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69話

哀れな御本尊はとりあえず置いといて。

祭壇の一部である周辺の方も確認。

供物の成れの果て。砂埃で判別が難しい魔法陣。不自然過ぎてミミックなんじゃと思える宝箱……、宝箱?


おおっ。


……っと、本当にミミックだったら洒落にならないので。

[収納]から出した長い棒にて突いて確認。

一応は冒険者ツールとして正式なもの。ダンジョン探索では必須らしいが、そっちの活動の予定が無い俺には正直無用の長物だった。

よもやこんな事で使うとは。

と言うか、「ちょうぶつ」と「ながもの」を掛けた物言いになったが洒落では無い。だからミラテル嬢、感心した風の意識をこっちに送らないように。


なんでも手にした装備は本人の魔力が伝わるので、それで触れれば接触判定となり罠やミミックが反応する……とかな立派な理由はある行為と。

物干し竿サイズの携帯装備とか信じられずにいたらこんこんと説明された。

絶対新人冒険者をからかってると思ったんだがなぁ。


……まぁ、役だったのは確かだが。


猫の遊びに似てたからかフィンカが混ざって箱自体が崩壊。

どうも傷みが限界まで至ってたようで。

罠のチェックや鍵開けが無用化したのは楽ではあったが同時にちょっと残念でもあり。


瓦礫から掘り出す形で回収したのは……これも何処かで見たような魔道具。


こっちも、此処で繋がるかー……。


リモコンのような魔道具。

此方は魔力の影響でか劣化の気配も無く。

ただ魔力自体は枯渇寸前のようで……試しに使うのは無理そうで。

魔力の補充をと思ったが、余りに古いと返って壊す事になる。

実際、試そうとしたらミラテル嬢の注意をもらい、そう意識してから手にしたら確かにそうだとも直感で判る。

ならば微量に魔力を送り、自壊防止が働くまで待てばな話なのだそうだが、そういう調整は俺には無理そうなので。


まぁ、帰ったら師匠に頼むのが一番安心なので回収のみだ。


商人のを鑑定した時の不足部分がこの時に補間された。

リモコンと対を成す魔道具の現物だ。

曇りの多い水晶柱で直径は20cm、高さは30cm程の物。同じく魔力枯渇寸前で詳しい用途までは未確認。

此方も師匠経由で復元した方がいい。



さて、リフィス神の繋がりを得たが、この現場がフィンカを連れてた行商人とは無縁……、少なくともここ数年は関係無しの産物なのは確かだったり。

此処のは、あまりに古すぎる。


またフィンカ自身にもリフィス神と縁のある要素があったが、彼女自身にこの祭壇から感じるものは無かったようで。

不思議そうに見てるのみで、何かの記憶を刺激されてるような気配も無し。


情景のイメージは俺の意識伝いにミラテル嬢に行ったので、解析情報は其方待ちにして現場を後にする事にした。



以降も小部屋は有ったが再び祭壇は無かった。

また通路が何度か、壁に偽装した隠し扉で閉ざされてもいた。MAPでの確認が可能だから通り抜けれるのが判るといったもので、知らずにいたら行き止まりと勘違いする程度に面倒な開閉機能も組まれていたり。


そんな事を二度続けてからの道程以降は、近年程度の生活の痕跡が残る部屋が有る通路になる。

移動痕を観察すると俺たちが向かう方向からのものなので、おそらくは何かの拠点が有ると見て良いかもしれない。

MAPの反応としても、最初の人の多い反応に近いし。



しかし、現着してみればその予想は外れた。

迂闊な事に、魔力のラインからも外れていた始末。

どうやら一本道なとこに油断して再び隠し扉が在るべき地点を通り越したようだった。怪しいのは潜ってきた隠し扉の近くたろう。

……戻りかー……、地味に面倒。


此方の場所は……たぶんまた地上の遺跡か何かに出るための出入り口か。

痕跡からして此方側の設備が極たまに使われていて、俺が来た方向は封印でもされてた感じか?

まぁ、単純に隠し扉を発見できなかったんだろうけど。


戻る前にと、少し壁向こうの様子だけは確認する。

……中々に不思議な反応か?

