒が止まらない。

時に俺の頭上にすら貼り付くのは止めなさい。

折れはしないが捻りの衝撃は首の負担として過剰。

急に視界がぶれさせられると、流石に一瞬意識が飛びかけるから。


確認の途中でこの部屋の表を見て看板を発見。

俺の読める文字で[クロマニャオン奴隷商会]と書かれており、「ああ、ペットショップじゃなかったんだ」と今更に納得。

店内を見たらその納得も一瞬で吹き飛ぶのではあるが。


唐揚げ天国に狂乱するわん子共に奴隷の言葉から来る悲壮感など欠片も無い事実。

……と、食欲には負けたのかフィンカもいつの間にかに混ざっている。

可愛い我が子も居るならと、ついマヨを追加したら狂乱度が数段階シフトアップしたようで。

まぁ、戦争状態ではあるがある意味平和の象徴な気もするので。唐揚げの塔をもう一つ置いて店内探索に戻る俺。


肝心の店長はいまだに、妄想の国から帰還してない。



さて、探索の結果。

案外と周辺情報は手に入った。

地図の入手は大きい成果か。それでこの町が地下の築かれた隠れ里の一つなのが判明したし。

[トポック]、それが此処の町の名だ。

隠れ里と称したように、魔導国から与えられた貴族の領地といった制約とは無縁の秩序で動いている。

住人の大半は元難民。他領に逃げられ無かった連中の拠点にして……言っても良いのか、レジスタンスの性質を内包する集団の支配地でもある。


現支配体制への反抗組織とは言え、ヤバ目の思想には取り憑かれて無さそうなのは一安心。単に課税的に共存できなかったための離反のようで。

極論、支配者がちゃんと管理能力のある者なら温和しく従う雰囲気ですらあるようだ。


払えない税を徴収しようとして領民を虐げるのが楽しいとか……、ちょっと救いようもなく歪んだ思考に偏ってるようで。

ちなみに此処らの支配者はまた別の御貴族様。[ゲスハラー男爵]と。似合いすぎの名で忘れようがないインパクト。


補間情報としては……、ええと、「先々代の戦争功績で騎士から貴族位へ。しかし続く世代がただの穀潰しで魔力無し。先々代の永眠を機にこの地へ移動させられた」……と。

つまり、魔導国に貢献した当人はもう居ないから、何時この世から消滅しても誰も困らない対象と。


はい、以後の行動への制限が無いのは良いことで。


地理的な情報としては、元々この地には魔導国以前の小国が乱立してた場所らしい。焦土作戦で滅びた都市も山程有るので、その遺跡の跡地を土台に新たな都市が造られるのも珍しくないそうで。

砦や神殿の遺跡が多い理由の一つらしい。

ここらの貴族も余所の土地から無理矢理移動させられたのが大半なので、地理に明るいのは極一部の者のみ。

だからこうして、隠れ里が埋もれた太古の交通網を復活させた独自のコミュニティも成立しやすいのだとか。


ふむ、なるほど。


とりあえず、敵対前提でいなくて良い場所なのが判ったのは嬉しい。

問題は……何時になったら交渉相手が起きるかだなぁ。


幸せそうな失神顔の推定、店長の女を見つつの感想。


あと、いつの間にか消失していた二つの肉の塔だった大皿から此方に、なお足りなそうな餓えの視線を向けてくるガキ共と視線を合わせての感想。


其処にフィンカが混じってるとなると完敗確定なので、更にひと皿を追加しておく。

今度は秘蔵の、酒の肴用にと取っといた竜田揚げ仕様のやつ。

「かりかりチャブチャブ」と暴力的な咀嚼音を上げる子供らに、俺の腹も反応して「ぐぅ」と鳴く始末であったり。




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