また兵士の集まりかと思ってたが、チートの聞き耳に聞こえてくる音は異様に若い。

声変わりしていない子供の甲高いのに近いような……。騒いでる訳でも無いが、基本的に五月蠅く聞こえる独特の特徴の声音。


更には……なんか妙な金属音。絶えず「チャリチャリ」と小さな金属同士が擦れ合う時に聞こえそうなやつ。


……。

あー、なんか予想できたかなぁ。


半分無意味にフィンカを見る。

いや、如何にもこの子を連想する年代の声音なので。

また聞き取れた単語を小さく、フィンカに向けて言ってみる。

反応されたかー。「暇」、「退屈」といった意味を含む汎用獣人語と。

じゃあこの壁の向こうの存在の想像はついたわ。

獣人の子が居る。しかも複数。


何処かの獣人の隠れ里か。

そんな連想が最初に来た。

そして対応も決まる。

戻ろうか。

今の状況で接触しても面倒な事態にしかならなそうだし。


俺の意識から向こうの存在に気づいたフィンカがしきりに鼻を動かすが、壁越しの臭いでの確認はできていない。

ふむ、今回は魔力を嗅いでんじゃなくて普通に体臭な感じかね。

一応警戒の気配もあるので、同族とはいえ即味方といった意識は持たないでいいらしい。

はっきりと「此処は後で確認するから今は戻る」と伝えると素直に頷いてきた。別に嫌々での反応も無し。其処に此方は一安心だ。


ただ、フィンカに確認した言葉の中に「お腹減った」があったところには気になる。

もう一つの連想の可能性も十分に有るかもだ。

と言うか、そう考えたらあの金属音の正体も解った気がした。


鎖の音。


それは鎖に繋がれた獣人の子達、といった情景に直ぐ繋がる。

……奴隷商人の隠し拠点にでもぶち当たったかね。


何にせよ、目的を果たしたら戻らないとな場所らしい。



見逃した隠し通路の確認ができた。

戻り道からは最初の隠し扉を潜ったところで、床の一部が蓋になっている。下りれば上の通路と直角に交差する形で進むもので、先が暗闇に消える道が両側へと続くもの。

今回は魔力のラインで進む方向は判るものの、どうも此処の地下は結構開発された地下交通網が在る様子で。


おおお……、なんか調査案件が後から沢山湧いてくるな。


まぁ、とにかく進もう。



幸い、一度のヘマで目的地には到着した。

「既視感があります」とミラテル嬢の確認も。俺もある。完全起動中のは初めてだが構造は一番最初に確認したものと実に良く似ているものだった。


此処は多角柱の内側な感じか。数えてみると12面の壁があり。其れぞれの壁に動物のレリーフが彫られている。俺の視界から同時に解析中のミラテル嬢から、魔導国の占星術で扱う星座の象形獣と補足が入った。

うん、俺も十二星座とか干支が連想できたし。そんな感じのもんだと直感はしてた。

ただ内容は日本のとは随分違うか、むしろ外国のやつに近い。露骨にドラゴンな感じのもあるし。「龍」じゃなくて「竜」の方のな。

あと「虫の羽生やした眼球」は流石に判らない。ファンタジー成分が過剰過ぎる。

また懐かしい部分では「ヒドラ」もいた。

それに加えて少し特殊な形のトレントのようなものも。

……あれ?

これも見た事あるよな、俺?


「ウツボン」です。との補足情報。

ああ、そうそう。

へえ、まぁ現物とは微妙に造形が違うから気づき難かった。

と言うか、あれも占星術に使われる要素なわけか。

案外、知名度のある魔物なのかと少し意識を変えておく。


……いや、待て。

あの魔物は魔王由来のやつだよな。

倒した時にその証拠がドロップしたし。


其処の疑問への注釈は直ぐに来た。

魔王と一括りにしても、今現在全ての魔王が世界に拒絶される物とは限らないそうで。

古い魔王に由来するもので根絶されない要素は、なし崩しに共存する形へと落ち着いたのも在るのだそうだ。


占星術もその一つ。

この世界に最初から属さないからこそ、客観的な視点での世界の観察の概念から未来予知の行為ができる。そんな感じで。

今では立派に魔術の大系の一つに組み込まれていて、魔導国でも六本の人柱の一つがその大系の本拠地として活動してるのだそうで。


そんな蘊蓄を脳内で披露されながら、とりあえずは部屋の中央に置かれた台座の上に安置された魔石を回収する。

その無途端に、室内の魔力の圧力がやや高まったような圧迫感を感じた。

どうやらこの魔石が魔力をミラテルに送る発信源になってた機能も同じのようで。

繋がっていた魔力のラインも消えたし。

さて、となると、更に地下に魔力を変質される儀式魔術が設置されてるのは確かなようで。

今回は場所的に調査団の派遣は難しいし、手っ取り早く破壊するのが安全だろう。


因みに前回の調査の方は……、ああ、まだ現着すらしてないですか。

だよねー。我ながら常識外れの移動速度で動いてるしねー。

けど現代人の、しかも社畜成分に漬かりきった人間の思考だと秒単位のスレジュールで動かないと逆に不安なもんで。

ついつい、前倒しな感じに動く習性が……。

ううむ、ここは前世に捨ててくればいい感覚だったと今更に思う、俺。



……いや、意識の繋がったお二人さん。

その部分に本気の同情心は良いから。

むしろ、逆に本気で悲しくなるから、ね。




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